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閑話ードラゴン王ベルセビュートが友人になる。
しおりを挟む俺はエリーゼを黄色い家から連れ出して公爵家で仲直りして以来、婚約者となり、ずっと同じベッドで寝ている。
結婚の半年前から同衾が許されるからちょうどいいタイミングだった。
エリーゼは細身のウエディングドレスが着たいというので、わかるよね?
手は出せないってこと。
だから、かなり、うん、忍耐が必要だった。
雑念を追い払うのに運動は欠かせない。
ドラゴン討伐はいい運動だと思う。
エリーゼと俺はドラゴンのいる辺境地に馬車を走らせていた。
他に冒険者の馬車が2台。
遠いので、朝方4時に屋敷をでて、お昼だというのにまだ着かない。
途中で休憩ということで、馬車を止める。
草原に日陰を作る大きな木が枝を四方に広げている。
エリーゼは木の下に座れるように大きな敷物を広げた。
小型の魔冷蔵庫から大きな肉の塊を出すとエリーゼが香辛料を振って魔石を使ったコンロで焼いていく。
大鍋を出してそこに俺が風魔法で野菜の上に小さな竜巻を起こす。
たちまちそれらは均等にきざまれ鍋の中に落ちる。
凝縮したホワイトソースを魔冷蔵庫から取り出し放り込む。
バスケットに詰めた大きなパンをこれも魔石を使ったコンロであぶり、風魔法でほどよく切る。
エリーゼと俺の連携プレーで見事に大量のお昼ご飯の完成だ。
「みなさぁーん、こちらに来て一緒に召し上がりませんかぁ?」
エリーゼが声をかけると冒険者達が、おそるおそるこっちにやってくる。
男3人女3人で、魔石がほしくて来たという。
ドラゴンのいる僻地で魔石は拾うことができるが危険は常に隣り合わせだ。
一攫千金を求める冒険者はまだまだ多い。
ドラゴンと主従関係を結ぶ冒険者もいるがそれは奇跡に近い。
ドラゴンは人間と同じで優しいのもいれば、乱暴なのもいる。
群れで暮らすが家族単位でお互い干渉しあわない習性がある。
だから、人間になつくドラゴンもいれば、近づく人間は焼き殺すというドラゴンもいる。
今回はおとなしいドラゴンのふれあいツアーだったが、急遽暴れる一頭を殺すツアーになっていた。
「ドラゴンは、はじめは俺たちにまかせてくれ。なんとか救いたいんだ」
六人は頷く。
「ありがたいよ。俺らも死にたくないから。貴族様だと魔法がつかえるんだろ?」
「あぁ、僕は風、彼女は水だ。」
目的地につくと子供のドラゴンは足から血を流している。
暴れまくって、火を周囲にまき散らしている。
片側に大きなドラゴンが1頭いて近づこうとすると威嚇してくる。
「面倒ですわねぇ」エリーゼは水魔法をプシュリとかけると、薬草の湿布をもってずんずん子供のドラゴンに近づいていく。
新たに火を噴こうとするドラゴンの口に俺は魔法の縄を移動させてくるくると縛った。
その間にエリーゼは足にぺたりと湿布を貼る。
ヨモギとスイカカズラ、ゲンノショウコをすり潰した汁をたっぷりと塗ったもので、抗菌作用と化膿も防げる。
エリーゼの魔力も込めているので、痛みもすっとおさまって、深い傷でも3日もあればふさがるはずだ。
「なんか、あっけない‥」冒険者たちが、ブチブチ文句を言っているのがおかしかった。
まぁ、ドラゴンとの戦いなんて派手でかっこいい立ち回りが期待されるけど案外地味であっさり、だと思う。
だいたいドラゴンと死闘を繰り広げるなんて俺とエリーゼがやるわけがないだろう?
まだ新婚生活も味わっていないのに‥‥
子供のドラゴンはエリーゼになついて、キュウキュウ鳴いている。
「お前、世話になったな!褒美に家来にしてやろう!」
頭に流れ込んでくるドラゴンの声。
子供のドラゴンの横にいた大きなドラゴンがウインクしてきた。
「絶対、嫌だ!」
俺はきっぱりと言い切った。
「家来じゃ、だめよ?そういう時は、友人っていうのよ?」
エリーゼが助け船をだす。
「そう、我もそれが言いたかったのだ!我の名はベルセビュート。よろしく頼む!」
親ドラゴンは人型になった。
子ドラゴンはノアという。
うーん、ゲーム設定からだいぶ、いろいろかけ離れてきたなぁ。
「ねぇ、それでなぜ、ベルセビュートがここにいるの?」
ベルセビュートは俺の馬車に乗っている。
ノアは5歳ぐらいの子供になってエリーゼの膝の上でクッキーを食べている。
「うん?あそこにいるのは飽きた。人間で初めての友人だ。よろしくな!あ、ちなみに我はドラゴンの王だ」
嬉しそうに微笑みかけてくる。
「うーーん、まぁ、いいか?俺はロベルトで彼女はエリーゼ、婚約者だ。」
「あぁ、了解。番いだろ?」
「あ、そういえばママはどこ?」
ノアが絶妙なタイミングで、尋ねてきた。
「えっと、まぁ、あれだ、あれ、ちょっと勘違い?」
「わかったわ、男性って鈍感なところがありますものねぇ」
エリーゼは俺をチラッと見て訳知り顔で頷いた。
うん、悪かったよ、ごめんね、エリーぜ!
こうして、父ドラゴンと子ドラゴン、公爵家の子になりました。
あ、帰りの途中で川にウナギがいたので50匹ほど水面に風魔法をおこして捕獲した。
風魔法が強すぎて、そのうちの数匹はバラバラにして失敗した。
反省だ、ウナギは前世じゃ、高かったからなぁー
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