(完)子供も産めない役立たずと言われて・・・・・・

青空一夏

文字の大きさ
27 / 50

レイラ男爵の処分その3

しおりを挟む
 私は、今日も朝から草むしりをし花の手入れをし、木の枝の切り込み等をしていた。

「おーい、そろそろ昼だぜぇー。今日は、肉が出る日だよ。早く行こう」

 使用人専用の食堂で、皆で昼飯を食うようになった。三日に一回でる肉は、皆が楽しみにしていた。

「うまいなぁーー。一所懸命に働いた後に食べる飯は、最高に旨いよなぁ」

 横に座って、二カッと笑うその男を以前の私はバカにしていた。なんにでも、ありがたがってこんな粗末な食事にも満足げなじじぃを見下していたんだ。

 でも、歳月が経ちもうすぐ半年になる今では、すっかり仲良くなっていた。

「旨いなぁ。本当に旨いよ・・・・・・」

 私は、そのあまり上等でない肉を少しづつ食べていく。空腹は最上のソースと言うが、本当だなと思った。

「俺もあんたも若くはないが、こうやって病気もせずに元気に働けるのは有り難いなぁ。草むしりはよぉ、雑草がなくなった後の綺麗な庭園を見ると、あぁ頑張ったなぁーって達成感があるじゃねーかぁ。花は毎日、俺らに元気を与えてくれるし、木の枝を切っていても、良い景色は拝めるし、爽やかな風は心地良いし。こうして、うまいもんが食えて。あぁ、なんて幸せなんだろう! 生きてるだけで丸儲けだ」

 このじじぃの言葉は聞いていて、本当に気持ちいい。なんで、以前は共感できなかったのだろうか?

 
 
 いつも、人の悪口を言いながら食べていた飯は、こんなに旨くはなかった気がする。男爵でいた時には今より何倍もいい肉を食べては文句を言っていた。

「味つけが濃すぎるぞ! 私を塩分の取り過ぎで殺す気か!」

「なんだ、この肉は脂身ばかりじゃないか!」

 そんな言葉を、終始言いながら、さらに他人の悪口を妻と言い合って食べていた頃。あの頃は、なにをしても楽しくなかった。


 
 今は『生きてるだけで丸儲け』が口癖の男と、気づけばいつも笑っている自分がいた。

「・・・・・・こんな幸せもあるんだな・・・・・・」

 私は、涙が溢れて泣き笑いをしていると、向かい側に座っていた雑用女が笑いながら聞いてきた。

「なんだい。泣くほど肉が美味しいのかい? 良かったら、あたしのもあげるよ。たんとお食べよ」

 にっこり笑った雑用女に私も笑い返した。

「いや、その気持ちだけで充分、ありがたいよ」

 男爵でいた頃には使用人を人とも思っていなかった自分が恥ずかしい。

 

 ある日、私は女主人に居間に呼ばれた。

「さて、お前に質問だ。お前がここに来たのは誰のせいだと思う?」

「ヘイズリーのせいでもあるし、アイザックのせいでもある。しかし、一番はこの自分のせいだと思います。いくらでも、ヘイズリーをたしなめ、アイザックに注意もできたのに全くしなかった。一緒になってグレイスを虐げていた。あのまま、レイラ男爵家にいたら、グレイスは辛さに耐えきれず死んでいたか、ヘイズリーに娼館にでも売られていたはずです。ヘイズリーなら平気でしたでしょう。私は多分止めなかったはずです」

「ふん! そうだろうなぁ。お前は、人殺しと同じだ。現に、王の誕生日に本物のグレイスになんと言ったのか覚えているかい?」

「・・・・・・はい、覚えています。娼館に売って・・・・・・最後は・・・・・・。今の自分なら到底、言えないことを言いました」

「で、お前はどうしたいんだい?」

「処刑してください! 罪の重さがわかった今は、それに見合った処分を受け入れる覚悟はあります!」
しおりを挟む
感想 263

あなたにおすすめの小説

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

三年の想いは小瓶の中に

月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。 ※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。

好きにしろ、とおっしゃられたので好きにしました。

豆狸
恋愛
「この恥晒しめ! 俺はお前との婚約を破棄する! 理由はわかるな?」 「第一王子殿下、私と殿下の婚約は破棄出来ませんわ」 「確かに俺達の婚約は政略的なものだ。しかし俺は国王になる男だ。ほかの男と睦み合っているような女を妃には出来ぬ! そちらの有責なのだから侯爵家にも責任を取ってもらうぞ!」

いいえ、望んでいません

わらびもち
恋愛
「お前を愛することはない!」 結婚初日、お決まりの台詞を吐かれ、別邸へと押し込まれた新妻ジュリエッタ。 だが彼女はそんな扱いに傷つくこともない。 なぜなら彼女は―――

愛する夫が目の前で別の女性と恋に落ちました。

ましゅぺちーの
恋愛
伯爵令嬢のアンジェは公爵家の嫡男であるアランに嫁いだ。 子はなかなかできなかったが、それでも仲の良い夫婦だった。 ――彼女が現れるまでは。 二人が結婚して五年を迎えた記念パーティーでアランは若く美しい令嬢と恋に落ちてしまう。 それからアランは変わり、何かと彼女のことを優先するようになり……

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

【完結】今日も旦那は愛人に尽くしている~なら私もいいわよね?~

コトミ
恋愛
 結婚した夫には愛人がいた。辺境伯の令嬢であったビオラには男兄弟がおらず、子爵家のカールを婿として屋敷に向かい入れた。半年の間は良かったが、それから事態は急速に悪化していく。伯爵であり、領地も統治している夫に平民の愛人がいて、屋敷の隣にその愛人のための別棟まで作って愛人に尽くす。こんなことを我慢できる夫人は私以外に何人いるのかしら。そんな考えを巡らせながら、ビオラは毎日夫の代わりに領地の仕事をこなしていた。毎晩夫のカールは愛人の元へ通っている。その間ビオラは休む暇なく仕事をこなした。ビオラがカールに反論してもカールは「君も愛人を作ればいいじゃないか」の一点張り。我慢の限界になったビオラはずっと大切にしてきた屋敷を飛び出した。  そしてその飛び出した先で出会った人とは? (できる限り毎日投稿を頑張ります。誤字脱字、世界観、ストーリー構成、などなどはゆるゆるです)

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

処理中です...