(完結)美貌の王子は、ハーレムな世界で魔女な女王様に溺愛される

青空一夏

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1 置き去りにされた王子様

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 イナプル王国には二人の、全く似ていない二卵性双生児の王子がいる。18歳になると、私達、直系の王子は神からギフトが与えられる。それが、今日この日だった。

 私と兄ローガンは父王に呼ばれた。謁見の間には高位貴族達がひしめきあい、宰相を始め、要職に就いている者は全てそこにいた。

 私と兄は神官の前に立ち、手をかざされて同時に18歳の祝福を受け、ギフトを授けられた。

「さぁ、王子達よ?どんな才能をもらったのだ?」

 父上は期待の声を私達に向けた。私の頭の中で、周りの声が突然、聞こえ始めた。

(やっぱり、弟のエイデン様の方が王位を継ぐよなぁ。なんとか、うちの娘を妻にさせたいものだ)

 宰相の声が私には聞こえた。澄ました顔の宰相の、これは、心の声なのか・・・・・・?

 だとしたら、・・・・・・私のギフトは人の心が読めることなのか?

 兄であるローガンの声も流れ込んでくる。


(弟はプラチナブロンドにターコイズブルーの瞳の、女神のように美しいと謳われた亡き母上にそっくりだ。学問にも秀でており、剣の腕も達人と言えるほどの腕前だ。まさに、文武両道とはこいつの為にある言葉だ。
イナプル王国は、必ず嫡男が国王になるとは決まっていない。このままでいけば、こいつが王になる。なんとか、失脚させたいな)


 ローガンとは、仲が良くそんなことを考えているとは、今の今まで想像すらしなかった。

「まずは、ローガンだ?なにか変化はあるか?」

その父上の言葉にローガンは得意気に手のひらかざすと、小さな竜巻が起こった。

「ほぉ、風邪が操れるようになったのか!まぁ、いいだろう。それで、エイデンよ?変化はなにかあるか?」

(あぁ、エイデンはなにをもらったのだろう?わくわくするな。こいつは、亡くなった妃にそっくりで、しかも才能に溢れている。自慢の息子だ)

そんな父上の心の声が聞こえた。

「私は、『人の心が読める』ようになったようです」

 その場にいた、誰もが口をつぐむ。

(やだ、心の声が聞こえるだなんて、不気味だし怖いわ)

(心の中までみられるなんて、まっぴらだな)

(あぁ、こんなのが王に就いたら賄賂も、もらえない)
 
 数人の文官の声達も聞こえてきた。

「それは、最高の贈り物だ。相手がなにを考えているのかわかるのだったら、臣下の不正も日頃の忠誠心も全てわかるだろう?」

父上だけが、満面の笑みで喜んでいたが、貴族や官僚達からは、嬉しい心の気持ちを感じ取ることはできなかった。

「エイデンを儂の跡継ぎとする!」
その宣言とともに、宰相と兄が剣で父上を刺し殺した。

父上が、血にまみれて倒れる様を目の当たりにした私は、
「衛兵! 謀反だ!この者達を捕らえろ」
と、叫んだ。

だが、誰も私の声に応える者はいない。

「エイデン様。貴方様は、大層賢き王子様です。そのうえ、人の心が読めるなど危険すぎる!貴方様に国王になってもらっては、私達貴族は困るのですよ? 国王はローガン様になっていただきます」
宰相は薄っらと笑みを浮かべた。
 
 私はレオジン王国の魔女とよばれる、残虐だと噂高い女王が君臨する国に置き去りにされた。

「ここの国は一妻多夫だそうだ。その美貌なら、女が拾ってくれるよ。お前は母上に似て素晴らしく綺麗だからな。女のひもにでもなればいいさ。あっははは」


ローガンは心から愉快な笑い声をあげた。私は何日も彷徨い、ついに力尽きて倒れた。
そこに、レオジン王国の王家の紋章の入った豪奢な馬車がやって来て、私を拾い上げてくれたことに少しも気がつかなかったのだった。

(綺麗な男性だわ。仲よくなれないかしら)
この声は誰の声・・・・・・?

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