(完結)婚約破棄されたら弟が恋人になりました

青空一夏

文字の大きさ
7 / 8

6 マックスにやられた(ジョージ視点)

しおりを挟む
「申し訳ありません。なんていうかその……アメリア様が王女だとは思わなかったものですから、父上からは平民の子供と言うように聞いておりましたのでつい……」

「平民の子供であればそのようなことを言ってもいいと、そういうわけだな? アメリアの価値もわからずその人柄を愛することもなく、ただ平民出身と言うことでそのようなふざけた言葉を吐いたのか?」

「えっと、王女殿下だと知っていればそのような失礼な事は決して申し上げませんでした」

「 平民がいるから私たち貴族がこの世に存在することができる。この世に貴族だけであればどうやってこの世界を維持することができるんだ?そのような歪んだ考えの持ち主はアメリアにはふさわしくないだろう。婚約破棄は認めよう。だが慰謝料の件はどういうことだ? 浮気者とはいったいアメリアが何をしたというのだ?」

「それはこのような場所で私以外の男性と踊っていたからです」

「それだけで浮気者と決めつけたのか? このような公の場所でアメリアを責め立てて婚約破棄を突き付けたとは何たる痴れ者。皆の者どう思う?」

「それはもちろん慰謝料はジョージ様こそが払うべきです」
「そうですね、全くその通りです。このような場所で婚約破棄をするなど女性を貶める行為です」

ーー僕はピンチだ。どうしたらいいんだ?

追い詰められた僕はアメリアにすがるような眼差しを向ける。だがアメリアの肩はマックスに守るように抱かれていてその視線は僕を少し見ていなかった。マックスは心底軽蔑したような眼差しを僕に向けニヤリと笑った。

「国王陛下に申し上げます。僕はずっと弟としてアメリア様を守ってきました。しかし、僕のせいでアメリア様は婚約破棄をされました。変装してアメリア様をエスコートし踊った愚かな僕の行動のせいです。このようなくだらない男からでも婚約破棄されたとあってはアメリア様は傷物と呼ばれてしまいます。その責任を取り僕はアメリア様を一生かけてお守りすることを誓います」
マックスは国王陛下に丁寧に頭を下げしっかりとした口調でそう申し上げた。

ーーちょっと待てよ! それってずいぶん計算された言い分じゃないのかよ?

「ところでなんで変装していたのだ? マックスが変装していなければアメリアもこのような誤解をされなかっただろう?」

「そうだよ! なんで変装なんかしたんだよ? 詐欺だろう?」
僕もこの時とばかり疑問をぶつけた。

「実はずっと姉としてではなく1人の女性としてアメリア様をお慕いしておりました。ですがアメリア様には他に婚約者がおり、本日王女殿下に戻られるということは父上から聞いておりましたので、最後の思い出としてアメリア様をエスコートし踊りたかったのです。弟としてではなくほんのいっときだけでもいい、一緒にいたかったので変装しました。今日きっぱりとアメリア様への切ない気持ちを封印するために・・・・・・」
その最大限に美しい顔を切なげに歪め眉尻を落とし、まるで従順なワンコの垂れ下がった耳が頭の上に見えるかのようだ!

ーー嘘だ! こんな性格じゃないだろう? 僕が知っているのは俺様のマックスだぞ! 

「まぁ、そのようなお話であれば封印などする必要はありませんわ。そのままアメリアの婚約者になっていただきましょう。家柄も妥当ですし今までアメリアを守ってきたマックスならば安心ですわ」
王妃殿下は目を細めて満足気に頷いた。


ーーえ? こんな言い分があっさりと通る? イケメンって・・・・・・


「まぁ、なんて素敵! 忍ぶ恋だったなんて……それほどの思いであれば本物じゃありませんか? お似合いじゃありませんか」
「とてもロマンチックですわ。弟として守っていたけれど実は恋い焦がれていたなんてまるで物語のようですわ!」

女性陣を完璧に味方につけ国王陛下には臣下の礼で忠誠を誓い跪き、ウィリアム王子殿下には爽やかに笑いかけてやはり優雅に礼をする。完璧な所作に感嘆の声さえ漏れる。そしてその結果は……

「王女アメリアの婚約者はこのマックス・ハーバート公爵家嫡男とする!」
国王陛下はにこにこと宣言し王妃殿下は涙を流し喜び、ウィリアム王子殿下はマックスと祝いの杯を交わし始めたのだった。

僕は完璧にマックスにしてやられたんだ、そう気がついたがもう今更どうにもならなかった。



今まで融資してもらった額に慰謝料が積み重ねられてその重い負担にディッシュ侯爵家は破産し没落したのだった。
しおりを挟む
感想 42

あなたにおすすめの小説

公爵令嬢は結婚前日に親友を捨てた男を許せない

有川カナデ
恋愛
シェーラ国公爵令嬢であるエルヴィーラは、隣国の親友であるフェリシアナの結婚式にやってきた。だけれどエルヴィーラが見たのは、恋人に捨てられ酷く傷ついた友の姿で。彼女を捨てたという恋人の話を聞き、エルヴィーラの脳裏にある出来事の思い出が浮かぶ。 魅了魔法は、かけた側だけでなくかけられた側にも責任があった。 「お兄様がお義姉様との婚約を破棄しようとしたのでぶっ飛ばそうとしたらそもそもお兄様はお義姉様にべた惚れでした。」に出てくるエルヴィーラのお話。

婚約破棄でみんな幸せ!~嫌われ令嬢の円満婚約解消術~

春野こもも
恋愛
わたくしの名前はエルザ=フォーゲル、16才でございます。 6才の時に初めて顔をあわせた婚約者のレオンハルト殿下に「こんな醜女と結婚するなんて嫌だ! 僕は大きくなったら好きな人と結婚したい!」と言われてしまいました。そんな殿下に憤慨する家族と使用人。 14歳の春、学園に転入してきた男爵令嬢と2人で、人目もはばからず仲良く歩くレオンハルト殿下。再び憤慨するわたくしの愛する家族や使用人の心の安寧のために、エルザは円満な婚約解消を目指します。そのために作成したのは「婚約破棄承諾書」。殿下と男爵令嬢、お二人に愛を育んでいただくためにも、後はレオンハルト殿下の署名さえいただければみんな幸せ婚約破棄が成立します! 前編・後編の全2話です。残酷描写は保険です。 【小説家になろうデイリーランキング1位いただきました――2019/6/17】

悪役令嬢の私、計画通り追放されました ~無能な婚約者と傾国の未来を捨てて、隣国で大商人になります~

希羽
恋愛
​「ええ、喜んで国を去りましょう。――全て、私の計算通りですわ」 ​才色兼備と謳われた公爵令嬢セラフィーナは、卒業パーティーの場で、婚約者である王子から婚約破棄を突きつけられる。聖女を虐げた「悪役令嬢」として、満座の中で断罪される彼女。 ​しかし、その顔に悲壮感はない。むしろ、彼女は内心でほくそ笑んでいた――『計画通り』と。 ​無能な婚約者と、沈みゆく国の未来をとうに見限っていた彼女にとって、自ら悪役の汚名を着て国を追われることこそが、完璧なシナリオだったのだ。 ​莫大な手切れ金を手に、自由都市で商人『セーラ』として第二の人生を歩み始めた彼女。その類まれなる才覚は、やがて大陸の経済を揺るがすほどの渦を巻き起こしていく。 ​一方、有能な彼女を失った祖国は坂道を転がるように没落。愚かな元婚約者たちが、彼女の真価に気づき後悔した時、物語は最高のカタルシスを迎える――。

「婚約破棄だ」と叫ぶ殿下、国の実務は私ですが大丈夫ですか?〜私は冷徹宰相補佐と幸せになります〜

万里戸千波
恋愛
公爵令嬢リリエンは卒業パーティーの最中、突然婚約者のジェラルド王子から婚約破棄を申し渡された

まさか、今更婚約破棄……ですか?

灯倉日鈴(合歓鈴)
恋愛
チャールストン伯爵家はエンバー伯爵家との家業の繋がりから、お互いの子供を結婚させる約束をしていた。 エンバー家の長男ロバートは、許嫁であるチャールストン家の長女オリビアのことがとにかく気に入らなかった。 なので、卒業パーティーの夜、他の女性と一緒にいるところを見せつけ、派手に恥を掻かせて婚約破棄しようと画策したが……!? 色々こじらせた男の結末。 数話で終わる予定です。 ※タイトル変更しました。

安息を求めた婚約破棄

あみにあ
恋愛
とある同窓の晴れ舞台の場で、突然に王子から婚約破棄を言い渡された。 そして新たな婚約者は私の妹。 衝撃的な事実に周りがざわめく中、二人が寄り添う姿を眺めながらに、私は一人小さくほくそ笑んだのだった。 そう全ては計画通り。 これで全てから解放される。 ……けれども事はそう上手くいかなくて。 そんな令嬢のとあるお話です。 ※なろうでも投稿しております。

【完結】華麗に婚約破棄されましょう。~卒業式典の出来事が小さな国の価値観を変えました~

ゆうぎり
恋愛
幼い頃姉の卒業式典で見た婚約破棄。 「かしこまりました」 と綺麗なカーテシーを披露して去って行った女性。 その出来事は私だけではなくこの小さな国の価値観を変えた。 ※ゆるゆる設定です。 ※頭空っぽにして、軽い感じで読み流して下さい。 ※Wヒロイン、オムニバス風

婚約破棄されるまで結婚を待つ必要がありますか?

碧井 汐桜香
恋愛
ある日異世界転生したことに気づいた悪役令嬢ルリア。 大好きな王太子サタリン様との婚約が破棄されるなんて、我慢できません。だって、わたくしの方がサタリン様のことを、ヒロインよりも幸せにして差し上げられますもの!と、息巻く。 結婚を遅める原因となっていた父を脅し……おねだりし、ヒロイン出現前に結婚を終えて仕舞えばいい。 そう思い、実行に移すことに。

処理中です...