(完結)ギャラット王太子様、私を捨てて下さってありがとうございます!

青空一夏

文字の大きさ
4 / 7

4 さよならステビア王国。ギャラット殿下、捨ててくれてありがとう!

しおりを挟む
「ほぉ? ステビアの王太子に捨てられたのか? それは面白いな。ますます興味がわいた。私はあなたをけっして捨てないと約束しよう。さぁ、どうぞ私の馬に一緒に・・・・・・おっと、あなたは軽すぎるなぁ。もっと食べなさい」
どこからか現れた駿馬に私を抱きかかえながら飛び乗ると、まるで保護者気取りでそうおっしゃいます。

「きゃっ! ちょ、ちょっと! わたし、私は流行病なんです。ロラン王太子殿下の国では流行っていると聞きました不治の病ですわ。だから触らないで!」

「あぁ、あれか。あれはね、もう特効薬が開発されている。ちなみに私は予防接種済みだから感染しない。我が国の者はほとんど対処済みだし、もうあれは脅威でもなんでもないぞ。ステビア王国の情報とはなんと遅れていることよ・・・・・・呆れるなぁ」
私を抱きかかえてクスクス笑うロラン・マスカレード殿下は綺麗なオレンジ色の瞳に明るい金髪の陽気な方なのでした。

私は思わず頬を赤らめて顔を俯かせますと、
「うん、君はとても綺麗だね。大丈夫。私の国で治療をうけて妹のデイジーのお菓子を毎日食べれば元気になるよ」と、おっしゃいます。

「妹? お菓子?」

「そう、私には妹がいてね。お菓子作りが最近の趣味だ。毎日毎日、アップルパイやらクッキーやら焼きまくって私達はお菓子責めさ。ちょうど話相手になる専属侍女がほしいと言っていた。デイジーの専属侍女になれば良い。なにも心配はない。あなたはきっと高位貴族の娘だろう?」

「はい。ハワード公爵家の長女です。王太子妃候補でした。でも病にかかったのでこの度、あっさり捨てられました」

「ふふふ。そうか・・・・・・捨ててくれてありがたい。私が喜んでもらい受けよう。さぁ、故郷にお別れを言うといい」

「はい。ステビア王国よ、ギャラット王太子殿下、私を捨ててくれてありがとう!」

「うん、良い子だ。いい挨拶ができたね。では行こうか? あなたは私のものだ」

(私は助かったみたい・・・・・・デイジー様は見たこともないけれどきっと悪い子じゃないはず。だって美味しいお菓子を作るのが趣味ならば良い子に違いない)

私は甘いお菓子が大好きだった。それにロラン殿下がおっしゃる”私のものだ”はマスカレードの民として受け入れてくれたという意味だと思い、ほっとしたのだった。仕事ももらえるようだし、とりあえず生きて行けそうだ。

私はホッとしてついロラン王太子殿下の腕に抱かれてウトウトとし始め、また頭上でクスクスと笑われた。

「まるで猫だな。さっきまで助けるな! と威嚇したと思えばすり寄って甘えてくる。まぁ、いい。こういうのは・・・・・・悪くない」

「はいはい。漸く王太子殿下にも春が来たようですね。まぁ、いいことですよ。この方は隣国出身とはいえ公爵家の娘。身分的には問題ないでしょう」

ロラン王太子殿下の腕で眠りに落ていく私の耳に、彼の側近の声が嬉しそうにはしゃいで聞こえてきたのであった。






一方、ステビア王国では大変なことが起こり始めていた。それは流行病が蔓延しはじめて・・・・・・




✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼


次回、マリアンの去った後のステビア王国では・・・・・・
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

婚約破棄してくださって結構です

二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。 ※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています

ここはあなたの家ではありません

風見ゆうみ
恋愛
「明日からミノスラード伯爵邸に住んでくれ」 婚約者にそう言われ、ミノスラード伯爵邸に行ってみたはいいものの、婚約者のケサス様は弟のランドリュー様に家督を譲渡し、子爵家の令嬢と駆け落ちしていた。 わたくしを家に呼んだのは、捨てられた令嬢として惨めな思いをさせるためだった。 実家から追い出されていたわたくしは、ランドリュー様の婚約者としてミノスラード伯爵邸で暮らし始める。 そんなある日、駆け落ちした令嬢と破局したケサス様から家に戻りたいと連絡があり―― そんな人を家に入れてあげる必要はないわよね? ※誤字脱字など見直しているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。

笑う令嬢は毒の杯を傾ける

無色
恋愛
 その笑顔は、甘い毒の味がした。  父親に虐げられ、義妹によって婚約者を奪われた令嬢は復讐のために毒を喰む。

不実なあなたに感謝を

黒木メイ
恋愛
王太子妃であるベアトリーチェと踊るのは最初のダンスのみ。落ち人のアンナとは望まれるまま何度も踊るのに。王太子であるマルコが誰に好意を寄せているかははたから見れば一目瞭然だ。けれど、マルコが心から愛しているのはベアトリーチェだけだった。そのことに気づいていながらも受け入れられないベアトリーチェ。そんな時、マルコとアンナがとうとう一線を越えたことを知る。――――不実なあなたを恨んだ回数は数知れず。けれど、今では感謝すらしている。愚かなあなたのおかげで『幸せ』を取り戻すことができたのだから。 ※異世界転移をしている登場人物がいますが主人公ではないためタグを外しています。 ※曖昧設定。 ※一旦完結。 ※性描写は匂わせ程度。 ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載予定。

もうあなた達を愛する心はありません

ぱんだ
恋愛
セラフィーナ・リヒテンベルクは、公爵家の長女として王立学園の寮で生活している。ある午後、届いた手紙が彼女の世界を揺るがす。 差出人は兄ジョージで、内容は母イリスが兄の妻エレーヌをいびっているというものだった。最初は信じられなかったが、手紙の中で兄は母の嫉妬に苦しむエレーヌを心配し、セラフィーナに助けを求めていた。 理知的で優しい公爵夫人の母が信じられなかったが、兄の必死な頼みに胸が痛む。 セラフィーナは、一年ぶりに実家に帰ると、母が物置に閉じ込められていた。幸せだった家族の日常が壊れていく。魔法やファンタジー異世界系は、途中からあるかもしれません。

釣り合わないと言われても、婚約者と別れる予定はありません

しろねこ。
恋愛
幼馴染と婚約を結んでいるラズリーは、学園に入学してから他の令嬢達によく絡まれていた。 曰く、婚約者と釣り合っていない、身分不相応だと。 ラズリーの婚約者であるファルク=トワレ伯爵令息は、第二王子の側近で、将来護衛騎士予定の有望株だ。背も高く、見目も良いと言う事で注目を浴びている。 対してラズリー=コランダム子爵令嬢は薬草学を専攻していて、外に出る事も少なく地味な見た目で華々しさもない。 そんな二人を周囲は好奇の目で見ており、時にはラズリーから婚約者を奪おうとするものも出てくる。 おっとり令嬢ラズリーはそんな周囲の圧力に屈することはない。 「釣り合わない? そうですか。でも彼は私が良いって言ってますし」 時に優しく、時に豪胆なラズリー、平穏な日々はいつ来るやら。 ハッピーエンド、両思い、ご都合主義なストーリーです。 ゆっくり更新予定です(*´ω`*) 小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿中。

結婚から数ヶ月が経った頃、夫が裏でこそこそ女性と会っていることを知りました。その話はどうやら事実のようなので、離婚します。

四季
恋愛
結婚から数ヶ月が経った頃、夫が裏でこそこそ女性と会っていることを知りました。その話はどうやら事実のようなので、離婚します。

[完結中編]蔑ろにされた王妃様〜25歳の王妃は王と決別し、幸せになる〜

コマメコノカ@女性向け・児童文学・絵本
恋愛
 王妃として国のトップに君臨している元侯爵令嬢であるユーミア王妃(25)は夫で王であるバルコニー王(25)が、愛人のミセス(21)に入り浸り、王としての仕事を放置し遊んでいることに辟易していた。 そして、ある日ユーミアは、彼と決別することを決意する。

処理中です...