(完)従姉妹に「財産目当と爵位狙いめ! 私の居場所を取るな」と泣かれましたが、お金ならあるし爵位に興味はありません

青空一夏

文字の大きさ
19 / 21

18 石を投げつけようとした浮浪者

しおりを挟む
 お父様はゴドフロア叔父様が処刑された後、オキスト国王陛下からドナシアン伯爵家を継ぐように言われ、さらに昇爵のお話しもいただいた。

 お父様と私がオキスト王国に戻る際、もちろんスティール侯爵家の強者達が護衛として多数ついてくる。

 家族で住んでいた今までの国境沿いの屋敷も取り戻し、お父様は変わらず私に愛情のこもった眼差しを向けてくださる。

「サラもいない今ではドナシアン侯爵になっても嬉しさは半分だが、アリゼがアドリアン殿下の王太子妃になるからには爵位を賜ることは必要だろう。きっと、サラもこの婚約を空から見て喜んでいるよ」

「ですね、お母様がいないことがとても悲しいです。叔父様がどんなに酷い刑罰を受けても、お母様は生き返らない。悔しいです」

「あぁ、とても悔しい・・・・・・サラの遺骨はないが、前に住んでいた屋敷の裏庭に木を植えよう。花もたくさん植えて、サラの名前を木に刻みそれをお墓の代わりにしよう」

「そうですわね。お母様はあの屋敷がとても好きでした。あの屋敷は、私が王太子妃になっても訪れたい思い出の場所です。親子3人でとても幸せだった頃の記憶が、あそこに全てギュッと詰まっていますもの」





 お父様はオキスト国王殿下から伯爵位を授けられ、さらには昇爵となりドナシアン侯爵となった。こうして私は侯爵令嬢になり、半年後にはアドリアン王太子殿下の元に嫁ぐことが正式に決まった。


「王太子教育は受けなくてもいいのかね?」
 お父様の問いに、私は王家の教育係が言った言葉を伝えた。

「レオナルド画伯のお嬢様はすでに王妃並の教育を終了しております、ですって。これはお父様とお母様のお陰ですわ。たくさんの家庭教師をつけてくださったし、なにより惜しみなく愛を注いでくださいましたから」

「娘を愛するのは当たり前じゃないか。アリゼを心から大事に思い愛しているよ。愛しいサラが産んでくれたアリゼ以上に大事な存在はいない」

「うふふ。お父様はお母様が大好きでしたものね。お父様とお母様の子供に産まれて私は幸運でしたわ。愛が溢れていた家庭でした。ところで、ブロンシュはどうなったのでしょう?」

「平民になったと聞いたよ。罪人の烙印を押されたら多分働く場所も限られてしまう。公園あたりで餓死しているかもしれない。だが、そんなことはもうわたし達には関係ないことだ。アリゼは忘れていいんだよ」

 お父様はそうおっしゃったけれど、幸せな今は少しだけブロンシュにも同情する気持ちがある。彼女のお父様が私のお父様のようだったら、きっとあのようにはならなかったはずだ。






 半年の間、アドリアン王太子とはお手紙を通して愛を深めていた。シアニア国の王宮にずっと居ても良かったのだけれど、その場合はお父様とすぐに離れることになってしまうから、私はオキスト王国に戻ったのだ。

”愛するアリゼ、早く会いたい!”
 書き出しはいつもこれで、私も同じように言葉を添えた。

”愛おしいアドリアン王太子殿下、早く同じ景色が隣で見られますように”と。

 愛の言葉をぎっしりと詰め込んだ手紙が二日おきに到着することに、お父様は呆れながらも笑っていた。

「これほど大事に思ってくれるなら、王家に嫁いでもきっと守ってくれるだろう。あちらにはスティール侯爵もいるしね」






 半年後、シアニア国からアドリアン王太子殿下がお迎えに来て、多くの王家の騎士に守られ馬車に乗り込む。その際、私に石を投げつけようとした女が捕らえられた。

「アリゼぇーー! 財産狙いと爵位狙いのクソ女。私の居場所をとるなぁーー。そこは私の居場所だ。そこは私の居場所だったんだぁーー!」

 泣き叫ぶ女の顔は、すっかり痩せこけていたけれどあのブロンシュなのだった。

しおりを挟む
感想 94

あなたにおすすめの小説

そんなに妹が好きなら死んであげます。

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』 フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。 それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。 そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。 イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。 異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。 何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……

笑う令嬢は毒の杯を傾ける

無色
恋愛
 その笑顔は、甘い毒の味がした。  父親に虐げられ、義妹によって婚約者を奪われた令嬢は復讐のために毒を喰む。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

私に姉など居ませんが?

山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」 「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」 「ありがとう」 私は婚約者スティーブと結婚破棄した。 書類にサインをし、慰謝料も請求した。 「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」

病弱を演じる妹に婚約者を奪われましたが、大嫌いだったので大助かりです

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」「ノベルバ」に同時投稿しています。 『病弱を演じて私から全てを奪う妹よ、全て奪った後で梯子を外してあげます』 メイトランド公爵家の長女キャメロンはずっと不当な扱いを受け続けていた。天性の悪女である妹のブリトニーが病弱を演じて、両親や周りの者を味方につけて、姉キャメロンが受けるはずのモノを全て奪っていた。それはメイトランド公爵家のなかだけでなく、社交界でも同じような状況だった。生まれて直ぐにキャメロンはオーガスト第一王子と婚約していたが、ブリトニーがオーガスト第一王子を誘惑してキャメロンとの婚約を破棄させようとしたいた。だがキャメロンはその機会を捉えて復讐を断行した。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

処理中です...