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別れ
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美玲さんに会ってそんな話をした後、私が家に帰宅すると週末でもないのに慶子さんがいて、私を待っていた。
「千紗ちゃん、お帰りなさい。待っていたのよ?これ、着てみて?」
慶子さんが差し出す紙袋には、淡い黄色のかわいいワンピースが入っていた。膝が隠れるくらいの丈だけれど裾の3センチばかりのレースの隙間から足が見えて少しだけセクシーに見える。
「いつもの服だとスカートが短すぎて下着が見えそうだったでしょう?でも、これなら、上品だしそれでいて少し大人っぽい感じがしない?この前は言い過ぎたかも。ごめんなさいね。
私は、本当のお母様ではないけれど、千紗ちゃんを守ってあげられる第2のお母様になりたいの。欲しがっていた水着もあるわよ?小さなビキニじゃないけれど‥」
「あ、ありがとう!とても嬉しいわ!」
慶子さんの言葉は私の心に響いて、ほんわかと温かい気持ちになった。私は慶子さんに抱きついた。ワンピースは気に入ったし、水着はビキニじゃないけれど充分、おしゃれで素敵だった。多分、私のお母様が生きていたらこんな水着を選んでくれたはずだ。露出しすぎない、『きちんとしたお嬢さん』に見える服と水着。
私は慶子さんと仲直りした。そして、父が帰ってくる前に勉強をみてもらった。夕飯の用意も一緒にしたわ。デザートにのせる生クリームを一緒に泡立てたり、野菜を分担して刻んだり。お母様が生きていたら、やっぱりこんな感じだったかもしれない。
そして、私は、美玲さんに週末に来るようにけしかけていたことをすっかり忘れていたのだった。
☆
週末の朝に、私は階下で花瓶の割れる音と怪しげな声をきいた。
急いで階下に行くと、異様な光景がひろがっていた。
お父様の部屋のドアは半開きで、裸の美玲さんとお父様が絡む姿が見えた。それをドアの前で見つめる慶子さんがいた。慶子さんは、私の大好きな薔薇を持って虚ろな瞳をしていた。お父様達は、それに気づくこともなくあの行為に励んでいる‥‥
慶子さんは、薔薇を私に渡すとそのまま玄関へと踵をかえした。
「ごめんなさい、ごめんなさい!行かないで、帰らないで!」
慶子さんは私を一瞬だけ抱きしめると顔を歪ませて私を哀れみのこもった眼で見つめた。
「かわいそうな子。謝らないで。これで良かったのよ‥‥」
慶子さんは、それっきり家には来ない。会うこともない。
「千紗ちゃん、お帰りなさい。待っていたのよ?これ、着てみて?」
慶子さんが差し出す紙袋には、淡い黄色のかわいいワンピースが入っていた。膝が隠れるくらいの丈だけれど裾の3センチばかりのレースの隙間から足が見えて少しだけセクシーに見える。
「いつもの服だとスカートが短すぎて下着が見えそうだったでしょう?でも、これなら、上品だしそれでいて少し大人っぽい感じがしない?この前は言い過ぎたかも。ごめんなさいね。
私は、本当のお母様ではないけれど、千紗ちゃんを守ってあげられる第2のお母様になりたいの。欲しがっていた水着もあるわよ?小さなビキニじゃないけれど‥」
「あ、ありがとう!とても嬉しいわ!」
慶子さんの言葉は私の心に響いて、ほんわかと温かい気持ちになった。私は慶子さんに抱きついた。ワンピースは気に入ったし、水着はビキニじゃないけれど充分、おしゃれで素敵だった。多分、私のお母様が生きていたらこんな水着を選んでくれたはずだ。露出しすぎない、『きちんとしたお嬢さん』に見える服と水着。
私は慶子さんと仲直りした。そして、父が帰ってくる前に勉強をみてもらった。夕飯の用意も一緒にしたわ。デザートにのせる生クリームを一緒に泡立てたり、野菜を分担して刻んだり。お母様が生きていたら、やっぱりこんな感じだったかもしれない。
そして、私は、美玲さんに週末に来るようにけしかけていたことをすっかり忘れていたのだった。
☆
週末の朝に、私は階下で花瓶の割れる音と怪しげな声をきいた。
急いで階下に行くと、異様な光景がひろがっていた。
お父様の部屋のドアは半開きで、裸の美玲さんとお父様が絡む姿が見えた。それをドアの前で見つめる慶子さんがいた。慶子さんは、私の大好きな薔薇を持って虚ろな瞳をしていた。お父様達は、それに気づくこともなくあの行為に励んでいる‥‥
慶子さんは、薔薇を私に渡すとそのまま玄関へと踵をかえした。
「ごめんなさい、ごめんなさい!行かないで、帰らないで!」
慶子さんは私を一瞬だけ抱きしめると顔を歪ませて私を哀れみのこもった眼で見つめた。
「かわいそうな子。謝らないで。これで良かったのよ‥‥」
慶子さんは、それっきり家には来ない。会うこともない。
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