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2 非常識なお父様
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「お父様、ダコスの為に頑張ってくださいね! お姉さまは、ちゃんとギルバートと別れて来てください」
ダコスは私に満面の笑みで言いました。
ーーギルバート? 呼び捨てですか? さすが『くれくれダコス』だわ。
私とお父様はこれからキュルス侯爵のもとに『彼を交換する』為の提案に行くのです。
「なぜ、私まで行くのですか? お父様だけでキュルス侯爵に会いに行けばよろしいのに」
「ばか! そんな怖いことができるか! お前が全て言うのだ。いいか? カトリーヌが言い出したことにしなさい」
私はあきれ果ててなにも言えず、ただお父様の顔を見つめていました。
キュルス侯爵邸に着くと、私を前面に押し出しお父様は私の背に隠れています。
「いきなりのご訪問をお許しくださいませ。キュルス侯爵にお会いしたいのですが・・・・・・」
「ほぉ? カトリーヌが訪問伺えもせずいきなり来るとは珍しい。なにか緊急の用ごとでも?」
庭園で作業着を着た初老の男性が薔薇の手入れをしています。
「庭師のお前ごときの知ったことではないわ! さっさとキュルス侯爵を呼ばんか」
お父様は高圧的な態度でその男性を叱咤しましたが、その方が誰かわからないのですか?
「やぁ! どうしたの? おぉ、これはレティラ伯爵! あの婚姻についてのお話ですか?」
サロンに通され、キュルス侯爵がにこやかな笑顔で出迎えてくださいました。
「さぁ、早く言わんか!」
お父様は私の背中を突っつきます。
ーー仕方がないですね。
「実はギルバート・キュルス侯爵様をダコスのまだ未定の婚約者と交換したいのです」
「は? カトリーヌ! なんのジョークだ、それは?」
「ジョークではありません。実はなぁ、このカトリーヌが我が儘で貴男様を妹に譲りたいと考えておる。ダコスはとても性格もよく見目麗しい・・・・・・」
「ふーーん。それはカトリーヌが言い出したことなのですか?」
「も、もちろんだとも!」
「そんなわけがないでしょう? 私達は愛し合っているのです。おおかたどこかの我が儘な『くれくれ女』の仕業でしょうが、そんな女を妻になどできるわけがない」
「だったら、名案があります! ダコスを正妻でカトリーヌもおまけにつけます。だったらいいでしょう? カトリーヌは愛人で」
「この痴れ者が! 即刻、お前は帰るがいい」
さきほどの厳めしい顔つきの男性が怒鳴ります。
「庭師風情がそんなことを言うとは! 身の程をわきまえろ! 痴れ者はどっちだ。この愚か者が」
お父様は反撃しますが、まだ気づかないのですね。
「レティラ伯爵! その庭師の顔をよくご覧ください。なにか気がつきませんか?」
残念な者を見る目で言うキュルス侯爵。
「庭師の顔など・・・・・・え? えぇーー! まさか・・・・・・」
「そう、ワシだよ。キュルス前当主だ! 全くあんたは人の服装しか目に入らんのだな。ワシは花の手入れが趣味なんだ。引退した今では一日中このような格好でいることも増えたがな、庭師と間違えたのはお前さんだけだ。さっさと去れ! キュルス侯爵家の空気が汚れるわ!」
「ひゃぁーー」
前キュルス侯爵様に怒鳴られたお父様は、一人で尻尾を巻いて走り去ってしまいました。
「さぁ、あんなバカは放っておいてせっかく来たのだ。3人でお茶でも飲むか? 珍しい菓子があるから一緒に食べよう。カトリーヌの好きなチョコだぞ」
「うふふ、嬉しいですわ」
私はこのギルバート・キュルス侯爵様のお父様コルトン様ともとても仲良しなのでした。
午後のお茶を楽しみ侯爵家の馬車に乗って帰宅しますと、私の頬をいきなり叩くサマンサ。
「なんて子なの! 妹の幸せを横取りしようなんて。キュルス侯爵が了承したのに、泣いてお前がすがったと聞いたわ。図々しい女ね」
「そうよ! お姉様。私は絶対ギルバートと結婚してやるんだから」
――なぜこんな話しになっているのでしょう?
お父様を見れば気まずそうにこちらを見ていますが、二人の見えないところで私に手を合わせています。
「そういうことにしたいのならそれで結構ですわ!」
私の食事に虫が入れられていたりお気に入りのドレスに覚えのないシミが増えていくのは、この時からでした。
ダコスは私に満面の笑みで言いました。
ーーギルバート? 呼び捨てですか? さすが『くれくれダコス』だわ。
私とお父様はこれからキュルス侯爵のもとに『彼を交換する』為の提案に行くのです。
「なぜ、私まで行くのですか? お父様だけでキュルス侯爵に会いに行けばよろしいのに」
「ばか! そんな怖いことができるか! お前が全て言うのだ。いいか? カトリーヌが言い出したことにしなさい」
私はあきれ果ててなにも言えず、ただお父様の顔を見つめていました。
キュルス侯爵邸に着くと、私を前面に押し出しお父様は私の背に隠れています。
「いきなりのご訪問をお許しくださいませ。キュルス侯爵にお会いしたいのですが・・・・・・」
「ほぉ? カトリーヌが訪問伺えもせずいきなり来るとは珍しい。なにか緊急の用ごとでも?」
庭園で作業着を着た初老の男性が薔薇の手入れをしています。
「庭師のお前ごときの知ったことではないわ! さっさとキュルス侯爵を呼ばんか」
お父様は高圧的な態度でその男性を叱咤しましたが、その方が誰かわからないのですか?
「やぁ! どうしたの? おぉ、これはレティラ伯爵! あの婚姻についてのお話ですか?」
サロンに通され、キュルス侯爵がにこやかな笑顔で出迎えてくださいました。
「さぁ、早く言わんか!」
お父様は私の背中を突っつきます。
ーー仕方がないですね。
「実はギルバート・キュルス侯爵様をダコスのまだ未定の婚約者と交換したいのです」
「は? カトリーヌ! なんのジョークだ、それは?」
「ジョークではありません。実はなぁ、このカトリーヌが我が儘で貴男様を妹に譲りたいと考えておる。ダコスはとても性格もよく見目麗しい・・・・・・」
「ふーーん。それはカトリーヌが言い出したことなのですか?」
「も、もちろんだとも!」
「そんなわけがないでしょう? 私達は愛し合っているのです。おおかたどこかの我が儘な『くれくれ女』の仕業でしょうが、そんな女を妻になどできるわけがない」
「だったら、名案があります! ダコスを正妻でカトリーヌもおまけにつけます。だったらいいでしょう? カトリーヌは愛人で」
「この痴れ者が! 即刻、お前は帰るがいい」
さきほどの厳めしい顔つきの男性が怒鳴ります。
「庭師風情がそんなことを言うとは! 身の程をわきまえろ! 痴れ者はどっちだ。この愚か者が」
お父様は反撃しますが、まだ気づかないのですね。
「レティラ伯爵! その庭師の顔をよくご覧ください。なにか気がつきませんか?」
残念な者を見る目で言うキュルス侯爵。
「庭師の顔など・・・・・・え? えぇーー! まさか・・・・・・」
「そう、ワシだよ。キュルス前当主だ! 全くあんたは人の服装しか目に入らんのだな。ワシは花の手入れが趣味なんだ。引退した今では一日中このような格好でいることも増えたがな、庭師と間違えたのはお前さんだけだ。さっさと去れ! キュルス侯爵家の空気が汚れるわ!」
「ひゃぁーー」
前キュルス侯爵様に怒鳴られたお父様は、一人で尻尾を巻いて走り去ってしまいました。
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