[完結]裏切りの果てに……

青空一夏

文字の大きさ
10 / 12

10

しおりを挟む
 sideレオン

 ……確かに、このままでは重婚の罪を問われても仕方がない。
  胸の奥が冷たくなる。
  リリアは冷めた目で、まるで見下すように僕を見つめていた。

 そんな中、リリアは今までのことを、国王陛下や居並ぶ貴族たちの前で、すべてぶちまけてしまった。どこから調べたのか、僕が契約した保険金の担当者まで呼び出し、離れを建てた業者や、かつて屋敷にいたメイドたちまでが集められている。それぞれが証言し、僕をどんどん追い詰めていった。

 周囲の貴婦人たちはどよめき、眉をひそめながら、僕に軽蔑の眼差しを向けた。
「とても狡猾なやり口ですわね」
「うちの娘も気をつけないと……。ああいう、見た目と口先だけはいい男って、本当に厄介ですわ」
 娘を持つ裕福な夫人たちは、とりわけあからさまに嫌悪感を示した。

 そのすぐ隣で、エレナはいたたまれず顔をそむけ、そっとその場を離れようとした。しかし、大広間の扉の前では王家の騎士たちが立ち塞がっており、逃げ道はなかった。彼女の顔は血の気を失い、僕の隣に戻ることもせず、必死に他人のふりをしているように見えた。 

 紳士たちは呆れたように顔を見合わせ、嫌悪を隠そうともしない口調でつぶやく。
「こういう男がいるのは迷惑ですね。お金持ちの令嬢に本気で恋をしている真面目な男まで、とばっちりを受けますからね。どうせ金目当てだろう、とか……悪い前例を作ってほしくないものだ」
「全くだ。私の婚約者も裕福な家の娘だが、こんなバルネス伯爵のような貴族がいるせいで、同じ目で見られるのは不愉快だ。実際、ここまでのクズはそうそういないのに……」

(そんなわけがあるものか! 僕と同じように考えている男なんて、他にもいくらでもいるはずだ。家が傾いたら、金持ちの嫁をもらって立て直す――それが一番の近道じゃないか!)

 それでも、僕はリリアを実際に殺したわけではない。
  監禁していたとしても、こうしてリリアは元気に生きているのだから、大した罪にはならないだろう。

 心のどこかで、まだ自分は最悪の窮地には追い込まれない――そう信じていたのだ。
 だが、その予想は完璧に裏切られた。

「レオン・バルネス伯爵。貴族とは民の上に立ち、法と道徳の模範たるべき存在である。
 にもかかわらず、お前はその名と地位をもって婚姻の誓約を汚し、妻を欺き、財を奪い、命までも危うくした。
 その行いは一個人の罪にとどまらず、貴族としての信義、ひいてはこの国の秩序を踏みにじるものだ。よって、民への戒めとし、見せしめの意味をもって、死刑を命ずる!」

 ……耳を疑った。
  死刑? 僕が? そんなことあるか?
 頭の中が真っ白になり、膝から力が抜けた。

 床に崩れ落ちながら、ただ呆然と王の玉座を見上げていた。
 その瞬間、ようやく理解した。
 僕の人生は、終わったのだ。

(でも……これは……あまりにも重すぎる刑じゃないのか?)





しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【完結】元婚約者の次の婚約者は私の妹だそうです。ところでご存知ないでしょうが、妹は貴方の妹でもありますよ。

葉桜鹿乃
恋愛
あらぬ罪を着せられ婚約破棄を言い渡されたジュリア・スカーレット伯爵令嬢は、ある秘密を抱えていた。 それは、元婚約者モーガンが次の婚約者に望んだジュリアの妹マリアが、モーガンの実の妹でもある、という秘密だ。 本当ならば墓まで持っていくつもりだったが、ジュリアを婚約者にとモーガンの親友である第一王子フィリップが望んでくれた事で、ジュリアは真実を突きつける事を決める。 ※エピローグにてひとまず完結ですが、疑問点があがっていた所や、具体的な姉妹に対する差など、サクサク読んでもらうのに削った所を(現在他作を書いているので不定期で)番外編で更新しますので、暫く連載中のままとさせていただきます。よろしくお願いします。 番外編に手が回らないため、一旦完結と致します。 (2021/02/07 02:00) 小説家になろう・カクヨムでも別名義にて連載を始めました。 恋愛及び全体1位ありがとうございます! ※感想の取り扱いについては近況ボードを参照ください。(10/27追記)

夫は家族を捨てたのです。

クロユキ
恋愛
私達家族は幸せだった…夫が出稼ぎに行かなければ…行くのを止めなかった私の後悔……今何処で何をしているのかも生きているのかも分からない…… 夫の帰りを待っ家族の話しです。 誤字脱字があります。更新が不定期ですがよろしくお願いします。

決めるのはあなた方ではない

篠月珪霞
恋愛
王命で決まった婚約者に、暴言を吐かれ続けて10年。 逃れられずに結婚したカメリアに、実はずっと愛していたと言われ。

愛があれば、何をしてもいいとでも?

篠月珪霞
恋愛
「おいで」と優しく差し伸べられた手をとってしまったのが、そもそもの間違いだった。 何故、あのときの私は、それに縋ってしまったのか。 生まれ変わった今、再びあの男と対峙し、後悔と共に苦い思い出が蘇った。 「我が番よ、どうかこの手を取ってほしい」 過去とまったく同じ台詞、まったく同じ、焦がれるような表情。 まるであのときまで遡ったようだと錯覚させられるほどに。

裏切りの先にあるもの

マツユキ
恋愛
侯爵令嬢のセシルには幼い頃に王家が決めた婚約者がいた。 結婚式の日取りも決まり数か月後の挙式を楽しみにしていたセシル。ある日姉の部屋を訪ねると婚約者であるはずの人が姉と口づけをかわしている所に遭遇する。傷つくセシルだったが新たな出会いがセシルを幸せへと導いていく。

前世の旦那様、貴方とだけは結婚しません。

真咲
恋愛
全21話。他サイトでも掲載しています。 一度目の人生、愛した夫には他に想い人がいた。 侯爵令嬢リリア・エンダロインは幼い頃両親同士の取り決めで、幼馴染の公爵家の嫡男であるエスター・カンザスと婚約した。彼は学園時代のクラスメイトに恋をしていたけれど、リリアを優先し、リリアだけを大切にしてくれた。 二度目の人生。 リリアは、再びリリア・エンダロインとして生まれ変わっていた。 「次は、私がエスターを幸せにする」 自分が彼に幸せにしてもらったように。そのために、何がなんでも、エスターとだけは結婚しないと決めた。

半日だけの…。貴方が私を忘れても

アズやっこ
恋愛
貴方が私を忘れても私が貴方の分まで覚えてる。 今の貴方が私を愛していなくても、 騎士ではなくても、 足が動かなくて車椅子生活になっても、 騎士だった貴方の姿を、 優しい貴方を、 私を愛してくれた事を、 例え貴方が記憶を失っても私だけは覚えてる。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ ゆるゆる設定です。  ❈ 男性は記憶がなくなり忘れます。  ❈ 車椅子生活です。

愛のない貴方からの婚約破棄は受け入れますが、その不貞の代償は大きいですよ?

日々埋没。
恋愛
 公爵令嬢アズールサは隣国の男爵令嬢による嘘のイジメ被害告発のせいで、婚約者の王太子から婚約破棄を告げられる。 「どうぞご自由に。私なら傲慢な殿下にも王太子妃の地位にも未練はございませんので」  しかし愛のない政略結婚でこれまで冷遇されてきたアズールサは二つ返事で了承し、晴れて邪魔な婚約者を男爵令嬢に押し付けることに成功する。 「――ああそうそう、殿下が入れ込んでいるそちらの彼女って実は〇〇ですよ? まあ独り言ですが」  嘘つき男爵令嬢に騙された王太子は取り返しのつかない最期を迎えることになり……。    ※この作品は過去に公開したことのある作品に修正を加えたものです。  またこの作品とは別に、他サイトでも本作を元にしたリメイク作を別のペンネー厶で公開していますがそのことをあらかじめご了承ください。

処理中です...