(完結)あぁ、それは私の彼ではありません!

青空一夏

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1 くれくれダコス

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 私のお母様は5歳の頃に亡くなりました。とても美しく聡明な方でしたが、男性を見る目だけはなかったようです。

 お父様はお母様が元気でいらした時から浮気していたようですからね。だって私の腹違いの妹を連れた後妻がすぐにやってきましたから。その年の差たった1歳。

 つまりは・・・・・・そういうことです。お母様は、こんな顔だけ男のどこがよかったのでしょう? 5歳ながらに父の人間性に絶望したことを覚えています。




「おねえしゃま! そのリボンきれいね。ダコスにくだしゃい」
 4歳の妹はにっこり笑って私がしているリボンを欲しがりました。この会話は初対面にかわされたものです。

「はい、どうぞ」

 リボンぐらいならいいかとあげたのが間違いでした。それからはなんでも交換したがります。私のものが羨ましくてならないのです。

 お揃いで買ってもらった色違いのものは必ず後から交換されましたし、仕立てたドレスもいつのまにかデザインが交換されています。つまり、私が選ぶものがダコスの欲しいものなのでしょう。面白いですね?

 ダコスは我が儘放題で好き勝手に育ちました。それはそうでしょう。だって後妻のサマンサが甘やかし放題で、お父様もそれを良しとしているのですから。

 私は生前のお母様の様子を侍女達から聞いておりましたから、亡くなったお母様のようになりたいと真面目に生きてきたつもりです。

「このレティラ伯爵家はダコスに継がすから、カトリーヌはしっかり勉強してお嫁に行っても恥ずかしくないようにしなさい!」
 お父様にはダコスが屋敷に来たときから言われております。

 これは私には有り難いことでした。勉強してこの家からでていけるのは嬉しいことです。特に酷い扱い、例えば食事がないとかドレスがないとか叩かれる等のようなことは受けたことはありません。ですが、愛されているという思いは一度も感じたことのない家族達だったからです。





 年頃になった私はギルバート・キュルス侯爵に見初められました。彼は私が足繁く通っている孤児院に偶然来て、子供好きな私が読み聞かせをしている様子に母性を感じたようです。キュルス侯爵は早くにお母様を亡くし女性には母性を求めている方なのです。

 何度か会話もさせていただき、とても誠実な方だと安心できました。

「私の妻にはカトリーヌしか考えられない。妻になってもらえるだろうか?」

「えぇ、喜んで!」

 初めての出会いから半年も経つとお互いの気持ちがさだまってこれが運命であったのだと思うようになりました。


レティラ伯爵当主殿へ

・・・・・・カトリーヌ・をキュルス侯爵夫人としてお迎えしたい。・・・・・・


 ギルバート・キュルス候爵


 このような婚姻の申し込みがお父様に送られてきました。



「お前達は付き合っているのかね? いったい、いつから?」

「あぁ、それは半年前に・・・・・・」

 私はサロンに呼び出され、この結婚のことをお父様に聞かれました。

 その様子をじっと見ていたダコスはやっぱり、

「お姉様の彼氏を私にください!」

 と、叫んだのでした。

ーーこの『くれくれダコス』めっ! 

 私は心のなかで毒づいたのでした。

「そんなことができるはずがないでしょう?」

「あら、だってここにはレティラ伯爵令嬢をって書いてあるわ。きっと、カトリーヌじゃなくてもいいのよ。だって、私だってレティラ伯爵家の娘だもん!」

「あぁ、確かにそういうことよね? 侯爵家なんてすごいわ! これは絶対、ダコスとカトリーヌを間違えたのよ。だってダコスは艶々なピンクの髪に、蜂蜜色の瞳の美しい娘なのですから!」

 サマンサはダコスをどうしても侯爵夫人にしたいようです。

ーーうーーん。この国では金髪に目の覚めるようなターコイズブルーの瞳が美女ですよ。ちなみに私はそれです。が、このレティラ伯爵家だけはダコスが1番なんですね。これにはお父様がいくらなんでも注意するだろう、と私は思っておりましたが・・・・・・

「ふむ。キュルス侯爵家といえばダイヤモンド鉱山も所有する大金持ちだ! うん、カトリーヌ。ダコスと交換してあげなさい。ダコスの婿はまだ決めていないが早急に決めるから。ギルバート・キュルス侯爵とチェンジすればよかろう!」

ーーあぁ、お母様の男を見る目のなかったことを再確認をした瞬間でした。

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