[完結]裏切りの果てに……

青空一夏

文字の大きさ
11 / 12

11

しおりを挟む
 sideリリア


「レオン・バルネス伯爵。貴族とは民の上に立ち、法と道徳の模範たるべき存在である。
 にもかかわらず、お前はその名と地位をもって婚姻の誓約を汚し、妻を欺き、財を奪い、命までも危うくした。
 その行いは一個人の罪にとどまらず、貴族としての信義、ひいてはこの国の秩序を踏みにじるものだ。よって、民への戒めとし、見せしめの意味をもって、死刑を命ずる!」

 そのレオンへの陛下の裁きが告げられた瞬間、広間の空気がわずかにざわめいた。
 高い天井の下、集まった貴族たちは一様に息を呑み、緊張が走る。
 貴族たちは皆、レオンが罪を償うための厳しい処分を受けるものと考えていた。
 だが、実際に“死刑”という言葉が出た瞬間、誰もが驚きを隠せなかった。

 この国で“死刑”の判決が下されることは、ほとんどない。
  国家の秩序そのものを脅かす大逆罪――王家に刃を向け、革命を企てた者。
  あるいは、王侯貴族や高位聖職者の命を奪った者。
  そのいずれかに該当しなければ、たとえ重罪であっても、通常は爵位・財産没収や流刑で済むのが慣例だった。だからこそ、王の口から「死刑」という言葉が告げられた瞬間、広間にいた誰もが息を呑んだ。

  陳腐な結婚詐欺師に下されるには、あまりに重すぎる刑――それは、“見せしめ”の意味を持っているのでしょうけど……。
 私の浮かない顔つきを見て、王太子殿下が小声で私とカイルに囁いた。

「カイルとリリア嬢の気持ちは分かっているよ。父上の顔を立てるため、表向きは死刑という形にする。だが、彼は獄中で死んだことにして、身柄は君たちに引き渡そう。あのエレナという女も、彼の一族も私たち王族はどうなろうと真相を追求しようとは思わない。言っている意味、わかるよね?」

 私とカイルは顔を見合わせ、静かに微笑んだ。
 侍女として後ろに控えているリンも……わずかに口元を歪めたのだった。 



 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼

 ※明日の更新で完結となります。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

婚約者様への逆襲です。

有栖川灯里
恋愛
王太子との婚約を、一方的な断罪と共に破棄された令嬢・アンネリーゼ=フォン=アイゼナッハ。 理由は“聖女を妬んだ悪役”という、ありふれた台本。 だが彼女は涙ひとつ見せずに微笑み、ただ静かに言い残した。 ――「さようなら、婚約者様。二度と戻りませんわ」 すべてを捨て、王宮を去った“悪役令嬢”が辿り着いたのは、沈黙と再生の修道院。 そこで出会ったのは、聖女の奇跡に疑問を抱く神官、情報を操る傭兵、そしてかつて見逃された“真実”。 これは、少女が嘘を暴き、誇りを取り戻し、自らの手で未来を選び取る物語。 断罪は終わりではなく、始まりだった。 “信仰”に支配された王国を、静かに揺るがす――悪役令嬢の逆襲。

『仕方がない』が口癖の婚約者

本見りん
恋愛
───『だって仕方がないだろう。僕は真実の愛を知ってしまったのだから』 突然両親を亡くしたユリアナを、そう言って8年間婚約者だったルードヴィヒは無慈悲に切り捨てた。

裏切りの街 ~すれ違う心~

緑谷めい
恋愛
 エマは裏切られた。付き合って1年になる恋人リュカにだ。ある日、リュカとのデート中、街の裏通りに突然一人置き去りにされたエマ。リュカはエマを囮にした。彼は騎士としての手柄欲しさにエマを利用したのだ。※ 全5話完結予定

【完結済】次こそは愛されるかもしれないと、期待した私が愚かでした。

こゆき
恋愛
リーゼッヒ王国、王太子アレン。 彼の婚約者として、清く正しく生きてきたヴィオラ・ライラック。 皆に祝福されたその婚約は、とてもとても幸せなものだった。 だが、学園にとあるご令嬢が転入してきたことにより、彼女の生活は一変してしまう。 何もしていないのに、『ヴィオラがそのご令嬢をいじめている』とみんなが言うのだ。 どれだけ違うと訴えても、誰も信じてはくれなかった。 絶望と悲しみにくれるヴィオラは、そのまま隣国の王太子──ハイル帝国の王太子、レオへと『同盟の証』という名の厄介払いとして嫁がされてしまう。 聡明な王子としてリーゼッヒ王国でも有名だったレオならば、己の無罪を信じてくれるかと期待したヴィオラだったが──…… ※在り来りなご都合主義設定です ※『悪役令嬢は自分磨きに忙しい!』の合間の息抜き小説です ※つまりは行き当たりばったり ※不定期掲載な上に雰囲気小説です。ご了承ください 4/1 HOT女性向け2位に入りました。ありがとうございます!

ゴースト聖女は今日までです〜お父様お義母さま、そして偽聖女の妹様、さようなら。私は魔神の妻になります〜

嘉神かろ
恋愛
 魔神を封じる一族の娘として幸せに暮していたアリシアの生活は、母が死に、継母が妹を産んだことで一変する。  妹は聖女と呼ばれ、もてはやされる一方で、アリシアは周囲に気付かれないよう、妹の影となって魔神の眷属を屠りつづける。  これから先も続くと思われたこの、妹に功績を譲る生活は、魔神の封印を補強する封魔の神儀をきっかけに思いもよらなかった方へ動き出す。

いつまでも変わらない愛情を与えてもらえるのだと思っていた

奏千歌
恋愛
 [ディエム家の双子姉妹]  どうして、こんな事になってしまったのか。  妻から向けられる愛情を、どうして疎ましいと思ってしまっていたのか。

婚約者に値踏みされ続けた文官、堪忍袋の緒が切れたのでお別れしました。私は、私を尊重してくれる人を大切にします!

ささい
恋愛
王城で文官として働くリディア・フィアモントは、冷たい婚約者に評価されず疲弊していた。三度目の「婚約解消してもいい」の言葉に、ついに決断する。自由を得た彼女は、日々の書類仕事に誇りを取り戻し、誰かに頼られることの喜びを実感する。王城の仕事を支えつつ、自分らしい生活と自立を歩み始める物語。 ざまあは後悔する系( ^^) _旦~~ 小説家になろうにも投稿しております。

真実の愛だった、運命の恋だった。

豆狸
恋愛
だけど不幸で間違っていた。

処理中です...