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まさか、そんな容器の裏に・・・・・・(タネコさんside)

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 「3件向こうのホームセンターでジョロが安売りしていたのよ。ちょっと、あり得ない値段だったわ。それで買ってみたの」

 私は、笑ってしまった。証拠なんてないはずだ。私がその人気商品ジョロを倉庫から持ち出したときに周りには誰もいなかった。見ていた者はいない。

「それが、どうしたというんですか? 近所のホームセンターで安売りしていただけで、なぜ私が疑われるのですか? おかしいでしょう? 私を犯人扱いするなら、この商店街全部に広めてやるわよ! この店では、証拠もないのに、従業員を犯人に仕立て上げるってさぁ」

 私は、大きな声で騒ぎ立てた。従業員の控え室の奥からでも、店にいる客に聞こえるといいのにと思いながら。

「そうね。近くのホームセンターで安売りしていただけでは疑えないわ。でもね、この商品ちょっとよく見て。こっちのものと比べてみて」

 新たに、サラ店長が紙袋から同じジョロを出した。私は、言われた通りに両方を見比べた。けれど、両方ともそっくり同じ。違いなんてどこにもない。

「店長! 時間稼ぎのつもりですか? 間違って私を犯人扱いしたのなら、謝るのが筋でしょう? こんなことで誤魔化して、煙で巻こうなんて上に立つ店長さんがしていいんですか?」

 忌々しい小娘のくせに! だって、このサラ店長はお貴族様だって聞いた。それなのに、こんな店の店長なんてやって。おまけに、ちょっと綺麗だからって男に色目を使ってイケメンオーナーといい仲のようだった。

 店の中でいちゃいちゃするなんて最低だわ! 私は、子供の教育費の為にここで仕事をしているんだ。夫は、冴えない男で文句ばかりいう甲斐性なしだ。

 なんで、あの小娘は私にないものばかり持っているんだい! 若くてハンサムなオーナーの恋人、伯爵令嬢の肩書き、商品を鬼のように売る才能があって・・・・・・あたしは、つまらない主婦さ・・・・・・金も欲しいし、あのサラ店長も困ればいいんだ。そうさ。そう思ってなにが悪いんだい! 

「はぁーー。タネコさん。貴女は本当に残念な人ね。この容器の裏をよーく見て」

 私は、裏をひっくり返して、初めてまじまじと容器を見た。容器の説明書きの下にとても小さなシールが貼ってあった。私は、虫めがねを渡されて、そのシールを凝視した。そこには山頂に白い雪をかぶった山の絵が描かれていたのだった。
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