8 / 23
サラ、従業員をクビにする
しおりを挟む
そんなわけで、私はクレアン伯爵家に住むことになった。
「イライジャ様の卵焼きは、半熟でいいですか?」
「あぁ、すまない。ところで、伯爵令嬢なのに料理はサラさんが作るのかい?」
「もちろんですわ。コックには、辞めてもらいました。お給料が払えないですからね。いるのは雑用女と侍女と侍従の3人だけです」
伯爵家に3人しか使用人がいないとは! しかも、いつもいるわけではないという。
「ディラン様から慰謝料をいただかないで、借金も消えていない今、無駄なお金は使えません。3人はバイトというかたちで、時給制です。午後の3時間しかいません」
「時給制? なんだ、それは?」
この世界では、貴族の使用人は住み込みで年俸制が普通だ。サラは不思議なことばかり言う。
サラは、ドレスではなく簡素なワンピースに着替えて髪を一本に高い位置で結わえていた。あの髪型も珍しいな。
* :.。 。.:*・゚✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*
馬車に乗って町の中心部に行くと、大きなホームセンターがいくつも並んでいる。どこも、似たような品ぞろいで他店より安く売らないと客はこない。
私の店は、一番手前の店で立地条件は良かった。けれど、客はほとんどいない。従業員は、あちこちで固まっておしゃべりをしていた。店内にはゆったりした音楽が流れており、売り物のソファで眠りこけている従業員までいた。
そのさぼっている従業員達を見てサラは、私に向かってきっぱりと宣言した。
「いいですか? この従業員は、全部クビです。新しく意識の違う仲間を募集しますよ! こんな生ぬるい職場で、売り上げが上向きになるわけがないでしょう!」
全ての従業員を集めて解雇を告げると、慌てて弁解する者が何人もいた。
「たまたま、話し込んでいただけです。いつもは、話す暇もないくらい働いています!」
「いつも、眠り込んでいたわけではありません! 客が、来ないのだからしようがないでしょう? レジにいたって誰も来ない!」
「「「そうです! 客が来ないし買わないのだから、私達は全然悪くないです!」」」
私は、思わず彼らに言った。
「すまないな。私の力不足だ。客にコネがないから・・・・・・
サラは私の言葉をさえぎって言った。
「コネ? 客にコネなんて関係ないです! それと、客が来ないからサボって寝てるのが悪くないと言い張る給料泥棒は、ここにはもう要りませんよ! お客様はね、来なければ来させるのよ! そこの貴方! 寝てる暇があるなら風船でも持って店外に出て子連れの夫婦に風船をあげなさい! この店内にあるふわふわした風船はそのためにあるのよ! その際はチラシも渡すのよ。 いいこと? 固まってぺちゃくちゃ姑や嫁の悪口で盛り上げっていたそこの集団! そんな暇があったら、呼びかけをしなさいよ! 『このドライヤー新商品ですよーー。ちょっとお試しになってみません?』となぜ客が通ったら話しかけないの?」
サラの口からスラスラでるその言葉に圧倒されて、皆、みずから店を辞めていった。
「こんな、厳しい店長とかいう女が来たら、癒やしだった職場が台無しだわ」
捨て台詞を言って去っていく従業員にサラは冷たく言った。
「職場は癒やされる場所ではありませんよ! 職場は戦場です!」
「イライジャ様の卵焼きは、半熟でいいですか?」
「あぁ、すまない。ところで、伯爵令嬢なのに料理はサラさんが作るのかい?」
「もちろんですわ。コックには、辞めてもらいました。お給料が払えないですからね。いるのは雑用女と侍女と侍従の3人だけです」
伯爵家に3人しか使用人がいないとは! しかも、いつもいるわけではないという。
「ディラン様から慰謝料をいただかないで、借金も消えていない今、無駄なお金は使えません。3人はバイトというかたちで、時給制です。午後の3時間しかいません」
「時給制? なんだ、それは?」
この世界では、貴族の使用人は住み込みで年俸制が普通だ。サラは不思議なことばかり言う。
サラは、ドレスではなく簡素なワンピースに着替えて髪を一本に高い位置で結わえていた。あの髪型も珍しいな。
* :.。 。.:*・゚✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*
馬車に乗って町の中心部に行くと、大きなホームセンターがいくつも並んでいる。どこも、似たような品ぞろいで他店より安く売らないと客はこない。
私の店は、一番手前の店で立地条件は良かった。けれど、客はほとんどいない。従業員は、あちこちで固まっておしゃべりをしていた。店内にはゆったりした音楽が流れており、売り物のソファで眠りこけている従業員までいた。
そのさぼっている従業員達を見てサラは、私に向かってきっぱりと宣言した。
「いいですか? この従業員は、全部クビです。新しく意識の違う仲間を募集しますよ! こんな生ぬるい職場で、売り上げが上向きになるわけがないでしょう!」
全ての従業員を集めて解雇を告げると、慌てて弁解する者が何人もいた。
「たまたま、話し込んでいただけです。いつもは、話す暇もないくらい働いています!」
「いつも、眠り込んでいたわけではありません! 客が、来ないのだからしようがないでしょう? レジにいたって誰も来ない!」
「「「そうです! 客が来ないし買わないのだから、私達は全然悪くないです!」」」
私は、思わず彼らに言った。
「すまないな。私の力不足だ。客にコネがないから・・・・・・
サラは私の言葉をさえぎって言った。
「コネ? 客にコネなんて関係ないです! それと、客が来ないからサボって寝てるのが悪くないと言い張る給料泥棒は、ここにはもう要りませんよ! お客様はね、来なければ来させるのよ! そこの貴方! 寝てる暇があるなら風船でも持って店外に出て子連れの夫婦に風船をあげなさい! この店内にあるふわふわした風船はそのためにあるのよ! その際はチラシも渡すのよ。 いいこと? 固まってぺちゃくちゃ姑や嫁の悪口で盛り上げっていたそこの集団! そんな暇があったら、呼びかけをしなさいよ! 『このドライヤー新商品ですよーー。ちょっとお試しになってみません?』となぜ客が通ったら話しかけないの?」
サラの口からスラスラでるその言葉に圧倒されて、皆、みずから店を辞めていった。
「こんな、厳しい店長とかいう女が来たら、癒やしだった職場が台無しだわ」
捨て台詞を言って去っていく従業員にサラは冷たく言った。
「職場は癒やされる場所ではありませんよ! 職場は戦場です!」
15
あなたにおすすめの小説
寵愛の花嫁は毒を愛でる~いじわる義母の陰謀を華麗にスルーして、最愛の公爵様と幸せになります~
紅葉山参
恋愛
アエナは貧しい子爵家から、国の英雄と名高いルーカス公爵の元へと嫁いだ。彼との政略結婚は、彼の底なしの優しさと、情熱的な寵愛によって、アエナにとってかけがえのない幸福となった。しかし、その幸福を妬み、毎日のように粘着質ないじめを繰り返す者が一人、それは夫の継母であるユーカ夫人である。
「たかが子爵の娘が、公爵家の奥様面など」 ユーカ様はそう言って、私に次から次へと理不尽な嫌がらせを仕掛けてくる。大切な食器を隠したり、ルーカス様に嘘の告げ口をしたり、社交界で恥をかかせようとしたり。
だが、私は決して挫けない。愛する公爵様との穏やかな日々を守るため、そして何より、彼が大切な家族と信じているユーカ様を悲しませないためにも、私はこの毒を静かに受け流すことに決めたのだ。
誰も気づかないほど巧妙に、いじめを優雅にスルーするアエナ。公爵であるあなたに心配をかけまいと、彼女は今日も微笑みを絶やさない。しかし、毒は徐々に、確実に、その濃度を増していく。ついに義母は、アエナの命に関わるような、取り返しのつかない大罪に手を染めてしまう。
愛と策略、そして運命の結末。この溺愛系ヒロインが、華麗なるスルー術で、最愛の公爵様との未来を掴み取る、痛快でロマンティックな物語の幕開けです。
敗戦国の元王子へ 〜私を追放したせいで貴国は我が帝国に負けました。私はもう「敵国の皇后」ですので、頭が高いのではないでしょうか?〜
六角
恋愛
「可愛げがないから婚約破棄だ」 王国の公爵令嬢コーデリアは、その有能さゆえに「鉄の女」と疎まれ、無邪気な聖女を選んだ王太子によって国外追放された。
極寒の国境で凍える彼女を拾ったのは、敵対する帝国の「氷の皇帝」ジークハルト。 「私が求めていたのは、その頭脳だ」 皇帝は彼女の才能を高く評価し、なんと皇后として迎え入れた!
コーデリアは得意の「物流管理」と「実務能力」で帝国を黄金時代へと導き、氷の皇帝から極上の溺愛を受けることに。 一方、彼女を失った王国はインフラが崩壊し、経済が破綻。焦った元婚約者は戦争を仕掛けてくるが、コーデリアの完璧な策の前に為す術なく敗北する。
和平交渉の席、泥まみれで土下座する元王子に対し、美しき皇后は冷ややかに言い放つ。 「頭が高いのではないでしょうか? 私はもう、貴国を支配する帝国の皇后ですので」
これは、捨てられた有能令嬢が、最強のパートナーと共に元祖国を「実務」で叩き潰し、世界一幸せになるまでの爽快な大逆転劇。
「婚約破棄だ」と叫ぶ殿下、国の実務は私ですが大丈夫ですか?〜私は冷徹宰相補佐と幸せになります〜
万里戸千波
恋愛
公爵令嬢リリエンは卒業パーティーの最中、突然婚約者のジェラルド王子から婚約破棄を申し渡された
婚約破棄を伝えられて居るのは帝国の皇女様ですが…国は大丈夫でしょうか【完結】
繭
恋愛
卒業式の最中、王子が隣国皇帝陛下の娘で有る皇女に婚約破棄を突き付けると言う、前代未聞の所業が行われ阿鼻叫喚の事態に陥り、卒業式どころでは無くなる事から物語は始まる。
果たして王子の国は無事に国を維持できるのか?
婚約破棄してくださって結構です
二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。
※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています
婚約破棄されるのらしいで今まで黙っていた事を伝えてあげたら、一転して婚約破棄をやめたいと言われました
睡蓮
恋愛
ロズウェル第一王子は、婚約者であるエリシアに対して婚約破棄を告げた。しかしその時、エリシアはそれまで黙っていた事をロズウェルに告げることとした。それを聞いたロズウェルは慌てふためき、婚約破棄をやめたいと言い始めるのだったが…。
義母と義妹に虐げられていましたが、陰からじっくり復讐させていただきます〜おしとやか令嬢の裏の顔〜
reva
ファンタジー
貴族の令嬢リディアは、父の再婚によりやってきた継母と義妹から、日々いじめと侮蔑を受けていた。
「あら、またそのみすぼらしいドレス? まるで使用人ね」
本当の母は早くに亡くなり、父も病死。残されたのは、冷たい屋敷と陰湿な支配。
けれど、リディアは泣き寝入りする女じゃなかった――。
おしとやかで無力な令嬢を演じながら、彼女はじわじわと仕返しを始める。
貴族社会の裏の裏。人の噂。人間関係。
「ふふ、気づいた時には遅いのよ」
優しげな仮面の下に、冷たい微笑みを宿すリディアの復讐劇が今、始まる。
ざまぁ×恋愛×ファンタジーの三拍子で贈る、スカッと復讐劇!
勧善懲悪が好きな方、読後感すっきりしたい方にオススメです!
婚約破棄を申し入れたのは、父です ― 王子様、あなたの企みはお見通しです!
みかぼう。
恋愛
公爵令嬢クラリッサ・エインズワースは、王太子ルーファスの婚約者。
幼い日に「共に国を守ろう」と誓い合ったはずの彼は、
いま、別の令嬢マリアンヌに微笑んでいた。
そして――年末の舞踏会の夜。
「――この婚約、我らエインズワース家の名において、破棄させていただきます!」
エインズワース公爵が力強く宣言した瞬間、
王国の均衡は揺らぎ始める。
誇りを捨てず、誠実を貫く娘。
政の闇に挑む父。
陰謀を暴かんと手を伸ばす宰相の子。
そして――再び立ち上がる若き王女。
――沈黙は逃げではなく、力の証。
公爵令嬢の誇りが、王国の未来を変える。
――荘厳で静謐な政略ロマンス。
(本作品は小説家になろうにも掲載中です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる