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前編
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「オーナー、本当にご結婚なさってこちらにお戻りにはならないのですね?」
「多分ね。柄にも無く文官補佐の男に惚れたのよ。だから、これからは普通の専業主婦になろうかなって・・・・・・あとは任せたわよ」
「はい、お任せください。ですが、飽きたらいつでも戻って来てくださいね」
私はフランソワーズ。ここは貴族もいる世界だが私は平民だ。夫と入籍前はお店を経営していたが、この結婚を機に部下に任せることにした。店自体は手放してはいないが、今後その店で働くことはないだろう。その時は確かにそのつもりだった。
私の夫はランスという。やはり平民だが、王宮で文官補佐の仕事をしている。文官は貴族しかなれないイメージがあるが、平民でもそこそこ優秀ならばなれるチャンスもある。
ランスは仕事ができるタイプでとても優しく、犬好きなことも選んだポイントだった。私の飼っているミニチュアダックスのチョコ(雄)が彼の飼っているミニチュアダックスのマリー(雌)とドッグランで恋に落ちたことも大きかった。私は愛犬家で有名なのだ。そして私とランス、チョコとマリーのカップルが生まれたというわけ。
化粧は控えめにして目立たない色の簡易なワンピースを着る。このいかにも一般主婦というような服装がとても新鮮だった。夫の為に家事を自らするのも楽しい。今までは仕事で忙しく、家事はメイド任せだったから。
楽しい新婚3ヶ月はあっという間に過ぎていき、そろそろ4ヶ月になろうという頃のことだ。彼は最近文官補佐から文官に昇格し、帰りがどんどん遅くなっていった。
「仕事がとても忙しくて帰りが遅くなってすまない。だが、わたしの仕事は飲食店勤務だった君とは違い、営業時間が決まっているわけではない。もっと、なんというかなぁ、そう、高度な仕事なんだよ。君には想像もつかないことがいろいろ起きるんだ」
夫には飲食店勤務をしていたと話していたのだが、最近ではたまに見下すような言い方をしてくる。これは結婚前にはなかったことだ。
(ランスはもっと優しい人だったのに・・・・・・)
それでも私は彼が疲れの為に心に余裕がないからで、またすぐに優しい夫に戻ると信じていた。
ある日、商店街の八百屋や魚屋で食材を買って帰る道すがらのことだ。そろそろ夫が帰って来るはずの夕暮れ時に、見慣れたシルエットに並んで立つ見知らぬ若い女性がいる。私は慌てて建物の陰に隠れ聞き耳を立てた。
「私、今回の仕事では自信がなくて悩んでいるんです。それに同僚のコゼットさんが意地悪ばかりしてきます」
「それは大変だね」
「それに、実は将来のことも不安なんです。彼のことでも悩んでいて・・・・・・実は婚約者がいて、このままその人と結婚してしまっても良いのかなっ、て考えこんでいると夜も眠れなくて。どうやら、彼には私の他に女性がいそうなのです・・・・・・」
(え? 自分の婚約者の愚痴を人の夫にするわけ? そんなのは両親にするべき話だわ。早く、このくだらない話を打ち切ってよ、ランス!)
「あぁ、それは可哀想に。結婚前から女がいるかもしれない、なんて悩ませる男性はやめた方がいいかもね。碌な男ではないよ」
(結婚前ならランスよりまだましよ。あなたは結婚してからこんな女の相談に乗っているのですもの!)
仕事上の相談ならまだわかる。なぜここにプライベートな問題まで持ち込んでくるの? おかしいとは思わないの?
「じゃぁ、また食事でも一緒にして話をゆっくり聞こうか? 昨日と同じお店でいい?」
「はい! 昨日のステーキ美味しかったです。でも、今日はお魚の方がいいな」
(は? 相談女に豪華なディナーをご馳走するつもりなのね。これは相談ではなく、ただのデートよ。浮気と言ってもいいはずよ)
私の心は狭いかもしれない。けれど、このような相談女の手口なんてお見通しよ。だって、私の前職は・・・・・・
「多分ね。柄にも無く文官補佐の男に惚れたのよ。だから、これからは普通の専業主婦になろうかなって・・・・・・あとは任せたわよ」
「はい、お任せください。ですが、飽きたらいつでも戻って来てくださいね」
私はフランソワーズ。ここは貴族もいる世界だが私は平民だ。夫と入籍前はお店を経営していたが、この結婚を機に部下に任せることにした。店自体は手放してはいないが、今後その店で働くことはないだろう。その時は確かにそのつもりだった。
私の夫はランスという。やはり平民だが、王宮で文官補佐の仕事をしている。文官は貴族しかなれないイメージがあるが、平民でもそこそこ優秀ならばなれるチャンスもある。
ランスは仕事ができるタイプでとても優しく、犬好きなことも選んだポイントだった。私の飼っているミニチュアダックスのチョコ(雄)が彼の飼っているミニチュアダックスのマリー(雌)とドッグランで恋に落ちたことも大きかった。私は愛犬家で有名なのだ。そして私とランス、チョコとマリーのカップルが生まれたというわけ。
化粧は控えめにして目立たない色の簡易なワンピースを着る。このいかにも一般主婦というような服装がとても新鮮だった。夫の為に家事を自らするのも楽しい。今までは仕事で忙しく、家事はメイド任せだったから。
楽しい新婚3ヶ月はあっという間に過ぎていき、そろそろ4ヶ月になろうという頃のことだ。彼は最近文官補佐から文官に昇格し、帰りがどんどん遅くなっていった。
「仕事がとても忙しくて帰りが遅くなってすまない。だが、わたしの仕事は飲食店勤務だった君とは違い、営業時間が決まっているわけではない。もっと、なんというかなぁ、そう、高度な仕事なんだよ。君には想像もつかないことがいろいろ起きるんだ」
夫には飲食店勤務をしていたと話していたのだが、最近ではたまに見下すような言い方をしてくる。これは結婚前にはなかったことだ。
(ランスはもっと優しい人だったのに・・・・・・)
それでも私は彼が疲れの為に心に余裕がないからで、またすぐに優しい夫に戻ると信じていた。
ある日、商店街の八百屋や魚屋で食材を買って帰る道すがらのことだ。そろそろ夫が帰って来るはずの夕暮れ時に、見慣れたシルエットに並んで立つ見知らぬ若い女性がいる。私は慌てて建物の陰に隠れ聞き耳を立てた。
「私、今回の仕事では自信がなくて悩んでいるんです。それに同僚のコゼットさんが意地悪ばかりしてきます」
「それは大変だね」
「それに、実は将来のことも不安なんです。彼のことでも悩んでいて・・・・・・実は婚約者がいて、このままその人と結婚してしまっても良いのかなっ、て考えこんでいると夜も眠れなくて。どうやら、彼には私の他に女性がいそうなのです・・・・・・」
(え? 自分の婚約者の愚痴を人の夫にするわけ? そんなのは両親にするべき話だわ。早く、このくだらない話を打ち切ってよ、ランス!)
「あぁ、それは可哀想に。結婚前から女がいるかもしれない、なんて悩ませる男性はやめた方がいいかもね。碌な男ではないよ」
(結婚前ならランスよりまだましよ。あなたは結婚してからこんな女の相談に乗っているのですもの!)
仕事上の相談ならまだわかる。なぜここにプライベートな問題まで持ち込んでくるの? おかしいとは思わないの?
「じゃぁ、また食事でも一緒にして話をゆっくり聞こうか? 昨日と同じお店でいい?」
「はい! 昨日のステーキ美味しかったです。でも、今日はお魚の方がいいな」
(は? 相談女に豪華なディナーをご馳走するつもりなのね。これは相談ではなく、ただのデートよ。浮気と言ってもいいはずよ)
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