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戴冠式は退屈

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森の中で隠れていた王は服はズタズタで涙と鼻水で顔がぐちゃぐちゃになっていた。

オオカミの群れに襲われていたところを、騎士たちに助けられて、おいおい泣いているのだった。

ロベルトの配下の騎士たちは呆れて王を見つめている。

「こんな王っているか?」

「オオカミも退治できないなんてさぁーロベルト様はドラゴンすら配下におけるのに」

「とりあえず、ロベルト様に引き渡そう。お前、歩けるか?」

「ぶ、無礼者!わしは王だぞ!お前呼ばわりするとは、死刑だ!お前ら、全員処刑してやるーー」


「あぁーこの王ってさ、剣術も魔法も使えないばかりか、頭もいかれてるみたい。」

縄に縛られ、王が引きずられるように連れていかれる。


「くそ!あの愚息のせいだ!あいつがくだらない計画を立てたばかりに」
ぶつぶつ言う王はまるで反省していないのだった。





ズルイーヨ王子と王はロベルトを前にしてお互い罵り合っている。

「お前がくだらない計画を勝手にやったおかげでこのザマだ!わしは反対しただろう?」

「は?父上は妙案だと喜んでいましたよね?」

「なんだと!デタラメを言うな!」


ロベルトは大きくため息をつくとこの二人の処分を厳しい声で告げた。


「この二人は辺境地の塔に生涯、幽閉とする。外部との接触は一切、禁止だ。」







「なんで、そなたが王にならんのだ?」

「なりたくないからならないだけだ。俺は公爵で十分さ。王の器じゃぁない!」

「ふん、そうかどうかは己が決めるものではないわ!民が決めるものであろう」
ベルセビュートは頑固なロベルトに呆れてしまう。

「まだまだ、先は長いわ。まぁ、結局は実質、王な気はするけどねぇー」
アシャは戴冠式にすっかり飽きてしまって欠伸をしているノアの耳をつまみながら言う。


今日は、第2王子が王となる戴冠式なのだ。
教皇のこの国の歴史を語るところから始まって、司教達のそれぞれの挨拶がやたら長い。

「うーーん、エリーゼ、なんで俺たちの席がここなんだ?」

「さぁ?教皇様と宰相様がフェルナンド家とドラゴン王の席はここしかないって」

戴冠式は大聖教会で行われるのだが、戴冠式で王と教皇が立ち並ぶ席よりはるか上段の席が新たに作られ
そこにロベルト、エリーゼ、ベルセビュート、アシャ、ノアが座らされた。

「まぁ、ドラゴンの大群を引き連れて隣国に攻め入って結果、ルアンド帝国と合併したからなぁー。マリオ王子もそなたと我しか王とよびたくないと言っていたぞ。当然といえば当然だ!みんな、そなたが怖くてたまらないのさ!」
うん、うん、と納得しながらベルセビュートは目の前に盛られている果物の盛り合わせのブドウに手を伸ばす。

「はぁー長いわねぇー退屈だわぁ-」
アシャは紅茶をのんで、大きなため息をついている。

「いやぁーいろいろおかしいだろう?」
自分達が座っている椅子がまず王の玉座より豪華なこと。
教皇や次期王、高位貴族たちが立って式に臨んでいるのにロベルト達は座らされていること。
あろうことか、大理石のテーブルまで前には置かれて紅茶やケーキ、果物の盛り合わせが所狭しと置かれている。
給仕のメイドが、びくびくしながら紅茶をついてくれるのも、なんだか申し訳ない気分になるのだった。

「はぁー早く帰りたい!」
ロベルトは自分の屋敷に早く帰りたくてたまらなくなった。







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