(完)僕は醜すぎて愛せないでしょう? と俯く夫。まさか、貴男はむしろイケメン最高じゃないの!

青空一夏

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5 おかしなお姉様(フローレンス視点)

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フローレンス視点

私のお姉様はおかしな人だ。いくら嫌がらせをしても意地悪をしても少しも気にしない。そして私をウサギ扱いする!

いつ頃からこんなふうになったのかな? 気がつけばいつも会話はこんな調子。
「そのリボンちょうだい!」
「はい、どうぞ!」

「そのドレス貸して!」
「いいわよ。ほらこの宝石も持っていきなさいねぇ。あらぁ、可愛いーー! ネザーランドドワーフね!」
「お姉様は変です! 普通は嫌がるはずでしょう?」
「あら、別に平気よ。だってドレスなんて動きにくいし窮屈ですもの。できれば一秒だって着ていたくないわ」

そのように言うばかりで少しも怒らないの!
だから、私は余計イライラするんだ!

ウサギじゃないもん!
人間だもん!
お姉様のばかぁ~~!

「エリーゼなんて気にすることないのよ。フローレンスが一番かわいいんだから」
お母様はなにかと言えばお姉様を目の敵にする。お父様も同じで、それは私のせいでもある。私が両親の愛情を一人占めしたくてついた嘘のせいだと思う。

「お姉様が髪を引っ張ったわ」
「お姉様が突き飛ばしたの!」
「お姉様が怒って怒鳴りつけたわ」

どれも本当のことで私は両親に告げ口をしてお姉様だけが叱られた。でもお姉様が私の髪を引っ張ったのは私のいたずらで髪についたお母様の整髪料を拭い取るためだったし、突き飛ばされたのは私がよそ見をしながら歩いていて馬車に引かれそうになったからだ。
怒鳴られたのもその時で、「よそ見をしてぼんやり歩いていてはいけません!」と私の身を心配してのことだった。

両親は理由も聞かずにお姉様を怒り、それでもお姉様はニコニコして弁解はしなかった。

ーー良い子ちゃんの偽善者のお姉様なんて嫌いだ。本当は私を怒っていて大嫌いだって思っているくせに・・・・・・

ある時お姉様の婚約者が決まり、それが噂になっている怪物とよばれている男性だとわかっていい気味だと思った。いつも機嫌のいいふりをしているお姉様も絶対に泣いて拒むにちがいないもん。

そしたら、なんと! うきうきした口調で喜びの言葉を口にしたのだった! なんでいつも喜んでいられるの? 演技ばっかり! うんざりだ! 私がお姉様を泣かせてみせる! おかしな決意というか目標を私はいつのまにか作ってしまっていた。

だから、いろいろ試した。お姉様の忍耐力を! でも、ダメだ。何をやってもネザーランドドワーフって言われちゃうんだもん。

だから、フェルゼン様を奪った。でも泣かない・・・・・・。フェルゼン様が珍しい肌だったから気味が悪くて返品したらとても喜ばれた。でもフェルゼン様に会えばきっと泣いて帰ってくるはず。私はお姉様がしょんぼりとした顔で戻ってくると信じていた。

なのに、お姉様は鼻歌を歌いながら星のように目をキラキラさせて屋敷に戻ってきた。
「フェルゼン様はとても素敵だったわよ。あぁ、私は国一番の幸せ者だわぁ」
呆れることにそんな負け惜しみまで言い出したのよ。

そうよ、これは強がりだわ。でも毎日のように嬉しそうにリッチ候爵家を訪問しその度に新しいドレスや宝石、珍しい食べ物をプレゼントされて帰ってくるお姉様の顔は艶々と輝いていた。

そして・・・・・・そのひと月後、ある夜会でお姉様をエスコートするフェルゼン様はあの皮膚を隠すことなく堂々と出席していた。お姉様の衣装とフェルゼン様の衣装は淡いクリーム色に白い水玉が飛んだ生地で仕立てあげられていた。

皮膚に自然と溶けこんだような調和をもつ衣装だった。だからかしら? まったくフェルゼン様が気持ち悪くなんて見えなくて・・・・・・それはかえってとても斬新な新しい流行のようにも見えて、社交界の令嬢達はドキドキと胸を高鳴らせてフェルゼン様に熱い視線を送ったのよ。

よく見れば顔立ちは誰よりも繊細で美しくて見惚れてしまうことに、皆は初めて気がついたかのようだった。しかもお姉様はしっかりと皆にアピールしたの。
「フェルゼン様の皮膚はうつる病気というわけではありませんわ。今の私達は均一の皮膚の色が当たり前ですけれど、もし遺伝子レベルで異変が起きて数十年後や数百年後にはそれが逆転する世界だって訪れるかもしれないでしょう? 私達の子孫の顔や身体に豹のような斑点のある人ばかりが増えたら、今の私達はその未来の世界では異端者だわ。皆がみんな、同じである必要なんてないと思います! 私はフェルゼン様は綺麗だし美しく貴重な存在とさえ思っておりますし、これは素敵な個性ですわ」

そうお姉様が言い切った時に、ものすごく大きな拍手で国王陛下が手を叩いたわ。
「まったくいい話を聞けたぞ! 実はな、儂もそのような皮膚なのだ。ずっと化粧で隠してきたのだ。今こそカミングアウトする時ぞ!」

「実は私も・・・・・・」
恐る恐る手を上げたのはスタンリー公爵夫人とキャメロン辺境伯。国王陛下と高位貴族のカミングアウトに貴族達は拍車喝采! それからは、シミやソバカス自慢まではじまって夜会は大盛り上がりだった。

こうなるともう誰も皮膚の色なんて気にしない。それからひと月もすると、肌が均一の人でさえ顔にアートのように色を塗ることが流行し出すのだった。

「・・・・・・だったら、私、フェルゼン様を返してもらいたいわ」
あと数日で結婚式を控えているお姉様はリッチ候爵家で生活するようになっている。

私はお姉様を訪ねるためにリッチ候爵家に向い、フェルゼン様やお姉様、リッチ候爵家の方々に向かって言ったの。
「私、フェルゼン様の婚約者になってあげてもいいです! お姉様、フェルゼン様をまた返してくれるでしょう?」
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