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3 ダコスに汚されたドレス

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「お父様、なぜ嘘をついたのですか? そんな嘘はすぐばれるでしょう?」

「『おおかたどこかの我が儘な『くれくれ女』の仕業でしょうが、そんな女を妻になどできるわけがない』と言われたなど言えるわけがないだろう? 繊細なダコスの心が傷つく! ダコスが可哀想だろう?」

「お父様! 私はキュルス侯爵とは愛し合っております。そのような方を妹に譲れと言われた私は、可哀想ではないのですか?」

「は? カトリーヌはジャックリーンにそっくりでなにもかもしっかりしている。没落した男爵令嬢にしては品もあり聡明だったあいつにな! 守ってあげる必要もないぐらいかわいげがない。 なんでもそつなくこなすくせに、可哀想なわけがあるか! お前ならどこにでも嫁に行けるだろう? なぜ妹に幸せを分けてあげようとしないのだ! この欲張りが!」

――嫁に行くのだからと厳しく育てられ勉強も頑張った。だれも頼りにならないから自分がしっかりするしかなかった。それをかわいげがなくて守る必要がないと言われてしまったら、私が今まで頑張ってしてきたことはなんだったのだろう。






 サマンサとダコスの嫌がらせは続き、お父様も結婚式の日取りを決めることに協力もしてくれません。それでもキュルス侯爵とは会い続け、ウェディングドレスだけは用意することができました。


「このドレスはとても色合いが上品だね」
「えぇ、お母様がレティラ伯爵家に嫁いだ時に着たドレスです。とても素敵にリメイクできて嬉しいです。この代金も払っていただいてすみません・・・・・・」

「いいんだよ。そのドレスはとても似合っているね。ところで結婚式の日取りの打ち合わせになかなか君の父上が応じてくれないんだが、まだくだらないことを言っているのかい?」

「えぇ・・・・・・相変らずですね」
 そうは言ったものの、私は家の中で嫌がらせを受けていることまでは言えませんでした。

 あんな愚かな家族からの嫌がらせであっても、自分がとても価値のない人間だと告白するようで恥ずかしかったし、心配させるのも申し訳なく思えました。このままでは、結婚式が無事にできるのかも不安です。





 その3日後、どうしても許せないことが起こりました。

「このウェディングドレス! なぜ大きなシミがあるの!」

 お母様のドレスの後ろのファスナーが壊されて、そればかりか果汁をぶちまけたようなシミがたくさんできています。クローゼットの奥にしまっておいたはずなのに。

「あぁ、昔のウェディングドレスじゃないか! そんなものまだあったのか?」
 お父様とサマンサがサロンでのんびりと紅茶を飲んでいるところに、私はそのドレスをもって行くと、お父様はどうでもいいような言葉を投げかけます。

「これはどういうことですか? このドレスをクローゼットに収納した時にはこのようではありませんでした」

「あぁ、私が試着してみたの! でも、無理に着てみたら破けちゃって・・・・・・ちょうどジュースも飲んでいたからこぼしちゃったみたい」
 あまりのダコスの言葉に信じられない思いで呆然とする私でした。
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