3 / 8
3 生きていたアーサー(ブラック侯爵side)ーー仕掛けられた罠
しおりを挟む
ーブラック侯爵sideー
「旦那様、王城に至急来るようにとの王命が……」
「はて? このような時間にいったい……せっかく美酒を味わっていたのに……」
ブラック侯爵はいそいそと城に向かい謁見の間を目指す。なぜか騎士団の青年達がざわざわと回廊に溢れ色紙を持って立ち並んでいる。
「これは、何の列だ? 邪魔だぞ!」
ブラック侯爵がその列を無視して謁見の間に向かおうとすると、若者の一人が激しく抗議してくるのだった。
「ちょっと、そこのおっさん! 割り込むのやめてもらっていいですか? ご帰還された英雄殿にサインをもらうのは順番ですからっ!」
「はぁ? 馬鹿者! わしは侯爵だぞ!」
「爵位なんて関係ありませんね。騎士団では爵位より力がものを言う」
「くっ! わしは陛下から直接呼ばれているのだぞ!」
「あぁ、なんだサインが欲しいのではないのですか。それじゃぁ、どうぞ~~」
あっさりと道をあけた騎士はまだ少年だった。
(最近の若い者は躾がなっておらんわい! 全く、なにが英雄だ……ん? 待てよ……英雄って……誰だ?)
謁見の間を開けると国王陛下よりさらに覇者的オーラを纏った男が、ブラック侯爵を見てニヤリと微笑んだ。
「やぁ、私の妹がずいぶんブラック侯爵のどら息子に世話になったようですねぇ? さて、貴方の息子の不祥事をどうするおつもりですか?」
「あっ……な、なぜアーサー様がここに? 亡くなったものだと……本当にご本人でいらっしゃいますか? まさか、そんな……」
「本人だとも。あなたには、ばか息子の尻拭いをしていただこう。カンザス公爵家の財産を抵当にいれ放題した屑は、あなたの息子で間違いありませんねぇ? きっちり落とし前をつけてもらおうか?」
「お、お待ちください。ヨハンはすでにルミネ様と結婚しカンザス公爵家の者になっております。夫のしたことは妻の責任。若い夫婦は助け合うのが道理でしょう。そこのルミネ様は連帯保証人にもなっていらっしゃる。法的には全く問題ありません!」
「ふん、屑は必ず責任逃れに法を隠れ蓑に使う。いいか? 法律は本来弱き立場の善良な者の為にあるべきものだ! それにだ、法的に問題なくとも人道的にはどうかな? 確か、ブラック侯爵の長女は隣国の高位貴族に嫁いでいたな? ソルボンヌ侯爵家だったよなぁ? とても信仰心に厚い倫理観の強い一族で有名だ。父親と兄がカンザス公爵家を食い物にして私の留守中にルミネを借金まみれにし、娼館に沈ませたと知ったらショックだろうな。婚家ではさぞ肩身の狭い思いをすることだろう。考えただけで心が痛むよ」
「な、なんて卑怯な! それでも騎士団長か? 騎士団員は高潔な精神と正しい行いをモットーとするのではなかったのか? こんな脅しは卑怯だ!……」
「うふふ。ソルボンヌ一族に嫁いだハイジ様とはそれほど仲がよかったわけではありませんが、久しぶりに会いたくなってしまいましたわ。娼館に売られてどんなに心細い思いをしたか、いろいろ聞いて欲しいわぁ。夜会に出てあちらの王族の方々にも愚痴を聞いてもらいましょう」
ルミネは嬉しそうにブラック侯爵に話しかけた。
「ば、ばかな……そんなことをしたらろくでもないことを勘ぐられますよ。客の一人か二人は取ったのだろうとか……人の噂は無責任で容赦がないのを知らないのか!」
「人の噂なんか怖がっていたら娼館の門をくぐった私は生きていけませんわ。そういえばヨハン様はどこにいらっしゃるのか本当に知らないのですか? ヨハン様さえ帰ってくれば、この子の為にも考えてもいいのに……」
ルミネはさきほどお腹に巻いたタオルをドレスの上から愛おしげに撫でたのだった。
その様子を見てブラック侯爵がほくそ笑んだ。
(あの様子じゃぁ、妊娠してるか……早速ヨハンに包帯男になって戻って来てもらうか。やはり、箱入り娘は甘い。あれだけの目に遭ってもヨハンが恋しいとは……恋は盲目か……あっはははは。助かったわい)
ルミネはブラック侯爵のふてぶてしいニヤリ顔に、無垢な表情を装って微笑みかけた。
アーサーは慈愛のこもった眼差しで少し膨れたルミネの腹(中身はタオルw)を見やるのだった。
「旦那様、王城に至急来るようにとの王命が……」
「はて? このような時間にいったい……せっかく美酒を味わっていたのに……」
ブラック侯爵はいそいそと城に向かい謁見の間を目指す。なぜか騎士団の青年達がざわざわと回廊に溢れ色紙を持って立ち並んでいる。
「これは、何の列だ? 邪魔だぞ!」
ブラック侯爵がその列を無視して謁見の間に向かおうとすると、若者の一人が激しく抗議してくるのだった。
「ちょっと、そこのおっさん! 割り込むのやめてもらっていいですか? ご帰還された英雄殿にサインをもらうのは順番ですからっ!」
「はぁ? 馬鹿者! わしは侯爵だぞ!」
「爵位なんて関係ありませんね。騎士団では爵位より力がものを言う」
「くっ! わしは陛下から直接呼ばれているのだぞ!」
「あぁ、なんだサインが欲しいのではないのですか。それじゃぁ、どうぞ~~」
あっさりと道をあけた騎士はまだ少年だった。
(最近の若い者は躾がなっておらんわい! 全く、なにが英雄だ……ん? 待てよ……英雄って……誰だ?)
謁見の間を開けると国王陛下よりさらに覇者的オーラを纏った男が、ブラック侯爵を見てニヤリと微笑んだ。
「やぁ、私の妹がずいぶんブラック侯爵のどら息子に世話になったようですねぇ? さて、貴方の息子の不祥事をどうするおつもりですか?」
「あっ……な、なぜアーサー様がここに? 亡くなったものだと……本当にご本人でいらっしゃいますか? まさか、そんな……」
「本人だとも。あなたには、ばか息子の尻拭いをしていただこう。カンザス公爵家の財産を抵当にいれ放題した屑は、あなたの息子で間違いありませんねぇ? きっちり落とし前をつけてもらおうか?」
「お、お待ちください。ヨハンはすでにルミネ様と結婚しカンザス公爵家の者になっております。夫のしたことは妻の責任。若い夫婦は助け合うのが道理でしょう。そこのルミネ様は連帯保証人にもなっていらっしゃる。法的には全く問題ありません!」
「ふん、屑は必ず責任逃れに法を隠れ蓑に使う。いいか? 法律は本来弱き立場の善良な者の為にあるべきものだ! それにだ、法的に問題なくとも人道的にはどうかな? 確か、ブラック侯爵の長女は隣国の高位貴族に嫁いでいたな? ソルボンヌ侯爵家だったよなぁ? とても信仰心に厚い倫理観の強い一族で有名だ。父親と兄がカンザス公爵家を食い物にして私の留守中にルミネを借金まみれにし、娼館に沈ませたと知ったらショックだろうな。婚家ではさぞ肩身の狭い思いをすることだろう。考えただけで心が痛むよ」
「な、なんて卑怯な! それでも騎士団長か? 騎士団員は高潔な精神と正しい行いをモットーとするのではなかったのか? こんな脅しは卑怯だ!……」
「うふふ。ソルボンヌ一族に嫁いだハイジ様とはそれほど仲がよかったわけではありませんが、久しぶりに会いたくなってしまいましたわ。娼館に売られてどんなに心細い思いをしたか、いろいろ聞いて欲しいわぁ。夜会に出てあちらの王族の方々にも愚痴を聞いてもらいましょう」
ルミネは嬉しそうにブラック侯爵に話しかけた。
「ば、ばかな……そんなことをしたらろくでもないことを勘ぐられますよ。客の一人か二人は取ったのだろうとか……人の噂は無責任で容赦がないのを知らないのか!」
「人の噂なんか怖がっていたら娼館の門をくぐった私は生きていけませんわ。そういえばヨハン様はどこにいらっしゃるのか本当に知らないのですか? ヨハン様さえ帰ってくれば、この子の為にも考えてもいいのに……」
ルミネはさきほどお腹に巻いたタオルをドレスの上から愛おしげに撫でたのだった。
その様子を見てブラック侯爵がほくそ笑んだ。
(あの様子じゃぁ、妊娠してるか……早速ヨハンに包帯男になって戻って来てもらうか。やはり、箱入り娘は甘い。あれだけの目に遭ってもヨハンが恋しいとは……恋は盲目か……あっはははは。助かったわい)
ルミネはブラック侯爵のふてぶてしいニヤリ顔に、無垢な表情を装って微笑みかけた。
アーサーは慈愛のこもった眼差しで少し膨れたルミネの腹(中身はタオルw)を見やるのだった。
39
あなたにおすすめの小説
お好きになさって下さい、私は一切気にしませんわ
Kouei
恋愛
婚約者のクレマンド様は、いつも私との約束を破ってばかり。
理由は決まって『従妹ライラ様との用事』
誕生日会にすら来なかった彼に、私はついに告げた。
「どうぞ、私以外のご令嬢をエスコートするなり、お出かけするなり、関係を持つなり、お好きになさって下さい。私は一切気にしませんわ」
二人の想いは、重なり合えるのだろうか ……
※他のサイトにも公開しています。
完結 そんなにその方が大切ならば身を引きます、さようなら。
音爽(ネソウ)
恋愛
相思相愛で結ばれたクリステルとジョルジュ。
だが、新婚初夜は泥酔してお預けに、その後も余所余所しい態度で一向に寝室に現れない。不審に思った彼女は眠れない日々を送る。
そして、ある晩に玄関ドアが開く音に気が付いた。使われていない離れに彼は通っていたのだ。
そこには匿われていた美少年が棲んでいて……
あなたのことなんて、もうどうでもいいです
もるだ
恋愛
舞踏会でレオニーに突きつけられたのは婚約破棄だった。婚約者の相手にぶつかられて派手に転んだせいで、大騒ぎになったのに……。日々の業務を押しつけられ怒鳴りつけられいいように扱われていたレオニーは限界を迎える。そして、気がつくと魔法が使えるようになっていた。
元婚約者にこき使われていたレオニーは復讐を始める。
完結 貴方が忘れたと言うのなら私も全て忘却しましょう
音爽(ネソウ)
恋愛
商談に出立した恋人で婚約者、だが出向いた地で事故が発生。
幸い大怪我は負わなかったが頭を強打したせいで記憶を失ったという。
事故前はあれほど愛しいと言っていた容姿までバカにしてくる恋人に深く傷つく。
しかし、それはすべて大嘘だった。商談の失敗を隠蔽し、愛人を侍らせる為に偽りを語ったのだ。
己の事も婚約者の事も忘れ去った振りをして彼は甲斐甲斐しく世話をする愛人に愛を囁く。
修復不可能と判断した恋人は別れを決断した。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる