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6 可哀想なアラナ嬢を助けたいんだ! (キース第2王子殿下視点)
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(キース第2王子殿下視点)
わたしの母上は王妃になる予定だったギルソープ公爵家の令嬢だった。ギルソープ公爵家は筆頭公爵家で代々宰相の職を賜っていた。しかし、国王は女好きで浮気が絶えなかった。その結果、ジェンナ・オルティス男爵令嬢を妊娠させ、無理矢理第1妃に迎えてしまった。
母上はそこで父上を見限れば良かったのに、第2妃の位に甘んじわたしを産んだ。わたしのお祖父様であるギルソープ公爵がこの国を憂えて、母上を第2妃にさせ国が乱れぬように配慮したのかもしれない。父としての情よりも宰相としての職務を貫いた結果だとしたら母上も国の犠牲者の一人だ。
湯水のように金を使おうとする国王とジェンナ妃は国民から相当反感を買った。母上は再三それを注意し余計に煙たがられ難しい問題だけを丸投げされる。だが出席さえすれば良いパーティなどには喜んで華美な服装で彼らは姿を現した。
父上はジェンナ王妃と遊び呆けて政治のことはおざなりだし、兄上もまた同類だった。いいとこ取りだけしていく国王とジェンナ王妃にスタンフォード王太子殿下はまるで寄生虫だ。
だが次第に国民達は国王達の無能さに気づき始め不穏な空気が漂い始めた。母上は彼らの予算を削り財政の引き締めを行ったけれど、彼らは悪知恵だけは働くのかお金をたかれる寄生先を見つけた。それが国一番の大金持ちルース大商会の一人娘のアラナ嬢で、この国で最難関と言われるシンクレア学園に通う才女だった。
出会いの場として仕組まれたテニス親善試合に、顔もださない兄上に呆れたわたしは代わりに出席してみた。どのような女性か興味があったし、できればこの結婚を阻止したかった。かわいそうな女性だ。お金持ちであるが故に父上達から目をつけられ、爵位がない為に逆らうこともできない。
会ってみれば聡明でとても感じの良い女性だった。貴族の令嬢達よりさらに上品に見える女性で、この女性があの兄上の妻になるなど可哀想すぎる。
「母上。アラナ嬢が不憫ですよ。このような作られたシンデレラストーリーなどくだらないし、何より彼女が負う犠牲が大きすぎます」
翌日、母上に彼女を王太子妃に迎えようとする国王を止めるよう願い出た。それを止められるのは多分母上だけだから。
「もしかして惚れたのですか? それならなお一層、この状況は覆すべきではありません。一国の王妃になる女性がこれしきのことで、へこたれていては務まりませんよ」
「は? 母上は彼女を試すおつもりですか? あの兄上と結婚して幸せになれるはずがないのはわかっていらっしゃいますよね? 母上は案外意地が悪いのですね!」
「アラナという者を調べましたが、平民出身だがとても気骨のある女性のようです。キースが考えるほどか弱い女性ではないでしょう。私が見込んだような女性であったなら、きっとうまく立ち回り周囲を味方につけるでしょう。まぁ、見ていてごらんなさい」
王太子妃になってからすぐに、あの愚かな兄上に罵倒されているアラナ嬢を見ると胸が痛んだ。だがしばらくすると、王宮の女性使用人達の様子が一変する。明らかに彼女を女主人として認定しているように動いている。王宮に仕える侍女達は皆貴族出身者で子爵家や男爵家の次女や三女などが多くいるが、彼女達は平民に仕えるのを酷く嫌うのにすっかり手なづけてしまっていた。
その証拠に最近の兄上の皮膚は赤くただれているし、くしゃみも頻繁に連発している。兄上が幼い頃に猫の毛アレルギーだったということを知っているのは古参の侍女達だけ。それは本人さえも知らない事実だった。さらに兄上の定期的な腹痛も侍女達やメイド達の仕業だろう。
母上のおっしゃるようにアラナ嬢はひ弱ではない。逞しい芯のしっかりした女性なのだ。母上がアラナ嬢を認めた時こそ、同じような煮え湯を飲まされた経験のある母上がアラナ嬢の後ろ盾になるのだろう。
そしてある日の夜会で、兄上はアラナ嬢以外の女を妊娠させ絶縁宣言をした。なんという愚か者だろう! しかしこれで賽は投げられた。
今こそアラナ嬢を守る時だ!
わたしの母上は王妃になる予定だったギルソープ公爵家の令嬢だった。ギルソープ公爵家は筆頭公爵家で代々宰相の職を賜っていた。しかし、国王は女好きで浮気が絶えなかった。その結果、ジェンナ・オルティス男爵令嬢を妊娠させ、無理矢理第1妃に迎えてしまった。
母上はそこで父上を見限れば良かったのに、第2妃の位に甘んじわたしを産んだ。わたしのお祖父様であるギルソープ公爵がこの国を憂えて、母上を第2妃にさせ国が乱れぬように配慮したのかもしれない。父としての情よりも宰相としての職務を貫いた結果だとしたら母上も国の犠牲者の一人だ。
湯水のように金を使おうとする国王とジェンナ妃は国民から相当反感を買った。母上は再三それを注意し余計に煙たがられ難しい問題だけを丸投げされる。だが出席さえすれば良いパーティなどには喜んで華美な服装で彼らは姿を現した。
父上はジェンナ王妃と遊び呆けて政治のことはおざなりだし、兄上もまた同類だった。いいとこ取りだけしていく国王とジェンナ王妃にスタンフォード王太子殿下はまるで寄生虫だ。
だが次第に国民達は国王達の無能さに気づき始め不穏な空気が漂い始めた。母上は彼らの予算を削り財政の引き締めを行ったけれど、彼らは悪知恵だけは働くのかお金をたかれる寄生先を見つけた。それが国一番の大金持ちルース大商会の一人娘のアラナ嬢で、この国で最難関と言われるシンクレア学園に通う才女だった。
出会いの場として仕組まれたテニス親善試合に、顔もださない兄上に呆れたわたしは代わりに出席してみた。どのような女性か興味があったし、できればこの結婚を阻止したかった。かわいそうな女性だ。お金持ちであるが故に父上達から目をつけられ、爵位がない為に逆らうこともできない。
会ってみれば聡明でとても感じの良い女性だった。貴族の令嬢達よりさらに上品に見える女性で、この女性があの兄上の妻になるなど可哀想すぎる。
「母上。アラナ嬢が不憫ですよ。このような作られたシンデレラストーリーなどくだらないし、何より彼女が負う犠牲が大きすぎます」
翌日、母上に彼女を王太子妃に迎えようとする国王を止めるよう願い出た。それを止められるのは多分母上だけだから。
「もしかして惚れたのですか? それならなお一層、この状況は覆すべきではありません。一国の王妃になる女性がこれしきのことで、へこたれていては務まりませんよ」
「は? 母上は彼女を試すおつもりですか? あの兄上と結婚して幸せになれるはずがないのはわかっていらっしゃいますよね? 母上は案外意地が悪いのですね!」
「アラナという者を調べましたが、平民出身だがとても気骨のある女性のようです。キースが考えるほどか弱い女性ではないでしょう。私が見込んだような女性であったなら、きっとうまく立ち回り周囲を味方につけるでしょう。まぁ、見ていてごらんなさい」
王太子妃になってからすぐに、あの愚かな兄上に罵倒されているアラナ嬢を見ると胸が痛んだ。だがしばらくすると、王宮の女性使用人達の様子が一変する。明らかに彼女を女主人として認定しているように動いている。王宮に仕える侍女達は皆貴族出身者で子爵家や男爵家の次女や三女などが多くいるが、彼女達は平民に仕えるのを酷く嫌うのにすっかり手なづけてしまっていた。
その証拠に最近の兄上の皮膚は赤くただれているし、くしゃみも頻繁に連発している。兄上が幼い頃に猫の毛アレルギーだったということを知っているのは古参の侍女達だけ。それは本人さえも知らない事実だった。さらに兄上の定期的な腹痛も侍女達やメイド達の仕業だろう。
母上のおっしゃるようにアラナ嬢はひ弱ではない。逞しい芯のしっかりした女性なのだ。母上がアラナ嬢を認めた時こそ、同じような煮え湯を飲まされた経験のある母上がアラナ嬢の後ろ盾になるのだろう。
そしてある日の夜会で、兄上はアラナ嬢以外の女を妊娠させ絶縁宣言をした。なんという愚か者だろう! しかしこれで賽は投げられた。
今こそアラナ嬢を守る時だ!
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