1 / 5
1 置き去りにされた王子様
しおりを挟む
イナプル王国には二人の、全く似ていない二卵性双生児の王子がいる。18歳になると、私達、直系の王子は神からギフトが与えられる。それが、今日この日だった。
私と兄ローガンは父王に呼ばれた。謁見の間には高位貴族達がひしめきあい、宰相を始め、要職に就いている者は全てそこにいた。
私と兄は神官の前に立ち、手をかざされて同時に18歳の祝福を受け、ギフトを授けられた。
「さぁ、王子達よ?どんな才能をもらったのだ?」
父上は期待の声を私達に向けた。私の頭の中で、周りの声が突然、聞こえ始めた。
(やっぱり、弟のエイデン様の方が王位を継ぐよなぁ。なんとか、うちの娘を妻にさせたいものだ)
宰相の声が私には聞こえた。澄ました顔の宰相の、これは、心の声なのか・・・・・・?
だとしたら、・・・・・・私のギフトは人の心が読めることなのか?
兄であるローガンの声も流れ込んでくる。
(弟はプラチナブロンドにターコイズブルーの瞳の、女神のように美しいと謳われた亡き母上にそっくりだ。学問にも秀でており、剣の腕も達人と言えるほどの腕前だ。まさに、文武両道とはこいつの為にある言葉だ。
イナプル王国は、必ず嫡男が国王になるとは決まっていない。このままでいけば、こいつが王になる。なんとか、失脚させたいな)
ローガンとは、仲が良くそんなことを考えているとは、今の今まで想像すらしなかった。
「まずは、ローガンだ?なにか変化はあるか?」
その父上の言葉にローガンは得意気に手のひらかざすと、小さな竜巻が起こった。
「ほぉ、風邪が操れるようになったのか!まぁ、いいだろう。それで、エイデンよ?変化はなにかあるか?」
(あぁ、エイデンはなにをもらったのだろう?わくわくするな。こいつは、亡くなった妃にそっくりで、しかも才能に溢れている。自慢の息子だ)
そんな父上の心の声が聞こえた。
「私は、『人の心が読める』ようになったようです」
その場にいた、誰もが口をつぐむ。
(やだ、心の声が聞こえるだなんて、不気味だし怖いわ)
(心の中までみられるなんて、まっぴらだな)
(あぁ、こんなのが王に就いたら賄賂も、もらえない)
数人の文官の声達も聞こえてきた。
「それは、最高の贈り物だ。相手がなにを考えているのかわかるのだったら、臣下の不正も日頃の忠誠心も全てわかるだろう?」
父上だけが、満面の笑みで喜んでいたが、貴族や官僚達からは、嬉しい心の気持ちを感じ取ることはできなかった。
「エイデンを儂の跡継ぎとする!」
その宣言とともに、宰相と兄が剣で父上を刺し殺した。
父上が、血にまみれて倒れる様を目の当たりにした私は、
「衛兵! 謀反だ!この者達を捕らえろ」
と、叫んだ。
だが、誰も私の声に応える者はいない。
「エイデン様。貴方様は、大層賢き王子様です。そのうえ、人の心が読めるなど危険すぎる!貴方様に国王になってもらっては、私達貴族は困るのですよ? 国王はローガン様になっていただきます」
宰相は薄っらと笑みを浮かべた。
私はレオジン王国の魔女とよばれる、残虐だと噂高い女王が君臨する国に置き去りにされた。
「ここの国は一妻多夫だそうだ。その美貌なら、女が拾ってくれるよ。お前は母上に似て素晴らしく綺麗だからな。女のひもにでもなればいいさ。あっははは」
ローガンは心から愉快な笑い声をあげた。私は何日も彷徨い、ついに力尽きて倒れた。
そこに、レオジン王国の王家の紋章の入った豪奢な馬車がやって来て、私を拾い上げてくれたことに少しも気がつかなかったのだった。
(綺麗な男性だわ。仲よくなれないかしら)
この声は誰の声・・・・・・?
私と兄ローガンは父王に呼ばれた。謁見の間には高位貴族達がひしめきあい、宰相を始め、要職に就いている者は全てそこにいた。
私と兄は神官の前に立ち、手をかざされて同時に18歳の祝福を受け、ギフトを授けられた。
「さぁ、王子達よ?どんな才能をもらったのだ?」
父上は期待の声を私達に向けた。私の頭の中で、周りの声が突然、聞こえ始めた。
(やっぱり、弟のエイデン様の方が王位を継ぐよなぁ。なんとか、うちの娘を妻にさせたいものだ)
宰相の声が私には聞こえた。澄ました顔の宰相の、これは、心の声なのか・・・・・・?
だとしたら、・・・・・・私のギフトは人の心が読めることなのか?
兄であるローガンの声も流れ込んでくる。
(弟はプラチナブロンドにターコイズブルーの瞳の、女神のように美しいと謳われた亡き母上にそっくりだ。学問にも秀でており、剣の腕も達人と言えるほどの腕前だ。まさに、文武両道とはこいつの為にある言葉だ。
イナプル王国は、必ず嫡男が国王になるとは決まっていない。このままでいけば、こいつが王になる。なんとか、失脚させたいな)
ローガンとは、仲が良くそんなことを考えているとは、今の今まで想像すらしなかった。
「まずは、ローガンだ?なにか変化はあるか?」
その父上の言葉にローガンは得意気に手のひらかざすと、小さな竜巻が起こった。
「ほぉ、風邪が操れるようになったのか!まぁ、いいだろう。それで、エイデンよ?変化はなにかあるか?」
(あぁ、エイデンはなにをもらったのだろう?わくわくするな。こいつは、亡くなった妃にそっくりで、しかも才能に溢れている。自慢の息子だ)
そんな父上の心の声が聞こえた。
「私は、『人の心が読める』ようになったようです」
その場にいた、誰もが口をつぐむ。
(やだ、心の声が聞こえるだなんて、不気味だし怖いわ)
(心の中までみられるなんて、まっぴらだな)
(あぁ、こんなのが王に就いたら賄賂も、もらえない)
数人の文官の声達も聞こえてきた。
「それは、最高の贈り物だ。相手がなにを考えているのかわかるのだったら、臣下の不正も日頃の忠誠心も全てわかるだろう?」
父上だけが、満面の笑みで喜んでいたが、貴族や官僚達からは、嬉しい心の気持ちを感じ取ることはできなかった。
「エイデンを儂の跡継ぎとする!」
その宣言とともに、宰相と兄が剣で父上を刺し殺した。
父上が、血にまみれて倒れる様を目の当たりにした私は、
「衛兵! 謀反だ!この者達を捕らえろ」
と、叫んだ。
だが、誰も私の声に応える者はいない。
「エイデン様。貴方様は、大層賢き王子様です。そのうえ、人の心が読めるなど危険すぎる!貴方様に国王になってもらっては、私達貴族は困るのですよ? 国王はローガン様になっていただきます」
宰相は薄っらと笑みを浮かべた。
私はレオジン王国の魔女とよばれる、残虐だと噂高い女王が君臨する国に置き去りにされた。
「ここの国は一妻多夫だそうだ。その美貌なら、女が拾ってくれるよ。お前は母上に似て素晴らしく綺麗だからな。女のひもにでもなればいいさ。あっははは」
ローガンは心から愉快な笑い声をあげた。私は何日も彷徨い、ついに力尽きて倒れた。
そこに、レオジン王国の王家の紋章の入った豪奢な馬車がやって来て、私を拾い上げてくれたことに少しも気がつかなかったのだった。
(綺麗な男性だわ。仲よくなれないかしら)
この声は誰の声・・・・・・?
10
あなたにおすすめの小説
妹が「この世界って乙女ゲーじゃん!」とかわけのわからないことを言い出した
無色
恋愛
「この世界って乙女ゲーじゃん!」と言い出した、転生者を名乗る妹フェノンは、ゲーム知識を駆使してハーレムを作ろうとするが……彼女が狙った王子アクシオは、姉メイティアの婚約者だった。
静かな姉の中に眠る“狂気”に気付いたとき、フェノンは……
うっかり結婚を承諾したら……。
翠月るるな
恋愛
「結婚しようよ」
なんて軽い言葉で誘われて、承諾することに。
相手は女避けにちょうどいいみたいだし、私は煩わしいことからの解放される。
白い結婚になるなら、思う存分魔導の勉強ができると喜んだものの……。
実際は思った感じではなくて──?
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
好きすぎます!※殿下ではなく、殿下の騎獣が
和島逆
恋愛
「ずっと……お慕い申し上げておりました」
エヴェリーナは伯爵令嬢でありながら、飛空騎士団の騎獣世話係を目指す。たとえ思いが叶わずとも、大好きな相手の側にいるために。
けれど騎士団長であり王弟でもあるジェラルドは、自他ともに認める女嫌い。エヴェリーナの告白を冷たく切り捨てる。
「エヴェリーナ嬢。あいにくだが」
「心よりお慕いしております。大好きなのです。殿下の騎獣──……ライオネル様のことが!」
──エヴェリーナのお目当ては、ジェラルドではなく獅子の騎獣ライオネルだったのだ。
冷徹文官様の独占欲が強すぎて、私は今日も慣れずに翻弄される
川原にゃこ
恋愛
「いいか、シュエット。慣れとは恐ろしいものだ」
机に向かったまま、エドガー様が苦虫を噛み潰したような渋い顔をして私に言った。
【完結】オネェ伯爵令息に狙われています
ふじの
恋愛
うまくいかない。
なんでこんなにうまくいかないのだろうか。
セレスティアは考えた。
ルノアール子爵家の第一子である私、御歳21歳。
自分で言うのもなんだけど、金色の柔らかな髪に黒色のつぶらな目。結構可愛いはずなのに、残念ながら行き遅れ。
せっかく婚約にこぎつけそうな恋人を妹に奪われ、幼馴染でオネェ口調のフランにやけ酒と愚痴に付き合わせていたら、目が覚めたのは、なぜか彼の部屋。
しかも彼は昔から私を想い続けていたらしく、あれよあれよという間に…!?
うまくいかないはずの人生が、彼と一緒ならもしかして変わるのかもしれない―
【全四話完結】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる