1 / 1
婚約破棄した王様は涙しながら神を呪う
しおりを挟む
麗しい美貌のアレクサンダー大王は婚約者のクロエに懇願した。
「お願いだ。その絵を踏みつければ良いだけなのだ。それだけで、これまで通り私の婚約者でいられる。私の妃としてずっと側にいてくれ」
「アレクサンダー様、ごめんなさい‥‥」
涙を浮かべてうなだれる女神のように美しいクロエは、決してアレクサンダーの懇願に首を縦には振らないのだった。代わりにクロエの瞳と同じ色のブルーサファイアの指輪を差し出した。
「これを、私だと思ってください」
☆
「これから裁判をおこなう。この絵の神を信仰する者は罪人である。『皇帝も貴族も平民と同じ人間である。人間は等しく平等である』などという宗教は存在してはならん。さぁ、クロエ様がその信者でないことを証明していただきましょう」
ークロエ、早く踏むのだ!なにをぐずぐずしている!
アレクサンダーは、絶望の思いでクロエを見ていた。全く踏もうとせず、立ち上がりもしないクロエに激しい怒りさえ覚えながら。クロエよ、お前は私よりその神を選ぶというのだな‥‥
「クロエ様はお踏みにならない!確定です。国が禁じた邪教を信仰している魔女の証明だ!火あぶりの刑にしろ!」
貴族の裁判官3人が叫ぶと、他の貴族達もみな一斉に同意の声をあげた。
「「「魔女だ!殺せ!」」」
こうなってしまっては、王であるアレクサンダーでも貴族たちを止めることはできなかった。
「私、アレクサンダー王はこのクロエとの婚約は破棄する。この者は、‥‥蛇の毒で刑に処す」
「「「いけません!!蛇の毒など一瞬で死んでしまう!!もっと苦痛を与えなければ。火あぶりだ!!」」」
「っ‥‥火あぶりの刑に処す」
ー許せ‥‥クロエ‥‥
アレクサンダーがクロエを見るとクロエは優しく微笑んだ。まるで、その気持ちはよくわかっています、とでも言うように。
☆
クロエは大きな木に縛られ、その周りには油を染みこませたぼろ布がたくさん置かれた。燃えやすいものはなんでも投げ込まれ、クロエは生きながら炎に焼かれて死んだ。
アレクサンダーは、胸がはりさけんばかりの思いでその光景を見ていた。クロエが焼き殺された後も、うららかな春の日差しは温かく、そよ風はなにごともなくクロエが殺された近くの花を優しく揺らしている。クロエの信じる神がもしいるのだとしたら‥暗黒の雲が覆って雷鳴が轟き神が怒り狂うべき場面のはずなのに‥‥
ー神なんていない‥‥これではクロエは無駄死にだ!こんな薄情な神などいらない!
アレクサンダー王は、自ら神と名乗り諸外国を次々に征服し人々から暗黒の神と呼ばれた。暗黒の神の首には、いつも鎖に通された青い宝石が埋められた指輪が輝いていた。
「お願いだ。その絵を踏みつければ良いだけなのだ。それだけで、これまで通り私の婚約者でいられる。私の妃としてずっと側にいてくれ」
「アレクサンダー様、ごめんなさい‥‥」
涙を浮かべてうなだれる女神のように美しいクロエは、決してアレクサンダーの懇願に首を縦には振らないのだった。代わりにクロエの瞳と同じ色のブルーサファイアの指輪を差し出した。
「これを、私だと思ってください」
☆
「これから裁判をおこなう。この絵の神を信仰する者は罪人である。『皇帝も貴族も平民と同じ人間である。人間は等しく平等である』などという宗教は存在してはならん。さぁ、クロエ様がその信者でないことを証明していただきましょう」
ークロエ、早く踏むのだ!なにをぐずぐずしている!
アレクサンダーは、絶望の思いでクロエを見ていた。全く踏もうとせず、立ち上がりもしないクロエに激しい怒りさえ覚えながら。クロエよ、お前は私よりその神を選ぶというのだな‥‥
「クロエ様はお踏みにならない!確定です。国が禁じた邪教を信仰している魔女の証明だ!火あぶりの刑にしろ!」
貴族の裁判官3人が叫ぶと、他の貴族達もみな一斉に同意の声をあげた。
「「「魔女だ!殺せ!」」」
こうなってしまっては、王であるアレクサンダーでも貴族たちを止めることはできなかった。
「私、アレクサンダー王はこのクロエとの婚約は破棄する。この者は、‥‥蛇の毒で刑に処す」
「「「いけません!!蛇の毒など一瞬で死んでしまう!!もっと苦痛を与えなければ。火あぶりだ!!」」」
「っ‥‥火あぶりの刑に処す」
ー許せ‥‥クロエ‥‥
アレクサンダーがクロエを見るとクロエは優しく微笑んだ。まるで、その気持ちはよくわかっています、とでも言うように。
☆
クロエは大きな木に縛られ、その周りには油を染みこませたぼろ布がたくさん置かれた。燃えやすいものはなんでも投げ込まれ、クロエは生きながら炎に焼かれて死んだ。
アレクサンダーは、胸がはりさけんばかりの思いでその光景を見ていた。クロエが焼き殺された後も、うららかな春の日差しは温かく、そよ風はなにごともなくクロエが殺された近くの花を優しく揺らしている。クロエの信じる神がもしいるのだとしたら‥暗黒の雲が覆って雷鳴が轟き神が怒り狂うべき場面のはずなのに‥‥
ー神なんていない‥‥これではクロエは無駄死にだ!こんな薄情な神などいらない!
アレクサンダー王は、自ら神と名乗り諸外国を次々に征服し人々から暗黒の神と呼ばれた。暗黒の神の首には、いつも鎖に通された青い宝石が埋められた指輪が輝いていた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
38
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(3件)
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
生きがいを無くした王様は戦いにそれを見出そうとしたのかなって思いました
火炙りといえば魔女狩りが有名ですがその時は黒猫も魔女の手先として迫害されたらしいですねあんなに可愛らしいのに……
当時は戦争や疫病で社会が鬱々としててその捌け口に魔女や黒猫が生贄にされたんでしょうけど現代から振り返ると罪のない人々や動物を傷つける人間への神様からの罰なのかもしれないなと思います
この作品では王様が神様を名乗って諸外国を征服することでその罰を与えたのかもしれない、どこの作品を読んで思いました(的外れだったら申し訳ないです🙇)
こんばんわ😊
とても素晴らしい感想をありがとうございます。
おっしゃる通りです。
だいぶ前に書いたものですが
お読みくださりありがとうございます🙇♀️
⋀🎀⋀
(* ❛ᴗ❛ *)
ー U^^^Uー
│✨ ⭐️ ✨│
│✨ 感 ✨│
│✨ 謝 ✨│
│✨ 状 ✨│
│✨ ⭐ ✨│
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
史実にある魔女狩りや裁判
処刑方法を見ると
まぁ、なんと
合法的にサディスティック&サイコパスな
刑罰(リンチ)を無実の人間に与える
人々の多いことよ
人間の欲の暗部をあれほど堂々と露見させた時代は
ある意味、歴史のある段階の終わり
ともいえますよね
あそこで人類が滅びていても
おかしくはないほど。
さらには遺伝子がどうなっていたものやら
もしかして血族結婚・近親相姦の挙句に
異常がみられたのかもしれませんね
自死も他殺を含む他への異常行動も
解明されつつありますね
面白かったです!
ありがとうございました😊
感想ありがとうございまぁす(*^。^*)
>合法的にサディスティック&サイコパスな
刑罰(リンチ)を無実の人間に与える
人々の多いことよ
そう、凄いよね
人間ってこれほど残酷になれる生き物なんだって恐ろしくなるよね
>あそこで人類が滅びていても
おかしくはないほど。
本当にその通りだと思う
けど、そうはならず
悪事を働く者は生きていて、無実の者が苦しみながら死んでいく
遠藤周作先生の沈黙という小説で、キリシタン禁制のなか残忍な拷問や殉教が展開されているのに、神はなにも行動をおこしてくださらない場面がとても印象深かったです
神様がもしいるのなら、なぜナチスの収容所のような残虐な出来事を放置していたのか、戦争で殺し合う人間をとめないのか・・・・・・そんなことも考えてしまう
>自死も他殺を含む他への異常行動も
解明されつつありますね
歴史に埋もれた真実が少しでもわかるといいですよね(*^。^*)
ただ今でも人間は残酷な要素を持っていて、いたるところで虐めみたいなことは展開されている
だから、小説のなかだけでもイケメン高スペックに愛される無邪気なヒロインが人気なのかも
こちらこそお読みくださってありがとうございまぁす🙇🏻♀️
今日は寒いよーー
暖房つけてる(笑)最近、電気料むっちゃあがったよねーー
今日も良い一日になりますように💖
サチマルさまって、もしや、処刑シーンを書くのがお好き❓
釜茹でが一番衝撃でしたけど😁
一宮あめ様
またまた、こんなむさ苦しいところに😆
うーーん、好きなんですかねぇー🤔
多分、衝撃的にするとアクセス数増えるかも
っていうスケベ根性でございます😅🤣
文才がないのでインパクトでカバーしよーと( ̄▽ ̄)