（完）婚約破棄されたので、元婚約者のイケメン弟とお仕事します！

ホームセンター富士山は皆のお店

　20人のなかで、吟味した結果は3人しか残らなかった。けれど、頑張ろうと思わない人を雇っても、結局は店側が損をするだけだ。少数精鋭で、とりあえずは勝負だわ。

　来客は、それほど多くない。午後からは馬車にも店にも、新しい名前『ホームセンター富士山』をいれる。
そうして、実演販売のお出ましとなる。


　私は、いそいそと外に行って台と大きなタライとフライパンを持っていく。

「え？　なんで、外に行くのですか？　サラさぁーーん！」

イライジャ様は、私を追いかけてくるが、いちいち質問が多い。

「店内にお客様がいないなら、路上で捕まえるだけです！」

　私は、勢いよく声を張り上げた。

「はぁーーい。通行中の皆様ぁーーん！　そこの赤いドレスの綺麗なお姉様も、今、横切っていった美しいおばぁ様も、ちょっとだけご注目ーー！！　なんとこの洗剤をみてくださぁーーい」

　私は、あらかじめ汚しておいたフライパンにさっと洗剤をかけた。こすらなくても、あっという間に落ちる。
これは、当たり前に、今つけたばかりの汚れだからだ。
けれど、そんなことは問題にはならない。
落ちたか、落ちなかったか･･････消費者様の頭には、それしかない。

　それを、おもしろおかしく実況することで、買う気をおこさせる。
そうして、魔法の一言！
「今なら、あれも、これもつけて、お値段、なんと500ブル引き！」

「「「あら、お得ね！　買うわよ」」」

　肉屋の女将さんが、大きな声を張り上げた。はぁーー、ご協力、感謝です！

　一人でも、そんなことを言う人がいれば、人はなんとなく寄ってくる。たちまち、人だかりができ、私のジョークに、どっと笑いが起こる。

「「「私も買うわよ！」」」　「「「おらも買うだ！」」」

　そんな楽しい連鎖反応が、次々に起こる。そうして、あっという間に、店から持ってきた洗剤の50箱が売れた。

　あぁ、忘れてたけれど、洗剤のサンプル配りは明日からしてみよう。

　お店を閉めようとすると、シニアの方が声をかけてきた。ん？どこか見覚えがあるような･･････

　
「サラ！　私もここで働けないかな？」

　お父様が、恥ずかしそうに立っていたのだった。