6 / 12
6 アシュリー・バラノ侯爵side
アシュリー・バラノ侯爵視点
「旦那様、良くないお知らせがございます。ルーカス様のことで病院関係者の方々がお会いしたいそうです・・・・・・」
夕食が終わっても帰って来ないルーカスを心配していた私は、長年仕えてくれている老執事のその言葉にさらに不安を募らせた。
「まさか、事故にでも巻き込まれたか! どこか怪我をしたのだろうか? きっとそうだ。なんてことだ! すぐに会うからサロンにお通ししなさい」
あんなに不出来な甥でも血が繋がっているのだな、とつくづく思う。どうでもいい等とは思えないのだ。やはり帰って来なければ心配だし、怪我をしたと聞けば駆けつけたいと思うのだ。
騎士並の鍛えられた体躯の男性2人がサロンにやって来ると、病院の警備員の身分証明書を私に見せた。
「ほぉーー。警備員? 外部の不審者から患者さんの安全を守っているのですね? 大変なお仕事ですな」
私はその鍛えられた筋肉に感心してその二人の男性に声をかけた。
「えぇっと。外部の不審者というよりも内部の異常者から医療従事者を守っているという形ですかね。大変な仕事ではありますが、これも医師や看護師の安全の為ですから・・・・・・」
困ったように目を泳がせる警備員達。
「ん? ・・・・・・内部の異常者って? ・・・・・・すまんが少し状況がつかめないな。申し訳ないがそちらはどのような病院だろうか?」
なにか嫌な予感が私の頭に警鐘音を響かせた。
「大変侯爵閣下には申し上げにくいのですが、こちらのご子息と思われるルーカス様をお預かりしている病院は精神病院になります。凶暴性のある患者さんも多い病棟なので、我らは体を鍛える必要があるんですよ」
「!? いや、待ってくれ。あいつはバカだと思うが精神異常者ではないよ。ただの愚かな怠け者だとは思うがさすがに凶暴性などはないはずだ。ルーカスの父親の兄もだらしないクズではあったが人に暴力を働いたことはないんだ」
後から思えばさんざんな甥の貶し様だったが、つい本音が漏れてしまったことは反省したい。
「ですがリッチモンド家にいきなり乗り込み、そこのご令嬢グレイス様に婚約もしていないのに婚約破棄をつきつけたそうですからまともではないでしょう? さらには平民の商人風情が身の程知らずと罵ったようです。あの大富豪のリッチモンド家のご令嬢にですよ? あり得ますか?」
二人の男達は首を振りながら私に詳細を説明したのである。
(まさか・・・・・・もしかしたら頭の障害を負っていたのだろうか? だとしたら全てに説明がつくぞ。ろくに勉強をしないことや、約束したことが少しも守れないことなど。思い当たることがありすぎる!)
「まさか・・・・・・それはきっとなにかの勘違いなのだろうと思う。あぁ、もしかしたら私の縁談を自分のことと勘違いしたのだろう。うん、きっと単なる些細な誤解だと思う」
私はこのようなコメントをしたものの自信が全くもてなかった。だいたいそのような誤解を正常な脳の持ち主はしない気がしたからだ・・・・・・
「とにかく精密検査をリッチモンド家は希望されています。いたくルーカス様に同情されてなにかの病気だと思われたようです。診察費や治療費、クスリ代などはリッチモンド家が負担なさるとのことですので、こちらとしては徹底的に検査をしなんとかまともになられるように尽力していきたいと思っております」
「まともになるのなら私からもお願いしたい。ルーカスは本当にひとつのことが真面目にできない性質の子で・・・・・・しかしこれが病気というのなら今後は暖かい眼差しで見守ってやらねばならないなぁ」
私は自分の教育方針を反省し、今まで病院に連れていかなかったことをとても後悔したのだった。
「はぁーー。まぁ、脳の病気ではなくて単に怠け者の威張りんぼって思いますがねぇーー。アシュリー坊ちゃまのせいではありません! アシュリー坊ちゃまは精一杯やってきましたよ。」
老執事は私の悩む姿に元気づけるように微笑み、子供の頃の呼び方で私を元気づけてくれたのだった。
୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧
ご注意:この物語はそれぞれの視点から物語が展開していくスタイルです。
「旦那様、良くないお知らせがございます。ルーカス様のことで病院関係者の方々がお会いしたいそうです・・・・・・」
夕食が終わっても帰って来ないルーカスを心配していた私は、長年仕えてくれている老執事のその言葉にさらに不安を募らせた。
「まさか、事故にでも巻き込まれたか! どこか怪我をしたのだろうか? きっとそうだ。なんてことだ! すぐに会うからサロンにお通ししなさい」
あんなに不出来な甥でも血が繋がっているのだな、とつくづく思う。どうでもいい等とは思えないのだ。やはり帰って来なければ心配だし、怪我をしたと聞けば駆けつけたいと思うのだ。
騎士並の鍛えられた体躯の男性2人がサロンにやって来ると、病院の警備員の身分証明書を私に見せた。
「ほぉーー。警備員? 外部の不審者から患者さんの安全を守っているのですね? 大変なお仕事ですな」
私はその鍛えられた筋肉に感心してその二人の男性に声をかけた。
「えぇっと。外部の不審者というよりも内部の異常者から医療従事者を守っているという形ですかね。大変な仕事ではありますが、これも医師や看護師の安全の為ですから・・・・・・」
困ったように目を泳がせる警備員達。
「ん? ・・・・・・内部の異常者って? ・・・・・・すまんが少し状況がつかめないな。申し訳ないがそちらはどのような病院だろうか?」
なにか嫌な予感が私の頭に警鐘音を響かせた。
「大変侯爵閣下には申し上げにくいのですが、こちらのご子息と思われるルーカス様をお預かりしている病院は精神病院になります。凶暴性のある患者さんも多い病棟なので、我らは体を鍛える必要があるんですよ」
「!? いや、待ってくれ。あいつはバカだと思うが精神異常者ではないよ。ただの愚かな怠け者だとは思うがさすがに凶暴性などはないはずだ。ルーカスの父親の兄もだらしないクズではあったが人に暴力を働いたことはないんだ」
後から思えばさんざんな甥の貶し様だったが、つい本音が漏れてしまったことは反省したい。
「ですがリッチモンド家にいきなり乗り込み、そこのご令嬢グレイス様に婚約もしていないのに婚約破棄をつきつけたそうですからまともではないでしょう? さらには平民の商人風情が身の程知らずと罵ったようです。あの大富豪のリッチモンド家のご令嬢にですよ? あり得ますか?」
二人の男達は首を振りながら私に詳細を説明したのである。
(まさか・・・・・・もしかしたら頭の障害を負っていたのだろうか? だとしたら全てに説明がつくぞ。ろくに勉強をしないことや、約束したことが少しも守れないことなど。思い当たることがありすぎる!)
「まさか・・・・・・それはきっとなにかの勘違いなのだろうと思う。あぁ、もしかしたら私の縁談を自分のことと勘違いしたのだろう。うん、きっと単なる些細な誤解だと思う」
私はこのようなコメントをしたものの自信が全くもてなかった。だいたいそのような誤解を正常な脳の持ち主はしない気がしたからだ・・・・・・
「とにかく精密検査をリッチモンド家は希望されています。いたくルーカス様に同情されてなにかの病気だと思われたようです。診察費や治療費、クスリ代などはリッチモンド家が負担なさるとのことですので、こちらとしては徹底的に検査をしなんとかまともになられるように尽力していきたいと思っております」
「まともになるのなら私からもお願いしたい。ルーカスは本当にひとつのことが真面目にできない性質の子で・・・・・・しかしこれが病気というのなら今後は暖かい眼差しで見守ってやらねばならないなぁ」
私は自分の教育方針を反省し、今まで病院に連れていかなかったことをとても後悔したのだった。
「はぁーー。まぁ、脳の病気ではなくて単に怠け者の威張りんぼって思いますがねぇーー。アシュリー坊ちゃまのせいではありません! アシュリー坊ちゃまは精一杯やってきましたよ。」
老執事は私の悩む姿に元気づけるように微笑み、子供の頃の呼び方で私を元気づけてくれたのだった。
୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧
ご注意:この物語はそれぞれの視点から物語が展開していくスタイルです。
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されて追放された私、今は隣国で充実な生活送っていますわよ? それがなにか?
鶯埜 餡
恋愛
バドス王国の侯爵令嬢アメリアは無実の罪で王太子との婚約破棄、そして国外追放された。
今ですか?
めちゃくちゃ充実してますけど、なにか?
妹に全てを奪われた私、実は周りから溺愛されていました
日々埋没。
恋愛
「すまないが僕は真実の愛に目覚めたんだ。ああげに愛しきは君の妹ただ一人だけなのさ」
公爵令嬢の主人公とその婚約者であるこの国の第一王子は、なんでも欲しがる妹によって関係を引き裂かれてしまう。
それだけでは飽き足らず、妹は王家主催の晩餐会で婚約破棄された姉を大勢の前で笑いものにさせようと計画するが、彼女は自分がそれまで周囲の人間から甘やかされていた本当の意味を知らなかった。
そして実はそれまで虐げられていた主人公こそがみんなから溺愛されており、晩餐会の現場で真実を知らされて立場が逆転した主人公は性格も見た目も醜い妹に決別を告げる――。
※本作は過去に公開したことのある短編に修正を加えたものです。
ヒロインが私の婚約者を攻略しようと狙ってきますが、彼は私を溺愛しているためフラグをことごとく叩き破ります
奏音 美都
恋愛
ナルノニア公爵の爵士であるライアン様は、幼い頃に契りを交わした私のご婚約者です。整った容姿で、利発で、勇ましくありながらもお優しいライアン様を、私はご婚約者として紹介されたその日から好きになり、ずっとお慕いし、彼の妻として恥ずかしくないよう精進してまいりました。
そんなライアン様に大切にされ、お隣を歩き、会話を交わす幸せに満ちた日々。
それが、転入生の登場により、嵐の予感がしたのでした。
殿下をくださいな、お姉さま~欲しがり過ぎた妹に、姉が最後に贈ったのは死の呪いだった~
和泉鷹央
恋愛
忌み子と呼ばれ、幼い頃から実家のなかに閉じ込められたいた少女――コンラッド伯爵の長女オリビア。
彼女は生まれながらにして、ある呪いを受け継いだ魔女だった。
本当ならば死ぬまで屋敷から出ることを許されないオリビアだったが、欲深い国王はその呪いを利用して更に国を豊かにしようと考え、第四王子との婚約を命じる。
この頃からだ。
姉のオリビアに婚約者が出来た頃から、妹のサンドラの様子がおかしくなった。
あれが欲しい、これが欲しいとわがままを言い出したのだ。
それまではとても物わかりのよい子だったのに。
半年後――。
オリビアと婚約者、王太子ジョシュアの結婚式が間近に迫ったある日。
サンドラは呆れたことに、王太子が欲しいと言い出した。
オリビアの我慢はとうとう限界に達してしまい……
最後はハッピーエンドです。
別の投稿サイトでも掲載しています。
婚約者は妹の御下がりでした?~妹に婚約破棄された田舎貴族の奇跡~
tartan321
恋愛
私よりも美しく、そして、貴族社会の華ともいえる妹のローズが、私に紹介してくれた婚約者は、田舎貴族の伯爵、ロンメルだった。
正直言って、公爵家の令嬢である私マリアが田舎貴族と婚約するのは、問題があると思ったが、ロンメルは素朴でいい人間だった。
ところが、このロンメル、単なる田舎貴族ではなくて……。
王宮で虐げられた令嬢は追放され、真実の愛を知る~あなた方はもう家族ではありません~
葵 すみれ
恋愛
「お姉さま、ずるい! どうしてお姉さまばっかり!」
男爵家の庶子であるセシールは、王女付きの侍女として選ばれる。
ところが、実際には王女や他の侍女たちに虐げられ、庭園の片隅で泣く毎日。
それでも家族のためだと耐えていたのに、何故か太り出して醜くなり、豚と罵られるように。
とうとう侍女の座を妹に奪われ、嘲笑われながら城を追い出されてしまう。
あんなに尽くした家族からも捨てられ、セシールは街をさまよう。
力尽きそうになったセシールの前に現れたのは、かつて一度だけ会った生意気な少年の成長した姿だった。
そして健康と美しさを取り戻したセシールのもとに、かつての家族の変わり果てた姿が……
※小説家になろうにも掲載しています