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12 嘘だらけのゴドフロア
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「お父様! ご無事だったのですね? もうこの世にはいらっしゃらないのかと・・・・・・そう思っておりました。お母様はどちらにいらっしゃるの? お父様がご無事ならお母様も」
「アリゼ。サラ(アリゼの母)は亡くなったよ。ゴドフロアに崖から突き落とされる前に、すでに脈がなかったのだ。ごめんよ・・・・・・家族を危険に晒したのはわたしの責任だ。あんな凶悪な弟だとは思わなかった」
「そんな・・・・・・お母様が・・・・・・死んだなんて。覚悟はしていたけれど・・・・・・酷いです」
大好きなお父様が生きていたことは嬉しい。でも、同じくらい大好きだったお母様はこの世にいない。喜びと悲しみの狭間で、複雑な気持ちになり涙が止まらない。
「アリゼ嬢、泣かないで。この仇は必ずとろう。大丈夫だよ、わたしに任せて。アリゼの絵を父上が全て買う。アリゼとスティール侯爵の計画通りにしてみせる」
昔、国境は挟んだ向かい側の別荘にいた男の子だ。ずいぶんと大人びて見違えてしまうほどだ。
「アドリアン、懐かしいわね。ずいぶん背が伸びて鋼のような体つきになったのね。もしかして騎士になったの? 家名を聞いていなかったけれど貴族よね? お父様ってどなた?」
「あぁ、家名はわざと言わなかったよ。わたしの名前はアドリアン・シアニア。このシアニア王国の王太子だ」
「・・・・・・し、失礼しました。王太子殿下が、なぜあのような国境沿いの別荘にいらっしゃったのですか? それに護衛騎士の一人もついていなかった気がします」
まさか、王太子殿下だなんて思わなかった。私は口調を慌てて敬語に改める。
「あれは天才に教わる為だよ。父王がすでに君のお父様の才能に惚れ込んでいたんだ。それでわたしと妹に習わせる為にあそこを用意したのさ。護衛騎士はついていなかったけれど、王家の影はいつもわたしのまわりにいたよ」
「影? そのような者達が本当に実在するのですか?」
「アリゼはすでに会っているはずだよ。夜間アリゼを見守っていた機敏な動きの者達は全て王家の影だ。スティール侯爵家が画商を営んでいるのは表向きの顔なんだ。スティール侯爵家の真の顔は、代々王家の影をまとめてきた首領だ」
「えぇーー ! ケビンおじ様が影の総頭ということですか? でも、あのメイド達の過去を聞いたら納得はできます。ケビンおじ様の部下が近くにいたらお母様も殺されなかったのに」
思わずケビンおじ様を責めてしまったのは、お母様を亡くしたこの気持ちのやり場がなかったから。決してケビンおじ様が悪いわけではないことは、頭ではわかっているのに。
「ほんとうに、そうだね。まさかシドニーの弟がそれほど凶悪で、屋敷に金を借りに来ているなどとは思わなかったからね。もちろんわかっていたら、見張りをつけたはずだしこの犯罪は防げた。すまない、アリゼ嬢」
「アリゼ、わたしがケビンになにも言わなかったのだよ。愚かな弟が金を無心に来るなんて恥ずかしいことだからね。友人に言うべきことでもないと思った。それに、まさかわたしやサラを殺そうとするなど考えてもいなかったんだ」
(わかっているわ。悪いのは全てあのゴドフロア叔父様なのよ。絶対に許さないわ)
数日後、私の大作画がお父様の作品としてスティール侯爵家に送りつけられた。偽造したお父様の遺言書の写しも添付してある。そこには死後の遺産は全てゴドフロア叔父様に譲ると書いてあった。お父様のものを整理していたら、たまたま遺言書を見つけたなどとも添えられている。
加えて、私が失踪したことも書いてあり、その内容は嘘だらけだった。私が食欲も無く睡眠もとれないで元気がなかったことや、いつも死にたいと言っていたなどと書いてある。
締めくくりは『可哀想な姪アリゼは兄上達の後を追い、自殺したのだと思う』だった。
「アリゼ。サラ(アリゼの母)は亡くなったよ。ゴドフロアに崖から突き落とされる前に、すでに脈がなかったのだ。ごめんよ・・・・・・家族を危険に晒したのはわたしの責任だ。あんな凶悪な弟だとは思わなかった」
「そんな・・・・・・お母様が・・・・・・死んだなんて。覚悟はしていたけれど・・・・・・酷いです」
大好きなお父様が生きていたことは嬉しい。でも、同じくらい大好きだったお母様はこの世にいない。喜びと悲しみの狭間で、複雑な気持ちになり涙が止まらない。
「アリゼ嬢、泣かないで。この仇は必ずとろう。大丈夫だよ、わたしに任せて。アリゼの絵を父上が全て買う。アリゼとスティール侯爵の計画通りにしてみせる」
昔、国境は挟んだ向かい側の別荘にいた男の子だ。ずいぶんと大人びて見違えてしまうほどだ。
「アドリアン、懐かしいわね。ずいぶん背が伸びて鋼のような体つきになったのね。もしかして騎士になったの? 家名を聞いていなかったけれど貴族よね? お父様ってどなた?」
「あぁ、家名はわざと言わなかったよ。わたしの名前はアドリアン・シアニア。このシアニア王国の王太子だ」
「・・・・・・し、失礼しました。王太子殿下が、なぜあのような国境沿いの別荘にいらっしゃったのですか? それに護衛騎士の一人もついていなかった気がします」
まさか、王太子殿下だなんて思わなかった。私は口調を慌てて敬語に改める。
「あれは天才に教わる為だよ。父王がすでに君のお父様の才能に惚れ込んでいたんだ。それでわたしと妹に習わせる為にあそこを用意したのさ。護衛騎士はついていなかったけれど、王家の影はいつもわたしのまわりにいたよ」
「影? そのような者達が本当に実在するのですか?」
「アリゼはすでに会っているはずだよ。夜間アリゼを見守っていた機敏な動きの者達は全て王家の影だ。スティール侯爵家が画商を営んでいるのは表向きの顔なんだ。スティール侯爵家の真の顔は、代々王家の影をまとめてきた首領だ」
「えぇーー ! ケビンおじ様が影の総頭ということですか? でも、あのメイド達の過去を聞いたら納得はできます。ケビンおじ様の部下が近くにいたらお母様も殺されなかったのに」
思わずケビンおじ様を責めてしまったのは、お母様を亡くしたこの気持ちのやり場がなかったから。決してケビンおじ様が悪いわけではないことは、頭ではわかっているのに。
「ほんとうに、そうだね。まさかシドニーの弟がそれほど凶悪で、屋敷に金を借りに来ているなどとは思わなかったからね。もちろんわかっていたら、見張りをつけたはずだしこの犯罪は防げた。すまない、アリゼ嬢」
「アリゼ、わたしがケビンになにも言わなかったのだよ。愚かな弟が金を無心に来るなんて恥ずかしいことだからね。友人に言うべきことでもないと思った。それに、まさかわたしやサラを殺そうとするなど考えてもいなかったんだ」
(わかっているわ。悪いのは全てあのゴドフロア叔父様なのよ。絶対に許さないわ)
数日後、私の大作画がお父様の作品としてスティール侯爵家に送りつけられた。偽造したお父様の遺言書の写しも添付してある。そこには死後の遺産は全てゴドフロア叔父様に譲ると書いてあった。お父様のものを整理していたら、たまたま遺言書を見つけたなどとも添えられている。
加えて、私が失踪したことも書いてあり、その内容は嘘だらけだった。私が食欲も無く睡眠もとれないで元気がなかったことや、いつも死にたいと言っていたなどと書いてある。
締めくくりは『可哀想な姪アリゼは兄上達の後を追い、自殺したのだと思う』だった。
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