(完)お姉様の婚約者をもらいましたーだって、彼の家族が私を選ぶのですものぉ

青空一夏

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後編

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 優さんの家はさすが旧家だけあって広い敷地に蔵が二つもあり、庭園には立派な松が植えられ、屋敷はとても大きかった。屋敷の前面には広い畑が一面に広がりその全てが五条家の土地だという。

 淡い緑の絨毯が広がるレタス畑はお金のなる木だ。敷地に3台ある車は全てが外車で、その羽振りの良さがかいまみえる。

「あのね、どうしても優さんが好きなの! いけない恋だってわかっているけれど・・・・・・」
 屋敷で待ち構えてそう告白しかけた私を、優さんは困ったようにさえぎった。

「いや、僕は姉のいろはさんと結婚するつもりだよ。彼女でなければダメなんだよ」
 なぜ、そこまでお姉様に拘るの? 私じゃだめなの? 私は、ここまでくると意地になってしまう。

「私はお姉様より、ずっと優さんの家族とうまくやっていけますよ? ご両親とも貴方の弟や妹とも、すぐ仲良くなれたもの!」

「いや、僕たちは同居するつもりはないんだよ・・・・・・」
 優さんの言葉に私は思わず声を荒げた。

「そんなのいけませんわ! 親孝行は大事ですし、長男ではありませんか?」
 
 だってここの土地って、絶対長男の優さんのものになるはずでしょう? この家を出たら、継ぐのは弟になってしまうかもしれない。そんなのもったいないわ!

 それでも、優さんは横に頭を振って受け入れてはくれなかった。どうしたらいいのしら?



「諦めないで! 絶対、恋を実らせてあげる」
 彼の妹の美波さんと弟の冬馬君は、私を慰めてはげましてくれた。

「結愛さんをお姉様と呼びたいから!」
 美波さんが私に抱きついてきたことで、私も本当に嬉しくなった。私に妹ができた瞬間だった。


 それから数日後、私の携帯が鳴った。
「もしもし。結愛さん? 私です、美波です。今から泊まりに来ませんか? いいことがありますよ?」
 そんな電話がいきなり入ったのだった。

 彼の家に行くと彼の家族達が温かく迎えてくれた。美波さんは優さんの部屋にこっそりいれてくれて、朝まで過ごさせてくれた。

「私がこっそり媚薬をお料理にいれといたから。これで、うまくいくといいけれど。お酒を飲んだから寝ているけれど、夜中には起きるはずよ」

「ほんとうに? 恩にきるわ! ありがとう!」
 私は、彼の隣にそっと横になったのだった。



 翌朝までには、私の目的は成し遂げられた! 目撃者は優さんの家族全員だ。

 優さんは呆然としていたけれど『こうなった以上は責任をとるよ』と言った。

 姉は、『そう。頑張って!』と言っただけ。いやにあっさりして拍子抜けしたけれど、絶対陰で悔しがっているはず。



ꕤ୭*



 離れに家も建ててくれると言われて、嬉しい気持ちでいっぱいだった。新居が完成するのを待ち、盛大な結婚式を挙げて籍をいれた。

 そして、私のお引っ越しの日に事件は起きた! 私が荷物を新居に運ぼうとすると、すでに冬馬さんと美波さんがあがりこんでいた。

「あら、結愛さんは母屋よ? ここがすごく気に入ったから、私達が住むわ」

「はぁ?」
 私は母屋に駆けていき義理の両親を問い詰めた。

「なんで、美波さんと冬馬さんが新居にいるのですか?」

「あぁ、うふふーー。あの子達ったら、あそこが気に入っちゃったからねぇーー。いいじゃない? 二人とも結婚したら出て行くわよぉ」

「そんな・・・・・・あの二人はいつ結婚するんですか?」

「さぁーー? こればっかりは、出会いがないとねぇーー。でも、ほら、いつかは・・・・・・」

「いつか・・・・・・」

「子供ができたら広い方がいいんだから、母屋でいいじゃない? 部屋はいっぱい余っているんだしねぇ?」

 私は母屋を見渡す。確かに広いけれど古くて・・・・・・ところどころ修繕が必要そうだ。

「あぁ、あの家はいずれあんた達夫婦のものになるんだから、ローンのお金は払っておくれよ?」

「え? あの家って私達夫婦へのプレゼントですよね?」

「あら、嫌だ! そんなわけがないでしょう? 結愛さんも優も、ちゃんと収入があるでしょう? いずれ、全部貴女達のものになるんだし」

なにかが、おかしい・・・・・・私は優さんの顔を見た。優さんは首をすくめて私に言った。

「これは君が望んだことだろう?」

「・・・・・・」

 私は五条家で生活するうちに、心底後悔した。それは・・・・・・私が招いた愚かな誤算だった。
 なぜ、美波さんと冬馬さんが姉を嫌いか? その理由は・・・・・・







 この二人は、朝から晩まで自室でゲームをするか映画を見ている。外出するときはパチンコと外食で、お金を使うことは大好きだ。敷地にとまっている外車は彼らの車だった。畑も手伝わず家事もせず、ただ遊び贅沢をするだけのニートだったのだ。

 そしてそんな怠け者の二人を溺愛する両親! 私達夫婦はあの新居のお金を毎月払い、古い母屋に住まわされた。  私は学校の先生を続け、休みの日は畑にかり出された。これって・・・・・・詐欺じゃん

 私が美波さんに働きなさい、と言うと美波さんは、
「ねぇ、媚薬盛らせたの結愛さんだって言ってもいい?」
と、脅した。

「え? そんなこと頼んだ証拠なんてあるの?」

「うん、あの会話を録音してあるよ。教育者が姉の婚約者に媚薬を盛って奪い取ったって、いい記事になるよね?」 
 美波さんは、ケータイを取り出すとあの日の会話を再生させた。




「私がこっそり媚薬をお料理にいれといたから。これで、うまくいくといいけれど。お酒を飲んだから寝ているけれど、夜中には起きるはずよ」

「ほんとうに? 恩にきるわ! ありがとう!」





 やられた・・・・・・私はこの蟻地獄からもう抜け出せない。

 そして、私は姉が課長をしている課の名前をこの時やっと思い出したのだった。

 それは、ニート独立生活支援課だった。おもに、就業しない引きこもりやニートの自立支援を促す課だ。・・・・・・だから、姉は嫌われていたのか・・・・・・働かされたくなかった美波さんと冬馬さんと、それを甘やかせたかった義理両親の罠にはまった私なのだった・・・・・・


 それから一年後、姉は平凡なサラリーマンと結婚したけれど、すごく幸せそうだ。


 私? 幸せなわけないじゃない! こんなのって、あんまりよぉーー๐·°(৹˃ᗝ˂৹)°·๐





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以下宣伝です。不快な方はすっ飛ばしてくださいませ😊💐


ライト文芸大賞エントリー作品
「愛を教えてくれた人」

非才ながら、頑張っております。
よろしくお願いします(❁ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾⁾





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