（完）美貌の王に恋するお姫様（前７話）

４ 王妃の提案・自国に戻ったタキス

４

★王妃の提案★


「なんだって？」

王妃が言うには、アイヤナ姫に現実を教えて欲しいのだという。

「あの子は、恋に恋する乙女です。本当の愛をまだ知らない子供なのです。だからこそ、憧れだけでは幸せになれないことを学ばなければならないのです」

「ほぉ、俺にどうしろと？」

「侍女の格好までして貴方に話しかけた娘を幻滅させてください。貴方のような、見栄えだけがいい男に惚れると痛い目に遭うことを教えてやってください。報酬は、充分に差し上げます」

とんでもない母親もいたもんだな・・・

「俺は男だぜ？　あんな美女と駆け落ちして手を出さないなんて、どうして信じられる？」

「あぁ、それは、私は人を見る目がありますからね。それに、手を出したら責任はとっていただきますし・・・・・・」

王妃の瞳に一瞬、殺意に近いものが煌めいた。庭師などと、駆け落ちさせる王妃に呆れかえったが、俺は、面白いことが好きだ。

「いいだろう。協力しよう」

そして、あの同棲が始まったのだった。


★オタリス王国に戻ったが★



俺は、女性を一途に思うことはない。いや、なかったはずだ・・・今までは・・・

ところが、オタリス王国に戻り愛妾達がすり寄ってきても、少しも嬉しくなくなっていた。

思い出すのはアイヤナ姫のことばかりだ・・・

俺にはまだ正妃は、いない。いずれ、どこかの国の姫を迎えなければならないが、エステファニア王国のアイヤナ姫では、決してないはずだった。

オタリス王国は豊かで広大な領土を持ち、国は大いに繁栄している。私はこの勢力をもっと広げるつもりでいた。エステファニア王国は、小国のたいして力もない国だ。国力が違いすぎるし、私は西の大国ヒッタイトの王に、王女との婚姻を提案されていた。

二日後には、ヒッタイト国の王女との顔あわせがある・・・気が進まないがこの国をより強固にする為だ・・・でもなぜ、こんなにアイヤナ姫の顔が思い浮かぶのかな・・・