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2 王太子殿下と世紀の大恋愛?
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「明日、シンクレア学園とウィットウォース王立貴族学園との親善テニス試合が開かれる。アラナをそこに参加させるようにとの王命だ。スタンフォード王太子殿下もいらっしゃるそうだ」
私が王太子妃に望まれているというお話を聞いてから数日後のこと、お父様は私を執務室に呼びそのようにおっしゃった。
私が通う学園は難易度の高い入学試験のある、裕福な平民が通うシンクレア学園だ。スタンフォード王太子殿下が通うウイットウォース王立貴族学園は、入学試験もなく貴族なら誰でも通える学園だった。
試合当日、テニスコートには護衛騎士が立ち並ぶ。開始予定時間はとっくに過ぎており1時間は経っていると思われた。シンクレア学園からの参加者はこの試合が中止になるのだと信じて疑わなかった。私達はみんな、約束時間の5分前に到着することを常識と思っていたから。
やがてやっといらっしゃったウィットウォース王立貴族学園の方々は、謝罪の言葉も無くだるそうにしていらした。
「だから貴族って嫌いなのよ。平民は待たせて当然、ってかんじ。気分が悪いわね」
親友のヴァレリがヒソヒソ声で批判した。
「しっ。聞こえたら大変よ。あの方達はスタンフォード王太子殿下のご学友なのですって」
私はヴァレリをたしなめる。親友が不敬罪に問われるところは見たくないもの。
肝心のスタンフォード王太子殿下がいらっしゃらないなか試合は進んでいき、やっと現れたのはキース第2王子殿下だった。
「兄上が見つからなくて、代わりにわたしが来ました。大変申し訳ないです」
丁寧に私に謝罪してくださった整った顔立ちの上品なキース殿下は、さすがに王族の風格があり平民の私に頭を下げる。ほんの少しびっくりしたわ。王族が平民に頭を下げるなんて思わなかった。
テニスもお上手で、私には少し手加減したようにも見えたけれど、これは優勝を競う試合ではないので問題はなかった。
翌日からまことしやかに大嘘の噂が国内に広まり始めた。
その噂は『スタンフォード王太子殿下は平民のアラナ嬢を見初めた。アラナ嬢も同じ気持ちで、二人は瞬時に恋に落ちた』というものだった。
(その場にいらっしゃらなかったスタンフォード王太子殿下と恋に落ちるなんてどうやったら出来るのだろう? 笑ってしまうわ)
しかもお互いが一目惚れしたことになっており、信頼の高い国内の新聞までが特大ニュースとして掲載していた。
王太子と平民娘の恋! 身分差は克服できるのか?
(身分差・・・・・・克服しなくていいけれど、絶対これは美談にされる方向よね)
ほどなくして、私は王太子との交際を国王陛下夫妻に許され、順調にスタンフォード王太子殿下との愛を育んでいることになっていた。
慈悲深い国王陛下夫妻は平民娘を受け入れる英断をお示しになられた! 我らが国王陛下夫妻、万歳!
新聞にそう書かれた文字を見て、呆れてため息しか出てこない。
「はいはい。そういう流れなのね。そうだろうと思ったわ」
私は呟きながらも、また眠くなってくる。こんな時はやはり、寝るに限るわ。なにが愛を育むだか。
私はまだスタンフォード王太子殿下には一度も会っていないのよ?
「お嬢様、ルース大商会の重役達との会議のお時間ですよ?」
「そうだったわね。では5分だけ寝かせて貰える?」
「かしこまりました。不思議とお嬢様は寝て起きた時に、新しい事業を考えつきますものね。重役達も大人しく待っていることでしょう」
ミミの楽しげな声が遠くなって、また私は夢の世界に行くのだった。
私が王太子妃に望まれているというお話を聞いてから数日後のこと、お父様は私を執務室に呼びそのようにおっしゃった。
私が通う学園は難易度の高い入学試験のある、裕福な平民が通うシンクレア学園だ。スタンフォード王太子殿下が通うウイットウォース王立貴族学園は、入学試験もなく貴族なら誰でも通える学園だった。
試合当日、テニスコートには護衛騎士が立ち並ぶ。開始予定時間はとっくに過ぎており1時間は経っていると思われた。シンクレア学園からの参加者はこの試合が中止になるのだと信じて疑わなかった。私達はみんな、約束時間の5分前に到着することを常識と思っていたから。
やがてやっといらっしゃったウィットウォース王立貴族学園の方々は、謝罪の言葉も無くだるそうにしていらした。
「だから貴族って嫌いなのよ。平民は待たせて当然、ってかんじ。気分が悪いわね」
親友のヴァレリがヒソヒソ声で批判した。
「しっ。聞こえたら大変よ。あの方達はスタンフォード王太子殿下のご学友なのですって」
私はヴァレリをたしなめる。親友が不敬罪に問われるところは見たくないもの。
肝心のスタンフォード王太子殿下がいらっしゃらないなか試合は進んでいき、やっと現れたのはキース第2王子殿下だった。
「兄上が見つからなくて、代わりにわたしが来ました。大変申し訳ないです」
丁寧に私に謝罪してくださった整った顔立ちの上品なキース殿下は、さすがに王族の風格があり平民の私に頭を下げる。ほんの少しびっくりしたわ。王族が平民に頭を下げるなんて思わなかった。
テニスもお上手で、私には少し手加減したようにも見えたけれど、これは優勝を競う試合ではないので問題はなかった。
翌日からまことしやかに大嘘の噂が国内に広まり始めた。
その噂は『スタンフォード王太子殿下は平民のアラナ嬢を見初めた。アラナ嬢も同じ気持ちで、二人は瞬時に恋に落ちた』というものだった。
(その場にいらっしゃらなかったスタンフォード王太子殿下と恋に落ちるなんてどうやったら出来るのだろう? 笑ってしまうわ)
しかもお互いが一目惚れしたことになっており、信頼の高い国内の新聞までが特大ニュースとして掲載していた。
王太子と平民娘の恋! 身分差は克服できるのか?
(身分差・・・・・・克服しなくていいけれど、絶対これは美談にされる方向よね)
ほどなくして、私は王太子との交際を国王陛下夫妻に許され、順調にスタンフォード王太子殿下との愛を育んでいることになっていた。
慈悲深い国王陛下夫妻は平民娘を受け入れる英断をお示しになられた! 我らが国王陛下夫妻、万歳!
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「そうだったわね。では5分だけ寝かせて貰える?」
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ミミの楽しげな声が遠くなって、また私は夢の世界に行くのだった。
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