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レイラ男爵の処分その3
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私は、今日も朝から草むしりをし花の手入れをし、木の枝の切り込み等をしていた。
「おーい、そろそろ昼だぜぇー。今日は、肉が出る日だよ。早く行こう」
使用人専用の食堂で、皆で昼飯を食うようになった。三日に一回でる肉は、皆が楽しみにしていた。
「うまいなぁーー。一所懸命に働いた後に食べる飯は、最高に旨いよなぁ」
横に座って、二カッと笑うその男を以前の私はバカにしていた。なんにでも、ありがたがってこんな粗末な食事にも満足げなじじぃを見下していたんだ。
でも、歳月が経ちもうすぐ半年になる今では、すっかり仲良くなっていた。
「旨いなぁ。本当に旨いよ・・・・・・」
私は、そのあまり上等でない肉を少しづつ食べていく。空腹は最上のソースと言うが、本当だなと思った。
「俺もあんたも若くはないが、こうやって病気もせずに元気に働けるのは有り難いなぁ。草むしりはよぉ、雑草がなくなった後の綺麗な庭園を見ると、あぁ頑張ったなぁーって達成感があるじゃねーかぁ。花は毎日、俺らに元気を与えてくれるし、木の枝を切っていても、良い景色は拝めるし、爽やかな風は心地良いし。こうして、うまいもんが食えて。あぁ、なんて幸せなんだろう! 生きてるだけで丸儲けだ」
このじじぃの言葉は聞いていて、本当に気持ちいい。なんで、以前は共感できなかったのだろうか?
いつも、人の悪口を言いながら食べていた飯は、こんなに旨くはなかった気がする。男爵でいた時には今より何倍もいい肉を食べては文句を言っていた。
「味つけが濃すぎるぞ! 私を塩分の取り過ぎで殺す気か!」
「なんだ、この肉は脂身ばかりじゃないか!」
そんな言葉を、終始言いながら、さらに他人の悪口を妻と言い合って食べていた頃。あの頃は、なにをしても楽しくなかった。
今は『生きてるだけで丸儲け』が口癖の男と、気づけばいつも笑っている自分がいた。
「・・・・・・こんな幸せもあるんだな・・・・・・」
私は、涙が溢れて泣き笑いをしていると、向かい側に座っていた雑用女が笑いながら聞いてきた。
「なんだい。泣くほど肉が美味しいのかい? 良かったら、あたしのもあげるよ。たんとお食べよ」
にっこり笑った雑用女に私も笑い返した。
「いや、その気持ちだけで充分、ありがたいよ」
男爵でいた頃には使用人を人とも思っていなかった自分が恥ずかしい。
ある日、私は女主人に居間に呼ばれた。
「さて、お前に質問だ。お前がここに来たのは誰のせいだと思う?」
「ヘイズリーのせいでもあるし、アイザックのせいでもある。しかし、一番はこの自分のせいだと思います。いくらでも、ヘイズリーを窘め、アイザックに注意もできたのに全くしなかった。一緒になってグレイスを虐げていた。あのまま、レイラ男爵家にいたら、グレイスは辛さに耐えきれず死んでいたか、ヘイズリーに娼館にでも売られていたはずです。ヘイズリーなら平気でしたでしょう。私は多分止めなかったはずです」
「ふん! そうだろうなぁ。お前は、人殺しと同じだ。現に、王の誕生日に本物のグレイスになんと言ったのか覚えているかい?」
「・・・・・・はい、覚えています。娼館に売って・・・・・・最後は・・・・・・。今の自分なら到底、言えないことを言いました」
「で、お前はどうしたいんだい?」
「処刑してください! 罪の重さがわかった今は、それに見合った処分を受け入れる覚悟はあります!」
「おーい、そろそろ昼だぜぇー。今日は、肉が出る日だよ。早く行こう」
使用人専用の食堂で、皆で昼飯を食うようになった。三日に一回でる肉は、皆が楽しみにしていた。
「うまいなぁーー。一所懸命に働いた後に食べる飯は、最高に旨いよなぁ」
横に座って、二カッと笑うその男を以前の私はバカにしていた。なんにでも、ありがたがってこんな粗末な食事にも満足げなじじぃを見下していたんだ。
でも、歳月が経ちもうすぐ半年になる今では、すっかり仲良くなっていた。
「旨いなぁ。本当に旨いよ・・・・・・」
私は、そのあまり上等でない肉を少しづつ食べていく。空腹は最上のソースと言うが、本当だなと思った。
「俺もあんたも若くはないが、こうやって病気もせずに元気に働けるのは有り難いなぁ。草むしりはよぉ、雑草がなくなった後の綺麗な庭園を見ると、あぁ頑張ったなぁーって達成感があるじゃねーかぁ。花は毎日、俺らに元気を与えてくれるし、木の枝を切っていても、良い景色は拝めるし、爽やかな風は心地良いし。こうして、うまいもんが食えて。あぁ、なんて幸せなんだろう! 生きてるだけで丸儲けだ」
このじじぃの言葉は聞いていて、本当に気持ちいい。なんで、以前は共感できなかったのだろうか?
いつも、人の悪口を言いながら食べていた飯は、こんなに旨くはなかった気がする。男爵でいた時には今より何倍もいい肉を食べては文句を言っていた。
「味つけが濃すぎるぞ! 私を塩分の取り過ぎで殺す気か!」
「なんだ、この肉は脂身ばかりじゃないか!」
そんな言葉を、終始言いながら、さらに他人の悪口を妻と言い合って食べていた頃。あの頃は、なにをしても楽しくなかった。
今は『生きてるだけで丸儲け』が口癖の男と、気づけばいつも笑っている自分がいた。
「・・・・・・こんな幸せもあるんだな・・・・・・」
私は、涙が溢れて泣き笑いをしていると、向かい側に座っていた雑用女が笑いながら聞いてきた。
「なんだい。泣くほど肉が美味しいのかい? 良かったら、あたしのもあげるよ。たんとお食べよ」
にっこり笑った雑用女に私も笑い返した。
「いや、その気持ちだけで充分、ありがたいよ」
男爵でいた頃には使用人を人とも思っていなかった自分が恥ずかしい。
ある日、私は女主人に居間に呼ばれた。
「さて、お前に質問だ。お前がここに来たのは誰のせいだと思う?」
「ヘイズリーのせいでもあるし、アイザックのせいでもある。しかし、一番はこの自分のせいだと思います。いくらでも、ヘイズリーを窘め、アイザックに注意もできたのに全くしなかった。一緒になってグレイスを虐げていた。あのまま、レイラ男爵家にいたら、グレイスは辛さに耐えきれず死んでいたか、ヘイズリーに娼館にでも売られていたはずです。ヘイズリーなら平気でしたでしょう。私は多分止めなかったはずです」
「ふん! そうだろうなぁ。お前は、人殺しと同じだ。現に、王の誕生日に本物のグレイスになんと言ったのか覚えているかい?」
「・・・・・・はい、覚えています。娼館に売って・・・・・・最後は・・・・・・。今の自分なら到底、言えないことを言いました」
「で、お前はどうしたいんだい?」
「処刑してください! 罪の重さがわかった今は、それに見合った処分を受け入れる覚悟はあります!」
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