(完)貴女は私の全てを奪う妹のふりをする他人ですよね?

青空一夏

文字の大きさ
1 / 18

1 いきなり増えた家族?

しおりを挟む
 私はイサベラ・プリンシペ公爵令嬢。お母様はフレヤ・プリンシペ公爵夫人で、王妹にあたる。だから、私は王太子エンリケ殿下と第2王子レオ殿下とは幼馴染だ。

 頻繁に王宮に遊びに行き、国王陛下にも王妃殿下にも可愛がられた。

「イサベラは将来の王妃に相応しい気品と知性を備える女性になると思うわ。エンリケと婚約したらどうかしら?」王妃様の言葉にエンリケ王太子殿下はその美しい顔にきらめくような微笑を浮かべた。

「母上、とてもいいお考えですね。私はイサベラを一生大事にすると誓います」
「身に余る光栄ですわ! 私こそ王太子殿下を心よりお支えすることを誓いますわ」

 王太子殿下を密かに想っていた私は即座にそう申し上げた。お母様もお父様もお兄様もとても喜んでくれたわ。

「イサベラ・プリンシペ公爵令嬢を未来の王太子妃としてここに婚約関係を結ぶものとする。女神様の祝福があらんことを!」
 国王陛下の宣言とともに三日三晩のお祭りが行われた。

 私達が通う貴族学園でもパーティが開かれ、皆が祝福してくれたの。

「イサベラ様! おめでとうございます。お似合いですわ」

 親友のシャーロット・ウエスト侯爵令嬢、エルシィ・エジャートン侯爵令嬢、アイラ・アーバスノット伯爵令嬢は駆け寄ってきて私を抱きしめた。

 このように家族にも婚約者にも友人にも恵まれた私は幸せの絶頂だった。





 ある日、お父様の親友フレディ・シリア辺境伯爵夫妻が事故死した。その夫妻には私より1歳年下の娘がいた。それがイングリッドだった。

「イサベラに妹ができるよ。嬉しいだろう? この子はかわいそうな子でね。うちで引き取ることにしたよ」
 お父様は心の底から嬉しそうな顔をしている。

「なぜ、辺境伯夫妻の子供を引き取るのですか? 辺境伯に親戚はいらっしゃらないのですか?」

「……それがなぁ、イングリッドの母親のエヴィリンは男爵令嬢で後妻。エヴィリンの実家は没落している。シリア家ではイングリッドと血のつながらない兄が家督を継ぐとなれば邪魔者扱いされるのに決まっている。だから、引き取る」
 お父様のお話がどうにも釈然としない。



 その翌日やって来たイングリッドは、光沢のあるピンクの髪にあどけなさが残る愛らしい顔の少女だった。

「お父様、お兄様! 私を引き取ってくださりありがとうございます。両親を亡くしてどうしていいかわからず心細い思いでおりましたから、とても嬉しいです! 義兄にはいつも意地悪されており何度か殴られたこともあるくらいなので……それに実はお父様も怒りっぽくて私をよくぶちましたから……」

「まさか……そんなことが! かわいそうにここを自分の家だと思いなさい」
 お父様の言葉にお兄様も頷き、心優しいお母様は涙を流していた。

「お母様、よろしくお願いいたします! このように上品で素敵なお母様ができるなんて夢のようです! 絶対に私、自慢の娘になりますね」

――え? プリンシペ公爵令嬢は私一人ではないの? 自慢の娘?

「あら、ごめんなさい。戸籍上は養女にしていただいてないのに図々しいことを言ってすみません!  ただ、ほんとうにこんな方達が家族だったらいいのにって……」
 大きな瞳を潤ませてきらりと光る涙を流すイングリッド。

「それなら、僕のことは『お兄様』と呼んでいいから。ほんとうの家族と思ってくれたまえ」

「そうね、私のことも『お母様』でいいわ! 素敵な娘ができて嬉しいわ」

「うん、うん。家族が増えるのは喜ばしいことだ。私のことも、もちろん『お父様』で構わないよ」

「あ、私も『お姉様』で……」
 私の言葉は途中でイングリッドの声にかき消された。

「いいえ! イサベラ様のことはイサベラ様とお呼びしますわ。王太子殿下の婚約者でいらっしいますから気軽に『お姉様』とは呼べません。イサベラ様! よろしくお願いいたしますって……そんな怖い顔つきで睨まないでください! なにか私が気に障ることをしたのなら謝りますから……」

――え? 全く睨んでないけど?……

「イサベラ! 貴方は人よりとても恵まれているのよ? 感謝とその幸せを人にも分けてあげることを学ばなくては立派な王太子妃にはなれないわよ!」
 大好きなお母様が今までにない厳しい声を出したのだった。
しおりを挟む
感想 87

あなたにおすすめの小説

行ってらっしゃい旦那様、たくさんの幸せをもらった私は今度はあなたの幸せを願います

木蓮
恋愛
サティアは夫ルースと家族として穏やかに愛を育んでいたが彼は事故にあい行方不明になる。半年後帰って来たルースはすべての記憶を失っていた。 サティアは新しい記憶を得て変わったルースに愛する家族がいることを知り、愛しい夫との大切な思い出を抱えて彼を送り出す。 記憶を失くしたことで生きる道が変わった夫婦の別れと旅立ちのお話。

笑う令嬢は毒の杯を傾ける

無色
恋愛
 その笑顔は、甘い毒の味がした。  父親に虐げられ、義妹によって婚約者を奪われた令嬢は復讐のために毒を喰む。

【完結】ええと?あなたはどなたでしたか?

ここ
恋愛
アリサの婚約者ミゲルは、婚約のときから、平凡なアリサが気に入らなかった。 アリサはそれに気づいていたが、政略結婚に逆らえない。 15歳と16歳になった2人。ミゲルには恋人ができていた。マーシャという綺麗な令嬢だ。邪魔なアリサにこわい思いをさせて、婚約解消をねらうが、事態は思わぬ方向に。

願いの代償

らがまふぃん
恋愛
誰も彼もが軽視する。婚約者に家族までも。 公爵家に生まれ、王太子の婚約者となっても、誰からも認められることのないメルナーゼ・カーマイン。 唐突に思う。 どうして頑張っているのか。 どうして生きていたいのか。 もう、いいのではないだろうか。 メルナーゼが生を諦めたとき、世界の運命が決まった。 *ご都合主義です。わかりづらいなどありましたらすみません。笑って読んでくださいませ。本編15話で完結です。番外編を数話、気まぐれに投稿します。よろしくお願いいたします。 ※ありがたいことにHOTランキング入りいたしました。たくさんの方の目に触れる機会に感謝です。本編は終了しましたが、番外編も投稿予定ですので、気長にお付き合いくださると嬉しいです。たくさんのお気に入り登録、しおり、エール、いいねをありがとうございます。R7.1/31 *らがまふぃん活動三周年周年記念として、R7.11/4に一話お届けいたします。楽しく活動させていただき、ありがとうございます。

では、復讐するか

らがまふぃん
恋愛
ロットタニア王国王太子リスラン・ノーサテリテ・ロットタニアには、一つ年下のワーテラー公爵次女、ユセフィラ・サウロ・ワーテラーというとても評判の良い婚約者がいる。 そんな二人の関係は、学園に入ってから陰りが見える。 伯爵令嬢スウィーディー・オプトとリスランやその側近たちとの様々な憶測が囁かれていたある日、隣国に留学していた子爵令息のコノア・クルードが学園に編入してきた。 コノアは、噂の伯爵令嬢スウィーディーから聞かされる。 みんなはユセフィラに騙されている、だからリスランから離さないといけない、という内容だった。 周辺国にまで評判の良いユセフィラの噂は、隣国にいたコノアの耳にも当然入っている。 一方、スウィーディーの学園での評判は悪いものばかり。 評判の悪い自分は信じてもらえないことはわかっている、と自身の学園での評価も理解しているスウィーディー。 自分の見たものを信じるコノアは、スウィーディーと行動を共にすることになるのだが――。 ※ご都合主義です。ポンコツ作者の作品ですので残念感がすごいですが、鼻で笑ってくだされば。幕間含め全二十四話+番外編でお届けいたします。番外編は、気まぐれに投稿します。よろしかったらお付き合いください。 ※R6.7/9HOTランキング入りしておりました!ひとつ前の作品 精霊の使い?いいえ、違います。 に続いての快挙です。連載中の作品がランキング入りをするのが初めてで、続きがある状態でたくさんの方々の目に触れる機会に恵まれ嬉しいです。たくさんのお気に入り登録、しおり、いいねを本当にありがとうございます。 *らがまふぃん活動二周年記念として、R6.11/3に一話お届けいたします。少しでも楽しんでいただけますように。

この雪のように溶けていけ

豆狸
恋愛
第三王子との婚約を破棄され、冤罪で国外追放されたソーンツェは、隣国の獣人国で静かに暮らしていた。 しかし、そこにかつての許婚が── なろう様でも公開中です。

【完結】婚約破棄した王子と男爵令嬢のその後……は幸せ?……な訳ない!

たろ
恋愛
「エリザベス、君との婚約を破棄する」 「どうしてそんな事を言うのですか?わたしが何をしたと言うのでしょう」 「君は僕の愛するイライザに対して嫌がらせをしただろう、そんな意地の悪い君のことは愛せないし結婚など出来ない」 「……愛せない……わかりました。殿下……の言葉を……受け入れます」 なんで君がそんな悲しそうな顔をするんだ? この話は婚約破棄をして、父親である陛下に嘘で固めて公爵令嬢のエリザベスを貶めたと怒られて 「そんなにその男爵令嬢が好きなら王族をやめて男爵に婿に行け」と言われ、廃嫡される王子のその後のお話です。 頭脳明晰、眉目秀麗、みんなが振り向くかっこいい殿下……なのにエリザベスの前では残念な男。 ★軽い感じのお話です そして、殿下がひたすら残念です 広ーい気持ちで読んでいただけたらと思います

【完結】私から全てを奪った妹は、地獄を見るようです。

凛 伊緒
恋愛
「サリーエ。すまないが、君との婚約を破棄させてもらう!」 リデイトリア公爵家が開催した、パーティー。 その最中、私の婚約者ガイディアス・リデイトリア様が他の貴族の方々の前でそう宣言した。 当然、注目は私達に向く。 ガイディアス様の隣には、私の実の妹がいた── 「私はシファナと共にありたい。」 「分かりました……どうぞお幸せに。私は先に帰らせていただきますわ。…失礼致します。」 (私からどれだけ奪えば、気が済むのだろう……。) 妹に宝石類を、服を、婚約者を……全てを奪われたサリーエ。 しかし彼女は、妹を最後まで責めなかった。 そんな地獄のような日々を送ってきたサリーエは、とある人との出会いにより、運命が大きく変わっていく。 それとは逆に、妹は── ※全11話構成です。 ※作者がシステムに不慣れな時に書いたものなので、ネタバレの嫌な方はコメント欄を見ないようにしていただければと思います……。

処理中です...