1 / 11
1 くれくれダコス
しおりを挟む
私のお母様は5歳の頃に亡くなりました。とても美しく聡明な方でしたが、男性を見る目だけはなかったようです。
お父様はお母様が元気でいらした時から浮気していたようですからね。だって私の腹違いの妹を連れた後妻がすぐにやってきましたから。その年の差たった1歳。
つまりは・・・・・・そういうことです。お母様は、こんな顔だけ男のどこがよかったのでしょう? 5歳ながらに父の人間性に絶望したことを覚えています。
「おねえしゃま! そのリボンきれいね。ダコスにくだしゃい」
4歳の妹はにっこり笑って私がしているリボンを欲しがりました。この会話は初対面にかわされたものです。
「はい、どうぞ」
リボンぐらいならいいかとあげたのが間違いでした。それからはなんでも交換したがります。私のものが羨ましくてならないのです。
お揃いで買ってもらった色違いのものは必ず後から交換されましたし、仕立てたドレスもいつのまにかデザインが交換されています。つまり、私が選ぶものがダコスの欲しいものなのでしょう。面白いですね?
ダコスは我が儘放題で好き勝手に育ちました。それはそうでしょう。だって後妻のサマンサが甘やかし放題で、お父様もそれを良しとしているのですから。
私は生前のお母様の様子を侍女達から聞いておりましたから、亡くなったお母様のようになりたいと真面目に生きてきたつもりです。
「このレティラ伯爵家はダコスに継がすから、カトリーヌはしっかり勉強してお嫁に行っても恥ずかしくないようにしなさい!」
お父様にはダコスが屋敷に来たときから言われております。
これは私には有り難いことでした。勉強してこの家からでていけるのは嬉しいことです。特に酷い扱い、例えば食事がないとかドレスがないとか叩かれる等のようなことは受けたことはありません。ですが、愛されているという思いは一度も感じたことのない家族達だったからです。
年頃になった私はギルバート・キュルス侯爵に見初められました。彼は私が足繁く通っている孤児院に偶然来て、子供好きな私が読み聞かせをしている様子に母性を感じたようです。キュルス侯爵は早くにお母様を亡くし女性には母性を求めている方なのです。
何度か会話もさせていただき、とても誠実な方だと安心できました。
「私の妻にはカトリーヌしか考えられない。妻になってもらえるだろうか?」
「えぇ、喜んで!」
初めての出会いから半年も経つとお互いの気持ちがさだまってこれが運命であったのだと思うようになりました。
レティラ伯爵当主殿へ
・・・・・・カトリーヌ・レティラ伯爵令嬢をキュルス侯爵夫人としてお迎えしたい。・・・・・・
ギルバート・キュルス候爵
このような婚姻の申し込みがお父様に送られてきました。
「お前達は付き合っているのかね? いったい、いつから?」
「あぁ、それは半年前に・・・・・・」
私はサロンに呼び出され、この結婚のことをお父様に聞かれました。
その様子をじっと見ていたダコスはやっぱり、
「お姉様の彼氏を私にください!」
と、叫んだのでした。
ーーこの『くれくれダコス』めっ!
私は心のなかで毒づいたのでした。
「そんなことができるはずがないでしょう?」
「あら、だってここにはレティラ伯爵令嬢をって書いてあるわ。きっと、カトリーヌじゃなくてもいいのよ。だって、私だってレティラ伯爵家の娘だもん!」
「あぁ、確かにそういうことよね? 侯爵家なんてすごいわ! これは絶対、ダコスとカトリーヌを間違えたのよ。だってダコスは艶々なピンクの髪に、蜂蜜色の瞳の美しい娘なのですから!」
サマンサはダコスをどうしても侯爵夫人にしたいようです。
ーーうーーん。この国では金髪に目の覚めるようなターコイズブルーの瞳が美女ですよ。ちなみに私はそれです。が、このレティラ伯爵家だけはダコスが1番なんですね。これにはお父様がいくらなんでも注意するだろう、と私は思っておりましたが・・・・・・
「ふむ。キュルス侯爵家といえばダイヤモンド鉱山も所有する大金持ちだ! うん、カトリーヌ。ダコスと交換してあげなさい。ダコスの婿はまだ決めていないが早急に決めるから。ギルバート・キュルス侯爵とチェンジすればよかろう!」
ーーあぁ、お母様の男を見る目のなかったことを再確認をした瞬間でした。
お父様はお母様が元気でいらした時から浮気していたようですからね。だって私の腹違いの妹を連れた後妻がすぐにやってきましたから。その年の差たった1歳。
つまりは・・・・・・そういうことです。お母様は、こんな顔だけ男のどこがよかったのでしょう? 5歳ながらに父の人間性に絶望したことを覚えています。
「おねえしゃま! そのリボンきれいね。ダコスにくだしゃい」
4歳の妹はにっこり笑って私がしているリボンを欲しがりました。この会話は初対面にかわされたものです。
「はい、どうぞ」
リボンぐらいならいいかとあげたのが間違いでした。それからはなんでも交換したがります。私のものが羨ましくてならないのです。
お揃いで買ってもらった色違いのものは必ず後から交換されましたし、仕立てたドレスもいつのまにかデザインが交換されています。つまり、私が選ぶものがダコスの欲しいものなのでしょう。面白いですね?
ダコスは我が儘放題で好き勝手に育ちました。それはそうでしょう。だって後妻のサマンサが甘やかし放題で、お父様もそれを良しとしているのですから。
私は生前のお母様の様子を侍女達から聞いておりましたから、亡くなったお母様のようになりたいと真面目に生きてきたつもりです。
「このレティラ伯爵家はダコスに継がすから、カトリーヌはしっかり勉強してお嫁に行っても恥ずかしくないようにしなさい!」
お父様にはダコスが屋敷に来たときから言われております。
これは私には有り難いことでした。勉強してこの家からでていけるのは嬉しいことです。特に酷い扱い、例えば食事がないとかドレスがないとか叩かれる等のようなことは受けたことはありません。ですが、愛されているという思いは一度も感じたことのない家族達だったからです。
年頃になった私はギルバート・キュルス侯爵に見初められました。彼は私が足繁く通っている孤児院に偶然来て、子供好きな私が読み聞かせをしている様子に母性を感じたようです。キュルス侯爵は早くにお母様を亡くし女性には母性を求めている方なのです。
何度か会話もさせていただき、とても誠実な方だと安心できました。
「私の妻にはカトリーヌしか考えられない。妻になってもらえるだろうか?」
「えぇ、喜んで!」
初めての出会いから半年も経つとお互いの気持ちがさだまってこれが運命であったのだと思うようになりました。
レティラ伯爵当主殿へ
・・・・・・カトリーヌ・レティラ伯爵令嬢をキュルス侯爵夫人としてお迎えしたい。・・・・・・
ギルバート・キュルス候爵
このような婚姻の申し込みがお父様に送られてきました。
「お前達は付き合っているのかね? いったい、いつから?」
「あぁ、それは半年前に・・・・・・」
私はサロンに呼び出され、この結婚のことをお父様に聞かれました。
その様子をじっと見ていたダコスはやっぱり、
「お姉様の彼氏を私にください!」
と、叫んだのでした。
ーーこの『くれくれダコス』めっ!
私は心のなかで毒づいたのでした。
「そんなことができるはずがないでしょう?」
「あら、だってここにはレティラ伯爵令嬢をって書いてあるわ。きっと、カトリーヌじゃなくてもいいのよ。だって、私だってレティラ伯爵家の娘だもん!」
「あぁ、確かにそういうことよね? 侯爵家なんてすごいわ! これは絶対、ダコスとカトリーヌを間違えたのよ。だってダコスは艶々なピンクの髪に、蜂蜜色の瞳の美しい娘なのですから!」
サマンサはダコスをどうしても侯爵夫人にしたいようです。
ーーうーーん。この国では金髪に目の覚めるようなターコイズブルーの瞳が美女ですよ。ちなみに私はそれです。が、このレティラ伯爵家だけはダコスが1番なんですね。これにはお父様がいくらなんでも注意するだろう、と私は思っておりましたが・・・・・・
「ふむ。キュルス侯爵家といえばダイヤモンド鉱山も所有する大金持ちだ! うん、カトリーヌ。ダコスと交換してあげなさい。ダコスの婿はまだ決めていないが早急に決めるから。ギルバート・キュルス侯爵とチェンジすればよかろう!」
ーーあぁ、お母様の男を見る目のなかったことを再確認をした瞬間でした。
69
あなたにおすすめの小説
私の自慢の旦那様は、本当は私の事など見てくれない最低な男なのです。
coco
恋愛
優しくて美形で頭もよく稼ぎもあって…誰からも羨ましがられる自慢の旦那様。
そんな彼は、本当は私の事など見てくれない最低な男なのです─。
〖完結〗旦那様はどうしようもないですね。
藍川みいな
恋愛
愛人を作り、メイドにまで手を出す旦那様。
我慢の限界を迎えた時、旦那様から離婚だ! 出て行け! と言われました。
この邸はお父様のものですが?
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全3話で完結になります。
王子様の花嫁選抜
ひづき
恋愛
王妃の意向で花嫁の選抜会を開くことになった。
花嫁候補の一人に選ばれた他国の王女フェリシアは、王太子を見て一年前の邂逅を思い出す。
花嫁に選ばれたくないな、と、フェリシアは思った。
元平民の義妹は私の婚約者を狙っている
カレイ
恋愛
伯爵令嬢エミーヌは父親の再婚によって義母とその娘、つまり義妹であるヴィヴィと暮らすこととなった。
最初のうちは仲良く暮らしていたはずなのに、気づけばエミーヌの居場所はなくなっていた。その理由は単純。
「エミーヌお嬢様は平民がお嫌い」だから。
そんな噂が広まったのは、おそらく義母が陰で「あの子が私を母親だと認めてくれないの!やっぱり平民の私じゃ……」とか、義妹が「時々エミーヌに睨まれてる気がするの。私は仲良くしたいのに……」とか言っているからだろう。
そして学園に入学すると義妹はエミーヌの婚約者ロバートへと近づいていくのだった……。
【完結】ハーレム構成員とその婚約者
里音
恋愛
わたくしには見目麗しい人気者の婚約者がいます。
彼は婚約者のわたくしに素っ気ない態度です。
そんな彼が途中編入の令嬢を生徒会としてお世話することになりました。
異例の事でその彼女のお世話をしている生徒会は彼女の美貌もあいまって見るからに彼女のハーレム構成員のようだと噂されています。
わたくしの婚約者様も彼女に惹かれているのかもしれません。最近お二人で行動する事も多いのですから。
婚約者が彼女のハーレム構成員だと言われたり、彼は彼女に夢中だと噂されたり、2人っきりなのを遠くから見て嫉妬はするし傷つきはします。でもわたくしは彼が大好きなのです。彼をこんな醜い感情で煩わせたくありません。
なのでわたくしはいつものように笑顔で「お会いできて嬉しいです。」と伝えています。
周りには憐れな、ハーレム構成員の婚約者だと思われていようとも。
⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
話の一コマを切り取るような形にしたかったのですが、終わりがモヤモヤと…力不足です。
コメントは賛否両論受け付けますがメンタル弱いのでお返事はできないかもしれません。
出戻り娘と乗っ取り娘
瑞多美音
恋愛
望まれて嫁いだはずが……
「お前は誰だっ!とっとと出て行け!」
追い返され、家にUターンすると見知らぬ娘が自分になっていました。どうやら、魔法か何かを使いわたくしはすべてを乗っ取られたようです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる