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番外編
3 微笑みを絶やさずに、は大事さ(クリストフェル視点)
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アデラーイデの商会に着くと、会長に会いたいと受付の女性に告げた。
「どのようなご用件でしょうか? そもそもお約束はしていますか?」
胡散臭そうにわたしを値踏みする女性に思わず笑い(苦笑)が漏れる。
「約束はしていない。受付の君に言って済む要件なら、わざわざこのわたしが来るわけがないだろう? わたしは忙しい身なのだよ」
懐中時計を覗くと女性の顔色が変わった。
「し、失礼しました。会長を呼んできます。先ほどのご無礼はどうぞお許しください。ちょ、ちょっとお待ちくださいね」
(やけに最初と口調が違うじゃないか?)
「さすがです。名前を名乗らずともその懐中時計の蓋には、アーネル伯爵家の紋章が入っておりますからね。やはりクリストフェル様は素晴らしい」
横にいたスチュアートが密やかな声で褒めたたえるが、これはたまたま時間が気になっただけだ。
「かいちょーー。かいちょーー。お客様です。お会いになった方がいいです」
女性の慌てた声が奥から漏れ聞こえてくる。
(あんな大声を出したら、来客に筒抜けなのに従業員の教育がなっていないな)
まもなく、アデラーイデと思われる女性が現れて応接室に通された。スチュアートは座らずに、わたしの横に立つ。
アデラーイデに要件を伝えると、わたしの提示した利息は払えないと言い出したが、そんなことはわかっている。持ち出したお金にかかる今日までの利息は莫大だ。10日で5割の利息は、もとより返してもらうことを期待してかける利息ではない。お仕置き、つまりは制裁の意味も兼ねた利息だ。
金を勝手に持ち出すことは犯罪だし、アーネル伯爵家をコケにしたらどうなるかを初めに知ってもらう必要がある。それにアーネル伯爵家はアンネリの実家でもある。妻をコケにしたことと同義と思えば、つい声が荒くなった。
「……しかも、お前はわたしの愛する妻アンネリの実家の財産を持ち逃げした罪人なんだよ。わたしはね、愛する女性を害する人間は許せないのです。どうやらこれは血筋みたいでしてね」
(これぐらいは言っていいと思う)
金銭消費貸借契約書と労働契約書(雇用契約書)にサインをするのを待っている間、応接室にあった雑誌を手に取り『馬車の仕組みと構造』特集のページを見つけ、興味深くそれを読んでいた。
馬車の構造の解説図を見て、これならちょっと工夫すれば事故に発展しそうだと確信する。
「馬車の事故って人為的に起こせるって知っていますか?」
つい場違いな言葉を発して笑ってごまかした。
あのろくでなしのオリヤン伯父上を追い詰めてくれたことは、アデラーイデにむしろ感謝している。ありったけの金を抱えて男と逃げてくれるなんて傑作だと思う。母上を裏切った伯父上にはいい薬になったので、ある意味ご褒美もあげたいくらいだ。そう思うと自然に笑顔が増えて、つい彼らに爽やかな笑顔を振りまいた。
アーネル伯爵家傘下になったアデラーイデの商会は、売上が右肩あがりですさまじい利益を生み出していく。あの商会にはわたしの部下も数人送りこみ、監視させつつわたしの指示も伝える役割を与えたが、いつもアデラーイデ夫妻の勤勉さを褒める報告がされた。
「あの夫婦は屋敷も処分して、狭い家に自主的に引っ越しました。とても真面目に働いています」
思いのほか善良な夫婦だったようでびっくりだ。やはり、わたしの優しい対応が良かったのだろう。微笑みを絶やさず優しく接することは、こちらの誠意が早く伝わるのだと実感したのだった。
「どのようなご用件でしょうか? そもそもお約束はしていますか?」
胡散臭そうにわたしを値踏みする女性に思わず笑い(苦笑)が漏れる。
「約束はしていない。受付の君に言って済む要件なら、わざわざこのわたしが来るわけがないだろう? わたしは忙しい身なのだよ」
懐中時計を覗くと女性の顔色が変わった。
「し、失礼しました。会長を呼んできます。先ほどのご無礼はどうぞお許しください。ちょ、ちょっとお待ちくださいね」
(やけに最初と口調が違うじゃないか?)
「さすがです。名前を名乗らずともその懐中時計の蓋には、アーネル伯爵家の紋章が入っておりますからね。やはりクリストフェル様は素晴らしい」
横にいたスチュアートが密やかな声で褒めたたえるが、これはたまたま時間が気になっただけだ。
「かいちょーー。かいちょーー。お客様です。お会いになった方がいいです」
女性の慌てた声が奥から漏れ聞こえてくる。
(あんな大声を出したら、来客に筒抜けなのに従業員の教育がなっていないな)
まもなく、アデラーイデと思われる女性が現れて応接室に通された。スチュアートは座らずに、わたしの横に立つ。
アデラーイデに要件を伝えると、わたしの提示した利息は払えないと言い出したが、そんなことはわかっている。持ち出したお金にかかる今日までの利息は莫大だ。10日で5割の利息は、もとより返してもらうことを期待してかける利息ではない。お仕置き、つまりは制裁の意味も兼ねた利息だ。
金を勝手に持ち出すことは犯罪だし、アーネル伯爵家をコケにしたらどうなるかを初めに知ってもらう必要がある。それにアーネル伯爵家はアンネリの実家でもある。妻をコケにしたことと同義と思えば、つい声が荒くなった。
「……しかも、お前はわたしの愛する妻アンネリの実家の財産を持ち逃げした罪人なんだよ。わたしはね、愛する女性を害する人間は許せないのです。どうやらこれは血筋みたいでしてね」
(これぐらいは言っていいと思う)
金銭消費貸借契約書と労働契約書(雇用契約書)にサインをするのを待っている間、応接室にあった雑誌を手に取り『馬車の仕組みと構造』特集のページを見つけ、興味深くそれを読んでいた。
馬車の構造の解説図を見て、これならちょっと工夫すれば事故に発展しそうだと確信する。
「馬車の事故って人為的に起こせるって知っていますか?」
つい場違いな言葉を発して笑ってごまかした。
あのろくでなしのオリヤン伯父上を追い詰めてくれたことは、アデラーイデにむしろ感謝している。ありったけの金を抱えて男と逃げてくれるなんて傑作だと思う。母上を裏切った伯父上にはいい薬になったので、ある意味ご褒美もあげたいくらいだ。そう思うと自然に笑顔が増えて、つい彼らに爽やかな笑顔を振りまいた。
アーネル伯爵家傘下になったアデラーイデの商会は、売上が右肩あがりですさまじい利益を生み出していく。あの商会にはわたしの部下も数人送りこみ、監視させつつわたしの指示も伝える役割を与えたが、いつもアデラーイデ夫妻の勤勉さを褒める報告がされた。
「あの夫婦は屋敷も処分して、狭い家に自主的に引っ越しました。とても真面目に働いています」
思いのほか善良な夫婦だったようでびっくりだ。やはり、わたしの優しい対応が良かったのだろう。微笑みを絶やさず優しく接することは、こちらの誠意が早く伝わるのだと実感したのだった。
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