侯爵ロベルトーー妻は美女悪役令嬢、親友はドラゴン王

キャロラインのクッキーはウナギの餌？

俺とエリーゼは婚約した。
エリーゼが学校を卒業するのは半年後だ。
卒業したらすぐに結婚するつもりだ。

今のエリーゼは公爵家から元気に学校に通っている。
婚約発表をして、すぐにキャロラインがお祝いを伝えに訪ねてきた。
エリーゼが学校に行っている時間帯だ。
全く懲りない子だと思う。

「私が焼いたクッキーなのですが、ご一緒に召し上がりませんか？エリーゼ様とのご婚約のお祝いを申し上げたくて来ました。このたびはおめでとうございます。」
と、媚びるような笑顔で言う。

「なぜ、俺が君とクッキーを食べなければならないのかなぁ？お祝いの言葉だけは、ありがたく受け取らせてもらうよ。ありがとう！では、さようなら！」
ちょっと苛つきながらも俺は暴言を吐かないように気をつけていた。
ここが俺の屋敷の門の前で門番が隣にいるし、あまり多くはないが通行人もいるからだ。

「なぜって、真実の愛のためですわ。私とこのクッキーを食べることが公爵様のためになるのです」
大きな瞳を潤ませて上目遣いに俺を見つめている。

「いかれてますね。」門番は、一言いうと、首を振ってため息をついている。

「最近、暑かったですからねぇー」アンヌがいつのまにか後ろにたっていて、キャロラインを気味の悪い毛虫を見るような目つきで見ていた。

「せっかくですので、クッキーはいただいておきますね。ですが、今は学校の授業時間のはずですよねぇ。早く行かないと、学校側に連絡しますよ」侍女長は朗らかな声で脅していた。

クラスは違うが、キャロラインも男爵家の娘なのでエリーゼと同じ学校に通っているはずだが、授業をさぼってここに来るとは、呆れてしまう。

ところで、俺は最近、ウナギを人工の池で飼っている。
エリーゼと一緒に辺境に行った時（番外編、ドラゴン退治）に川にウジャウジャいたのだ。
ウナギの蒲焼きはうまい。早速、屋敷に持ち帰ったが、元気もなく、いっこうに稚魚もうまれず困っていた。

アンヌはキャロラインのクッキーを細かく砕くとなんと、その池に放り込んだ。
「そんな得体のしれないものを俺の大切なウナギに食わすな」
言い終わらないうちに、ウナギは水面に浮いたクッキーを食べ尽くしていた。

「毒でも入っていたらウナギが死んでしまう」ぶつぶつ文句を言いかけたが、ウナギが前より元気に動いているからまぁ、大丈夫だろう。