[完結]出来損ないと言われた令嬢、実は規格外でした!

青空一夏

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24 破滅 sideドロシア

 side ドロシア

 私がスカーレットを「ゼロスカ」と呼び、復学した彼女に謝らず、さらにモリー伯爵家の寄子たちに罪をなすりつけたという出来事。これは学園内の生徒たちの間だけの、小さな話だったはずなのに、噂はあっという間にほとんどの貴族に知れ渡った。

 学園の生徒たちが屋敷に戻れば、両親に話す。その両親はさらに他の貴族に話す。その貴族もまた他の貴族に――そんな具合に、噂は次々と伝わり、あっという間にモリー伯爵家の取引先や、私の婚約者であるホイットニー侯爵家のエドモンド様の耳にも届いた。

「数百年ぶりの聖女様に対して、何という無礼。そんな家とは付き合いたくない」
 そのように言って、モリー伯爵家との取引を中止する貴族や商人たち。モリー伯爵家の事業は、たちまち厳しい状況へと追い込まれていった。

 本来、寄子は守るべき存在である。それを平気で犠牲にするようなドロシアを妻に迎えたい者などいない。
 全ての貴族から顰蹙ひんしゅくを買っているドロシアと婚姻関係を結べば、ホイットニー侯爵家の信用にも傷がつき、最悪の場合は没落すら免れない。
 聖女様から避けられているドロシアを妻に迎えれば、当然、聖女様からの信頼も失われるだろう。きっと天罰が下るに違いない。

 そのような内容の書簡が、ホイットニー侯爵家からモリー伯爵家に届けられた。それは、いわゆる婚約破棄の通知である。事情が事情だけに、あっさりと婚約破棄が成立してしまったのだった。


 エドモンド様は、私の憧れだった。平凡な私にはもったいないほどの整った容姿で、笑うとえくぼが浮かび、途端に幼い印象になるその姿も、私は大好きだった。しかも格上の侯爵家の長男であり、私は将来ホイットニー侯爵夫人になることを約束されていたのに。

 まさか、こんな形で婚約が破棄されるなんて。信じられず、私は先触れもせずホイットニー侯爵家を訪れた。けれど敷地の中にさえ入れてもらえず、門番を通じて伝えられたエドモンド様の言葉は、冷たくも現実的なものだった。

「慰謝料を取られないだけでも、まだましだと思え。ドロシアと婚約していたことで、ホイットニー侯爵家にも迷惑が及んでしまっているのだ」


 私は泣きながら、ホイットニー侯爵家からモリー伯爵家へ帰る。かつては笑い声が絶えず、家族同士が仲睦まじく暮らしていた屋敷も、今では重苦しい沈黙に覆われている。屋敷の維持は困難を極め、使用人たちは少しずつ去っていく。庭園も屋敷内も、次第に荒れ果てていった。

 夕食の時間も、かつての楽しげな会話はもうなく、聞こえてくるのはため息ばかり。

「これも、すべて……ドロシアのせいだ」
 お父様が深く息を吐く。怒鳴るのではなく、ただ呟くように力のない声。

 お兄様は俯いたまま、低い声で責める。
「お前の軽率な行動で、モリー伯爵家の信用がここまで失われた。……もう、私たちはお終いだ」

 私は学園へ通うことすら、できなくなった。 やがて使用人は全ていなくなり、埃が舞う廊下を自ら掃き、庭園の雑草を抜く毎日。料理も洗濯も、お便所の掃除まで――何もかも自分達の手で行わなければならなくなった。

 この屋敷だって、いつ手放さなければいけなくなるかわからない。私はふと鏡を見る。かつての華やかな伯爵令嬢としての姿は影も形もなく、屋敷の荒れた様子と同じく、私自身もみすぼらしく、まるで最下層の民達のようだった。

 なんで? そんなに……私は、悪いことしたの?



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