(完)従姉妹に「財産目当と爵位狙いめ! 私の居場所を取るな」と泣かれましたが、お金ならあるし爵位に興味はありません

青空一夏

文字の大きさ
2 / 21

1 お父様は最高

しおりを挟む
 私のお父様はこのオキスト王国の貴族だった。家名はドナシアン伯爵家で長男だったお父様は、ドナシアン伯爵家を継ぐはずの立場であった。けれど、お父様は運命の出会いをしてしまう。それは私のお母様との出会い。

 お母様はブルダリアス男爵家の四女で、ドナシアン伯爵家で侍女として働いていた。ブルダリアス男爵家は貧しく名ばかり貴族だった為に、ドナシアン伯爵夫人としては相応しくない、とお祖父様達は判断されたのですって。

 勘当されたお父様は平民になりいろいろな職に就こうとしたけれど、どこも雇ってくれなかったらしい。でも、お父様はなんでも出来る方だった。





「お父様、それで絵描きになったのですね?」

「あぁ、そうだよ。どこも雇ってくれないなら自分でなにかを作ればいい。この国がダメなら隣の国でそれを売れば良い。こんなことは簡単なことさ」

「ふふふ。お父様って、すっごい!」

「それはもちろん、アリゼと大事なサラを守る為なら、なんだって考えつくさ」
 お父様は私の頭を撫でて、にっこりと笑った。

「シドニー様は最高の夫ですわ。そして、アリゼの最高のお父様です」
 お母様はうっとりとお父様を見つめる。

「うん、お父様は最高だわ」
 私は自慢のお父様に抱きつき甘えた。




 お父様は絵の才能がありたくさんの絵を描き始めると同時に、オキスト王国の北に位置するシアニア王国に絵を売りに行ったのだ。外国移住は認められないけれど、絵を売りに行くだけなら規制の抜け道を利用し、咎められることなく移動できる方法を見つけた。

 所詮、ドナシアン伯爵家だけの圧力。主だった商会で働くことができないだけで、絵を描くことや作曲を止めさせることは誰にもできないのだ。

 お父様の絵はたちまち高く評価され、シアニア王国ではとても有名な画家になった。加えて、音楽の才もあったお父様は、作曲をしてたくさんの曲をシアニア国で流行らせる。

 そうなるとお父様と取引をしたい方々は、あちらからやって来るようになった。私達はシアニア国とオキスト王国が隣り合う国境近くに住み、シアニア国からの利益で何不自由なく暮らした。

 お父様とお母様は大の仲良しで、娘の私が恥ずかしくなるほどのアツアツぶりだった。そして、私はこの二人にとても愛された。私の世界は完璧で幸せが満ちあふれていたこの頃、笑い声の絶えない明るい家庭は、最高の私の居場所だった。




 国境の向こう側には貴族の別荘があり、週に一回ほどお父様にピアノと絵を習いに来る兄妹がいた。兄がアドリアン、妹がメレーヌだった。上品な子達で性格も穏やかで優しい。私達は楽器を一緒に奏で、絵を学び一緒に遊んだ。

「アリゼ。大きくなったら必ず君を迎えに来るよ」

「迎えに? なんの為に?」

「・・・・・・それは、わたしの婚約者になってもらう為にさ」

「ふふふ。素敵な夢ね。でも、アドリアン様達はシアニア国の貴族なのでしょう? 私は平民です。一緒になれるはずがないわ」

 私はそう言って笑った。私は貴族なんて嫌いだ。お父様を勘当してお母様を嫁として認めなかったのは、貴族のお祖父様達。人間を肩書きだけで判断する愚かな人達だもの。爵位なんて興味はない。

 
しおりを挟む
感想 94

あなたにおすすめの小説

そんなに妹が好きなら死んであげます。

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』 フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。 それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。 そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。 イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。 異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。 何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……

笑う令嬢は毒の杯を傾ける

無色
恋愛
 その笑顔は、甘い毒の味がした。  父親に虐げられ、義妹によって婚約者を奪われた令嬢は復讐のために毒を喰む。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

私に姉など居ませんが?

山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」 「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」 「ありがとう」 私は婚約者スティーブと結婚破棄した。 書類にサインをし、慰謝料も請求した。 「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」

病弱を演じる妹に婚約者を奪われましたが、大嫌いだったので大助かりです

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」「ノベルバ」に同時投稿しています。 『病弱を演じて私から全てを奪う妹よ、全て奪った後で梯子を外してあげます』 メイトランド公爵家の長女キャメロンはずっと不当な扱いを受け続けていた。天性の悪女である妹のブリトニーが病弱を演じて、両親や周りの者を味方につけて、姉キャメロンが受けるはずのモノを全て奪っていた。それはメイトランド公爵家のなかだけでなく、社交界でも同じような状況だった。生まれて直ぐにキャメロンはオーガスト第一王子と婚約していたが、ブリトニーがオーガスト第一王子を誘惑してキャメロンとの婚約を破棄させようとしたいた。だがキャメロンはその機会を捉えて復讐を断行した。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

処理中です...