20 / 23
20 魔王の溺愛ぶりが暴走したわけ
しおりを挟む
アリアナが正式に魔王の妻となった初夜のこと、月明かりに照らされた庭園でふたりきりの静かな時間を過ごしていた。これから同衾するというドキドキのプレッシャーをふたりは感じている。
(はぁーー。緊張するぞ。アリアナに怖い思いをさせないためにも、まずは雰囲気作りだな。それから、少し弱めのお酒を飲ませて緊張をといてもらって・・・・・・うん、それからああしてこうして・・・・・・うんうん)
(はぁーー。緊張するわね。私はどうすればいいのかしら? 考えたら、誰からも結婚後の夫婦の営みについて教わっていないわ。どうしよう? だって、私は王太子の婚約者として働かされていただけだし・・・・・・なにもわからないのよ)
「あのぉーー、私、初夜について、まったく教育されていなくて・・・・・・想像もつかないので・・・・・・なるべく丁寧に優しくご指導いただけると嬉しいです」
緊張のあまり震えているアリアナに、魔王はキュンときてしまう。
「可愛すぎる・・・・・・どうしよう。我が妃があまりにも可愛すぎる」
魔王が抱きしめると、アリアナが魔王の有り余った魔力を吸収して、穏やかな光に包まれ始めた。
「やはり、アリアナは私の運命の相手だったのか。もともと魔力が暴走するほどの膨大な魔力量を持つ魔族が妻を娶った場合、その妻が運命の相手であれば、妻は夫の魔力を吸収し、暴走を鎮めることができるのさ。つまり、アリアナが側にいれば、もうジョアンナに霊薬の原料を取ってきてもらわなくてもいい」
「まぁ。私がダリの役に立てるなんて、嬉しいです」
アリアナは頬染めて微笑んだ。この後の展開は、甘く甘くどこまでも甘くなるはずだったのだがーー
しかし、突然、庭園の奥から暗い影が忍び寄ってきた。その影は、魔界の中でも特に過激な魔族至上主義者たちで、アリアナの存在を許せず、アリアナを排除しようと決意していた。
魔王はアリアナを守るために前に出たが、既に敵は庭園内に散らばり、ふたりを囲んだ。
魔界では、新婚初夜の儀式が魔界全体の平安と繁栄を祈る重要な時間とされており、この時間に側近や護衛が立ち会うことは、儀式の神聖性を損なうとされていた。なので、新婚初夜の儀式の間は、側近や護衛たちは特定の魔界の聖地で魔界全体の安定を祈り、魔王とアリアナの幸福を祈願していたのだ。
その隙をついた巧妙な刺客たちに、魔王は怒りに震えた。敵のリーダーが前に出て、冷酷な笑みを浮かべながら言う。
「人間が魔界の王妃になるなど許されないことです。魔王様は偉大な王でしょう? 考え直してください。その人間の女を殺し、魔族から花嫁を娶るべきです!」
その言葉に、刺客たちが一斉に賛同の声を上げ、襲撃の態勢を整える。
「私の妃はアリアナだけだ。他の妃を娶る気はないし、側妃もいらん。無駄なことはやめて、さっさとこの場を立ち去れ」
「残念です。でしたら、その女には死んでもらうしかありません。そうすれば、魔王様も正気に戻るでしょう」
刺客たちの狙いはアリアナだけ。しかし、アリアナをこよなく愛する魔王が、それを黙って見ているわけがないのだ。
魔王は魔力を高め、周囲に放射状に広がる魔法の防壁でアリアナを包んだ。しかし、魔族たちは巧妙にその防壁を突破しようと、ざまざまな策を講じる。魔王の顔には愛する者を守るための決意と刺客たちへの激しい憎悪が浮かぶ。
「愚か者たちめ! 私の限界もこれまでだ。私の最愛を害する者は決して許さない! 死をもってその罪をあがなえ」
魔王は叫びながら、強大な魔法の力を解き放つ。空気が震え強烈な光が暗闇を照らし出し、刺客たちは次々と倒れ息絶えた。
その怒りは凄まじく、魔力の暴走をはじめた魔王を、アリアナは優しく抱きしめた。
「ダリ。もう悪者たちは息絶えました。私もどこも怪我はしていません。落ち着いて、深呼吸をしてください」
アリアナに抱きしめられた魔王は、徐々に落ち着きを取り戻していった。
しかし、アリアナ暗殺未遂事件は魔王の心に暗い影を落とした。なぜなら、それからというもの、魔王の執拗なまでの過保護が始まったのだから。
魔王の心には、アリアナが再び危険にさらされるのではないかという恐怖が深く根ざしていた。それは、彼女を深く愛するがゆえの、重く耐え難い恐怖であった。
そこで、魔王は彼女が危険に遭うことを避けるため、『魔王妃の間』に彼女を閉じ込めようと考えついた。
「アリアナはこの部屋から一歩も出てはいけない。また刺客が来たらどうする? 内側からしっかり鍵をかけ、私以外を入れてはいけないよ。もちろん、うっかりアリアナが外に出ないように魔法をかけてあげよう」
魔王の言葉にアリアナは困惑した。『魔王妃の間』の窓さえふさごうとしたからだ。アリアナはその異常な言動に戸惑いながらも、魔王の愛がどれほど深いかを痛感した。しかし、これに従うことはできそうもない。
「ダリ、聞いて。一生、この部屋のなかで生きていくなんて耐えられません。ダリ以外の人とも会話を楽しみたいですし、庭園を散歩したり、魔王城の外で開催される市場や、これから開かれるお祭りも見物したいです。ダリと一緒にいるだけで幸せですけれど、『魔王妃の間』に隔離されるのは悲しすぎます。ダリだって、私が悲しい気持ちになるのは嫌ですよね?」
「・・・・・・たしかに、極端な発想だったな。アリアナ、すまない。それなら、ずっと私の側にいてくれ。私が執務室にいるときも、『評議の間』にいるときも、リオンと一緒に軍隊の訓練を行っているときもだ」
「ダリが臣下たちから笑われますわ。あまりにも妻べったりの魔王だと、からかわれたりしませんか?」
「からかわれることなど気にはしない。そんな者は可哀想な奴なのだ。運命の相手に巡り会えなかった者の僻みとして、温かい気持ちで受け止めるまでだ」
「はぁ・・・・・・わかりました」
これ以降、魔王の膝がアリアナの定位置になったことは、言うまでもない。
(はぁーー。緊張するぞ。アリアナに怖い思いをさせないためにも、まずは雰囲気作りだな。それから、少し弱めのお酒を飲ませて緊張をといてもらって・・・・・・うん、それからああしてこうして・・・・・・うんうん)
(はぁーー。緊張するわね。私はどうすればいいのかしら? 考えたら、誰からも結婚後の夫婦の営みについて教わっていないわ。どうしよう? だって、私は王太子の婚約者として働かされていただけだし・・・・・・なにもわからないのよ)
「あのぉーー、私、初夜について、まったく教育されていなくて・・・・・・想像もつかないので・・・・・・なるべく丁寧に優しくご指導いただけると嬉しいです」
緊張のあまり震えているアリアナに、魔王はキュンときてしまう。
「可愛すぎる・・・・・・どうしよう。我が妃があまりにも可愛すぎる」
魔王が抱きしめると、アリアナが魔王の有り余った魔力を吸収して、穏やかな光に包まれ始めた。
「やはり、アリアナは私の運命の相手だったのか。もともと魔力が暴走するほどの膨大な魔力量を持つ魔族が妻を娶った場合、その妻が運命の相手であれば、妻は夫の魔力を吸収し、暴走を鎮めることができるのさ。つまり、アリアナが側にいれば、もうジョアンナに霊薬の原料を取ってきてもらわなくてもいい」
「まぁ。私がダリの役に立てるなんて、嬉しいです」
アリアナは頬染めて微笑んだ。この後の展開は、甘く甘くどこまでも甘くなるはずだったのだがーー
しかし、突然、庭園の奥から暗い影が忍び寄ってきた。その影は、魔界の中でも特に過激な魔族至上主義者たちで、アリアナの存在を許せず、アリアナを排除しようと決意していた。
魔王はアリアナを守るために前に出たが、既に敵は庭園内に散らばり、ふたりを囲んだ。
魔界では、新婚初夜の儀式が魔界全体の平安と繁栄を祈る重要な時間とされており、この時間に側近や護衛が立ち会うことは、儀式の神聖性を損なうとされていた。なので、新婚初夜の儀式の間は、側近や護衛たちは特定の魔界の聖地で魔界全体の安定を祈り、魔王とアリアナの幸福を祈願していたのだ。
その隙をついた巧妙な刺客たちに、魔王は怒りに震えた。敵のリーダーが前に出て、冷酷な笑みを浮かべながら言う。
「人間が魔界の王妃になるなど許されないことです。魔王様は偉大な王でしょう? 考え直してください。その人間の女を殺し、魔族から花嫁を娶るべきです!」
その言葉に、刺客たちが一斉に賛同の声を上げ、襲撃の態勢を整える。
「私の妃はアリアナだけだ。他の妃を娶る気はないし、側妃もいらん。無駄なことはやめて、さっさとこの場を立ち去れ」
「残念です。でしたら、その女には死んでもらうしかありません。そうすれば、魔王様も正気に戻るでしょう」
刺客たちの狙いはアリアナだけ。しかし、アリアナをこよなく愛する魔王が、それを黙って見ているわけがないのだ。
魔王は魔力を高め、周囲に放射状に広がる魔法の防壁でアリアナを包んだ。しかし、魔族たちは巧妙にその防壁を突破しようと、ざまざまな策を講じる。魔王の顔には愛する者を守るための決意と刺客たちへの激しい憎悪が浮かぶ。
「愚か者たちめ! 私の限界もこれまでだ。私の最愛を害する者は決して許さない! 死をもってその罪をあがなえ」
魔王は叫びながら、強大な魔法の力を解き放つ。空気が震え強烈な光が暗闇を照らし出し、刺客たちは次々と倒れ息絶えた。
その怒りは凄まじく、魔力の暴走をはじめた魔王を、アリアナは優しく抱きしめた。
「ダリ。もう悪者たちは息絶えました。私もどこも怪我はしていません。落ち着いて、深呼吸をしてください」
アリアナに抱きしめられた魔王は、徐々に落ち着きを取り戻していった。
しかし、アリアナ暗殺未遂事件は魔王の心に暗い影を落とした。なぜなら、それからというもの、魔王の執拗なまでの過保護が始まったのだから。
魔王の心には、アリアナが再び危険にさらされるのではないかという恐怖が深く根ざしていた。それは、彼女を深く愛するがゆえの、重く耐え難い恐怖であった。
そこで、魔王は彼女が危険に遭うことを避けるため、『魔王妃の間』に彼女を閉じ込めようと考えついた。
「アリアナはこの部屋から一歩も出てはいけない。また刺客が来たらどうする? 内側からしっかり鍵をかけ、私以外を入れてはいけないよ。もちろん、うっかりアリアナが外に出ないように魔法をかけてあげよう」
魔王の言葉にアリアナは困惑した。『魔王妃の間』の窓さえふさごうとしたからだ。アリアナはその異常な言動に戸惑いながらも、魔王の愛がどれほど深いかを痛感した。しかし、これに従うことはできそうもない。
「ダリ、聞いて。一生、この部屋のなかで生きていくなんて耐えられません。ダリ以外の人とも会話を楽しみたいですし、庭園を散歩したり、魔王城の外で開催される市場や、これから開かれるお祭りも見物したいです。ダリと一緒にいるだけで幸せですけれど、『魔王妃の間』に隔離されるのは悲しすぎます。ダリだって、私が悲しい気持ちになるのは嫌ですよね?」
「・・・・・・たしかに、極端な発想だったな。アリアナ、すまない。それなら、ずっと私の側にいてくれ。私が執務室にいるときも、『評議の間』にいるときも、リオンと一緒に軍隊の訓練を行っているときもだ」
「ダリが臣下たちから笑われますわ。あまりにも妻べったりの魔王だと、からかわれたりしませんか?」
「からかわれることなど気にはしない。そんな者は可哀想な奴なのだ。運命の相手に巡り会えなかった者の僻みとして、温かい気持ちで受け止めるまでだ」
「はぁ・・・・・・わかりました」
これ以降、魔王の膝がアリアナの定位置になったことは、言うまでもない。
280
あなたにおすすめの小説
【完結】留学先から戻って来た婚約者に存在を忘れられていました
山葵
恋愛
国王陛下の命により帝国に留学していた王太子に付いて行っていた婚約者のレイモンド様が帰国された。
王家主催で王太子達の帰国パーティーが執り行われる事が決まる。
レイモンド様の婚約者の私も勿論、従兄にエスコートされ出席させて頂きますわ。
3年ぶりに見るレイモンド様は、幼さもすっかり消え、美丈夫になっておりました。
将来の宰相の座も約束されており、婚約者の私も鼻高々ですわ!
「レイモンド様、お帰りなさいませ。留学中は、1度もお戻りにならず、便りも来ずで心配しておりましたのよ。元気そうで何よりで御座います」
ん?誰だっけ?みたいな顔をレイモンド様がされている?
婚約し顔を合わせでしか会っていませんけれど、まさか私を忘れているとかでは無いですよね!?
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
出来損ないの私がお姉様の婚約者だった王子の呪いを解いてみた結果→
AK
恋愛
「ねえミディア。王子様と結婚してみたくはないかしら?」
ある日、意地の悪い笑顔を浮かべながらお姉様は言った。
お姉様は地味な私と違って公爵家の優秀な長女として、次期国王の最有力候補であった第一王子様と婚約を結んでいた。
しかしその王子様はある日突然不治の病に倒れ、それ以降彼に触れた人は石化して死んでしまう呪いに身を侵されてしまう。
そんは王子様を押し付けるように婚約させられた私だけど、私は光の魔力を有して生まれた聖女だったので、彼のことを救うことができるかもしれないと思った。
お姉様は厄介者と化した王子を押し付けたいだけかもしれないけれど、残念ながらお姉様の思い通りの展開にはさせない。
【完結】ブスと呼ばれるひっつめ髪の眼鏡令嬢は婚約破棄を望みます。
はゆりか
恋愛
幼き頃から決まった婚約者に言われた事を素直に従い、ひっつめ髪に顔が半分隠れた瓶底丸眼鏡を常に着けたアリーネ。
周りからは「ブス」と言われ、外見を笑われ、美しい婚約者とは並んで歩くのも忌わしいと言われていた。
婚約者のバロックはそれはもう見目の美しい青年。
ただ、美しいのはその見た目だけ。
心の汚い婚約者様にこの世の厳しさを教えてあげましょう。
本来の私の姿で……
前編、中編、後編の短編です。
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
だってお義姉様が
砂月ちゃん
恋愛
『だってお義姉様が…… 』『いつもお屋敷でお義姉様にいじめられているの!』と言って、高位貴族令息達に助けを求めて来た可憐な伯爵令嬢。
ところが正義感あふれる彼らが、その意地悪な義姉に会いに行ってみると……
他サイトでも掲載中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる