(完)婚約破棄されたので、元婚約者のイケメン弟とお仕事します!

青空一夏

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ブリアンナに懐かれるサラ

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 私は、ディラン様が婚約破棄を撤回したいとおっしゃりたいのが、すぐにわかった。これは、私にはとても悲しむべきことなんだ。こんなモラハラ男なんかといられやしないわよ。清々した気持ちが次第に曇っていく。

 そこへ、見るからにおバカさんそうな女がやって来たので嬉しさにわくわくしたわ。ピンクの髪と瞳って、これ典型的なヒロインから男を奪う女の特徴そのものじゃない? ここは、お約束の人選配置なのね?  

 凛だった記憶に、ここだけは助けられた。要するに、この女にディラン様を奪わせてしまえば私はこのばかばかしい状況から逃れられるということだわ。あぁ、そう考えるとこの女は天使のようにさえ見えてくる。

「あら、あらぁーー。ようこそ、おいでくださいました! どうぞ、寛いでくださいね。今、お茶を出させますわ。紅茶をお持ちして。このとても素晴らしく可愛い方に」

 私は、これ以上ないくらいの笑みを浮かべた。

「あ、うん。なんか、いい人そうじゃん? ディラン様が言ってたのと全然違う」

「そうですか? ディラン様は私のことをどうおっしゃっていたのでしょう?」

「んとね、すっごく暗くて負け犬みたいな目で、いじいじした女だって。髪も瞳の色も冴えない黒で、ぱっとしないゆで卵って言ってたぁーー。酷いよね? ディラン様って、目が悪いのかしらぁ?」

 すっかり打ち解けたふうで、親しげに話しかけてくる女はおバカさんだけれど素直そうだ。この女はディラン様にぴったりだと思う。中身がなくて綺麗な男と、薄っぺらい可愛い女。最高の組み合わせに私は、涙をのみながら身を引いてあげようじゃないの?

「聞いて! 貴女がたの『真実の愛』に、とても私は感動したのよ。だからね、応援してあげようと思うわ。ところで、貴女はまだ妊娠していないの? いいこと? ここは、早いところ妊娠しておしまいなさい!」

 ん? お父様もディラン様も引きつった顔をしているわね? あぁ、悲しそうな表情を忘れていたわ。

「えっと、貴女方の『真実の愛』に対して負けましたわ。ディラン様は大好きですけれど、お二人の幸せを応援するかたちで身を引こうと思いますよ。どうかしら?」

 私は、眉尻を下げて悲しそうな表情を浮かべた。この顔つきはいい線いっているはず。

「ほんとに? なんて素敵な人なの! お姉様って呼んでいい?」

 えぇ、もう、なんでもいいから。もっと、騒いで、ディラン様とさっさと結婚してもらいたい。慰謝料もらっておさらばしたいの! 私は、欠伸を噛み殺した。すると、侍女が来客を告げた。

「アシュレ男爵様がおいでになりました。それとディラン様も・・・・・・あら? ディラン様が二人? えぇと、ディラン様? と思われる方も伴われていらっしゃいました」

「なんで、弟が?」

 ディラン様は青ざめて呟いた。

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