(完結)真実の愛っていいですね、どうぞお幸せに!

青空一夏

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3 私を誰も汚すことはできない。私は私。

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 私とスタンフォード王太子殿下は一度もデートをしないまま式を挙げた。それはとても盛大な結婚式で諸外国から高貴な方々が参列する、まさに歴史に残る豪華絢爛なものだった。(その費用はルース家がほとんど負担していたけれどね)

 平民出身の娘が王太子妃になることはとても新鮮な驚きをもって歓迎された。民の気持ちに寄り添う慈悲深い国王陛下夫妻だと諸外国でも多くの人々が賞賛したのよ。





「お前は平民から王太子妃になれてとんでもなく嬉しいのだろうな。どのように画策したのだか知らぬがとんでもない女狐だな」

「私はあいにく狐のように可愛い尻尾を持っておりません」

「褒めてなどいない! 愚か者め」

「はい、わかっております」

 初めてお会いしたのが結婚式の日で、初めてお話をしたのが初夜のこの会話だった。

 このような険悪な空気であれば、私が次に期待したことは「お前を愛することはない。一生、抱くつもりはないからな」という言葉だ。
 けれど、「愛することはない」とはおっしゃったが、「抱くつもりはない」とはおっしゃらなかった。なので、私の純潔はあっという間に散らされた。

 朝起きると、私の世話をしに姿を現したミミの瞼が赤く腫れていた。ベッドにはすでにスタンフォード王太子殿下の姿はない。
 ミミは私の専属侍女になっており、昨晩は寝室の続きの間で控えていたのだ。つまりあの会話を全て聞かれていたわけだ。

(私の為に泣いたのね)

 嬉しいと思う反面、このようなことで泣く必要はないことを知っておいてもらいたい、とも思う。

「おかわいそうです。あのようなうつけに大事なお嬢様が汚されて・・・・・・こんなことはあってはならないことです。私はとても悔しいです」
 
「私の為に泣く必要はないわ。私は自分が汚れた、などとは思っていないの。どのような目にあおうとも心は自由だし、私は私よ。少しも前と変わらない価値があるのよ」

「おっしゃる通りです。私の考え方が間違っておりました。お嬢様は誰も汚すことのできない存在でした」

 ミミはまた溢れてきそうな涙を拭きながらにっこり微笑んだ。そう、やっぱり人間は笑っていた方が良いのよ。泣いたり落ち込んでも事態は変わらない。

 幸いなことに、スタンフォード王太子殿下も私がお気に召さなかったようだ。

「不感症の女などおもしろくもない。子供ができるように義務感でのみしてやるが、宮廷医に調べさせ妊娠可能な最低限の日にだけすることにする!」
 と、おっしゃった。

 スタンフォード王太子殿下の提案は私も望むところだった。それからは、定期的に行う最低限のを私達は耐えてきた。ある意味、一種の戦友とも思えるのだけれど、私達の間には友情すら芽生えなかった。





 それから2年が経ち、お互いを我慢したにも拘わらず子は授からなかった。そして、スタンフォード王太子殿下は私を「不感症のうえに不妊症の女」と、侍女達の前で蔑むのだった。
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