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往生際が悪いデラノ
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いっぽう、デラノはなんとかエレノアに許してもらおうと、必死に話しかける。
「あ、あの……エレノア様。僕はこれから、心を入れ替えて誠心誠意エレノア様に尽くしますから」
「その手の言い訳はもう結構ですわ。浮気癖なんて、そう簡単に治るものではありませんし。少しの間はおとなしくするでしょうけど、またすぐに同じことを繰り返すでしょうね。私にはよくわかります。それより、私への慰謝料と、エジャートン公爵家からあなたに渡されていたお金は、利息も含めてきっちり返済してくださいね? でも本当に良かった。結婚して、子供が生まれる前で済んで」
「子供……こんなことになるなら、子供が生まれるようなことをしておけばよかった……ぐはっ……」
デラノの台詞が終わるや否や、ベッカムの鉄拳が見事に鳩尾にめり込んだ。苦しげに息を詰まらせ、デラノはよろめく。
そこへ、エジャートン公爵の足が偶然にもデラノに引っかかる。デラノはすっかりバランスを失い、顔から床にぶざまに倒れ込んだ。
「失礼、デラノ君。決してわざとではないぞ。ただ、私は人よりも少し足が長くてね」
エジャートン公爵の足は確かに長いが、その動きはどう見ても偶然とは思えなかった。
「デラノ、キャリーと共にこれからの人生を歩むことを許す。ふたりで幸せになりなさい」
「へっ? 国王陛下。キャリーは奴隷になるのですよね? 僕は大丈夫です。どうかお気遣いなきよう……」
「よく言った! 大丈夫なんだな? では、デラノをキャリーと同じ強制労働の場へ連れていけ。感謝の言葉はいらぬ。余は理解のある王である」
国王は騎士たちに向かって命令した。
「ち、違います! そのような意味の大丈夫ではなく……!」
「強制労働の場では、同じ部屋で眠り、同じく額に汗を流し、共に働く。そこでこそ芽生える愛や信頼関係……美しい夫婦愛だな。しかし、そこで支払われる賃金はすべてエレノアへの慰謝料と返済金に充てることとする。以上だ!」
国王は「寛容な心」を示したとばかりに、にっこりと微笑んだ。
「お待ちください。僕はそれらのお金を返済したら、外に出られますよね? だって、クロネリー男爵夫人に毒を盛ったのはキャリーで、僕はキャリーに騙されていた被害者ですよ」
「なんと、薄情な……娘よりもキャリーといるほうが落ち着くのだろう? 遠慮しないで、未来永劫添い遂げたらいい。夫婦でエメラルドに囲まれて過ごせる場所を推薦しよう」
「あぁ、あそこは実に良いところですよね。アクアマリンやトパーズ、トルマリンなどもあると思います」
エジャートン公爵の提案にベッカムも満面の笑みで頷いた。
「はい? 意味がわかりません。……あっ、……まさか……。鉱山送りにしようって魂胆ですか? 僕はそこまで酷いことをしていませんよね?」
デラノにとっては、ほんの少し他の女性と親しくしただけで、そこまでエレノアを裏切ったとは思っていない。エレノアやエジャートン公爵夫妻が事故死すれば、自分が得して好きな子と楽しく暮らせると思ったのは事実だ。しかし、それを実行に移しているわけでもなく、ただキャリーと話をして笑い合っていただけだ。
冗談じゃないよ。もらったお金を何に使おうと自由なのに、今さら返せなんて身勝手すぎるし、慰謝料なんて大袈裟すぎる。
「もともと僕からエレノア様に言い寄ったわけじゃないですよ。エレノア様が勝手に僕を気に入って、婚約者にしてくれただけです。お金だって、僕が欲しいと言ってせがんだわけじゃありません。エジャートン公爵家の方から申し出てきたから、ただそれを了承しただけです」
「だったら、断れば良かったでしょう? 私は無理強いなんてしていませんわ。あなたは喜んで私に微笑んだわ。『こんな僕でいいんですか?』って、消え入りそうな声で……だから私は支えてあげたくて」
「消え入りそうな声? あぁ、あの時はエレノア様の助言どおりに間食もせず、食事を減らしていたからね。お腹が空いて力が出なかっただけだと思う」
エレノアはガクンと肩を落とした。初めから自分の思うような男性ではなかったことを、改めて痛感したからだ。
「あの男のことで悲しむことはひとつもないよ。今度は君が支えるんじゃなくて、支えられる方になったらどうだい? 私の隣はいつでも空いているし、私は自分で運命を切り開く男だ」
エレノアはベッカムのキザな言葉に思わず笑ってしまう。自信過剰なところも相変わらずだし、ちょっと上から目線なところも癪に障る。だが、ベッカムは絶対に嘘をつかない。エレノアを生涯支えるといったら、必ずそれを貫くだろう。
「ばかっ! こんなところで告白なんてしないでよっ」
そう言いながらもエレノアの頬は上気していたのだった。
貴族たちの間から拍手が湧き起こり、デラノは王家の騎士たちにズルズルと引きずられていく。まったく納得のいかないデラノは、ジタバタと手足を動かし、叫び続けていた。
「僕は被害者なんだ――! エレノア、お願いだよ。こっちを向いて! 味気ないお弁当も食べるからさぁ。もう怒鳴らないし、なんでも言うこと聞くから――ぁ。おかしいよ! なんでベッカムと手を繋ぐんだよ? そうか、自分の方こそ、ベッカムとできていて僕が邪魔になったんだろう?」
その瞬間、騎士の一人がデラノの首の後ろを手刀でビシッと叩く。気絶したデラノは、ようやくおとなしくなり、そのままずるずると引きずられていったのだった。
•───⋅⋆⁺‧₊☽⛦☾₊‧⁺⋆⋅───•
※次回、去勢労働の場の描写になります。あ、違った💦強制労働の場の描写ね(^^)
「あ、あの……エレノア様。僕はこれから、心を入れ替えて誠心誠意エレノア様に尽くしますから」
「その手の言い訳はもう結構ですわ。浮気癖なんて、そう簡単に治るものではありませんし。少しの間はおとなしくするでしょうけど、またすぐに同じことを繰り返すでしょうね。私にはよくわかります。それより、私への慰謝料と、エジャートン公爵家からあなたに渡されていたお金は、利息も含めてきっちり返済してくださいね? でも本当に良かった。結婚して、子供が生まれる前で済んで」
「子供……こんなことになるなら、子供が生まれるようなことをしておけばよかった……ぐはっ……」
デラノの台詞が終わるや否や、ベッカムの鉄拳が見事に鳩尾にめり込んだ。苦しげに息を詰まらせ、デラノはよろめく。
そこへ、エジャートン公爵の足が偶然にもデラノに引っかかる。デラノはすっかりバランスを失い、顔から床にぶざまに倒れ込んだ。
「失礼、デラノ君。決してわざとではないぞ。ただ、私は人よりも少し足が長くてね」
エジャートン公爵の足は確かに長いが、その動きはどう見ても偶然とは思えなかった。
「デラノ、キャリーと共にこれからの人生を歩むことを許す。ふたりで幸せになりなさい」
「へっ? 国王陛下。キャリーは奴隷になるのですよね? 僕は大丈夫です。どうかお気遣いなきよう……」
「よく言った! 大丈夫なんだな? では、デラノをキャリーと同じ強制労働の場へ連れていけ。感謝の言葉はいらぬ。余は理解のある王である」
国王は騎士たちに向かって命令した。
「ち、違います! そのような意味の大丈夫ではなく……!」
「強制労働の場では、同じ部屋で眠り、同じく額に汗を流し、共に働く。そこでこそ芽生える愛や信頼関係……美しい夫婦愛だな。しかし、そこで支払われる賃金はすべてエレノアへの慰謝料と返済金に充てることとする。以上だ!」
国王は「寛容な心」を示したとばかりに、にっこりと微笑んだ。
「お待ちください。僕はそれらのお金を返済したら、外に出られますよね? だって、クロネリー男爵夫人に毒を盛ったのはキャリーで、僕はキャリーに騙されていた被害者ですよ」
「なんと、薄情な……娘よりもキャリーといるほうが落ち着くのだろう? 遠慮しないで、未来永劫添い遂げたらいい。夫婦でエメラルドに囲まれて過ごせる場所を推薦しよう」
「あぁ、あそこは実に良いところですよね。アクアマリンやトパーズ、トルマリンなどもあると思います」
エジャートン公爵の提案にベッカムも満面の笑みで頷いた。
「はい? 意味がわかりません。……あっ、……まさか……。鉱山送りにしようって魂胆ですか? 僕はそこまで酷いことをしていませんよね?」
デラノにとっては、ほんの少し他の女性と親しくしただけで、そこまでエレノアを裏切ったとは思っていない。エレノアやエジャートン公爵夫妻が事故死すれば、自分が得して好きな子と楽しく暮らせると思ったのは事実だ。しかし、それを実行に移しているわけでもなく、ただキャリーと話をして笑い合っていただけだ。
冗談じゃないよ。もらったお金を何に使おうと自由なのに、今さら返せなんて身勝手すぎるし、慰謝料なんて大袈裟すぎる。
「もともと僕からエレノア様に言い寄ったわけじゃないですよ。エレノア様が勝手に僕を気に入って、婚約者にしてくれただけです。お金だって、僕が欲しいと言ってせがんだわけじゃありません。エジャートン公爵家の方から申し出てきたから、ただそれを了承しただけです」
「だったら、断れば良かったでしょう? 私は無理強いなんてしていませんわ。あなたは喜んで私に微笑んだわ。『こんな僕でいいんですか?』って、消え入りそうな声で……だから私は支えてあげたくて」
「消え入りそうな声? あぁ、あの時はエレノア様の助言どおりに間食もせず、食事を減らしていたからね。お腹が空いて力が出なかっただけだと思う」
エレノアはガクンと肩を落とした。初めから自分の思うような男性ではなかったことを、改めて痛感したからだ。
「あの男のことで悲しむことはひとつもないよ。今度は君が支えるんじゃなくて、支えられる方になったらどうだい? 私の隣はいつでも空いているし、私は自分で運命を切り開く男だ」
エレノアはベッカムのキザな言葉に思わず笑ってしまう。自信過剰なところも相変わらずだし、ちょっと上から目線なところも癪に障る。だが、ベッカムは絶対に嘘をつかない。エレノアを生涯支えるといったら、必ずそれを貫くだろう。
「ばかっ! こんなところで告白なんてしないでよっ」
そう言いながらもエレノアの頬は上気していたのだった。
貴族たちの間から拍手が湧き起こり、デラノは王家の騎士たちにズルズルと引きずられていく。まったく納得のいかないデラノは、ジタバタと手足を動かし、叫び続けていた。
「僕は被害者なんだ――! エレノア、お願いだよ。こっちを向いて! 味気ないお弁当も食べるからさぁ。もう怒鳴らないし、なんでも言うこと聞くから――ぁ。おかしいよ! なんでベッカムと手を繋ぐんだよ? そうか、自分の方こそ、ベッカムとできていて僕が邪魔になったんだろう?」
その瞬間、騎士の一人がデラノの首の後ろを手刀でビシッと叩く。気絶したデラノは、ようやくおとなしくなり、そのままずるずると引きずられていったのだった。
•───⋅⋆⁺‧₊☽⛦☾₊‧⁺⋆⋅───•
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