何もしない悪役令息になってみた

ゆい

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本編

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オルクス様達は、私の両親の挨拶もあり、早目に入国された。
そして今日挨拶に見えられた。
探査魔法で見るオルクス様は、やっぱり綺麗な海棠色。探査魔法で初めて見たオステオン様は、海棠色より少し紅い色だった。緋色に近いかな?
シリルに聞いたら、2人の瞳の色はピンクに近い紅い色だそうだ。

オルクス様の色を知ってから、探査魔法で色々と試した結果、家族の色も微妙に色がついていたのに気が付いた。
父や兄達、祖父は、白の中に青が混じっていた。
母は紫、祖母は真紅が混じっていたので、瞳の色がその人を表しているのかな?と、なんとなく思った。
父に探査魔法について、詳しく相談したら、『人それぞれ見え方が違うから、正解はわからないけど、リアムは親しいからこそ知りたいと思った結果かもね』と言ってくれた。
そっかぁ、知りたいと強く願った結果か。
でも、オルクス様で一番初めにそのことに気が付いたってことは、つまり……。
いきなり顔を赤くしだした私に、父は、『リアムも大人になったんだね』と、嬉しさと淋しさが入り混じった声音でそう言った。
私も次兄のことが言えないくらいに、鈍チンだったみたい。



そして初っ端からオルクス様は祖母に怒られていた。残念皇子は健在だった。
皇族相手に怒れるのは祖母しかいないから、誰も口を挟めず見守るだけ。
祖母の説教が落ち着いたところで、両親と次兄を紹介した。

「父のロベールと、母のキリル、次兄のエドワードです。」

「オステオン・ルキゥールです。よろしくお願いします。」

「オルクス・ルキゥールです。お初にお目にかかります。」

と、2人は爽やかに挨拶をした。
オステオン様はともかく、オルクス様、ネコ被っているのかな?

家族の紹介が終えたところで、応接室へと案内をしてもらう。
オルクス様は、私の手を取りエスコートをしてくれる。
使用人みんなから微笑ましい視線をもらう。
廊下を歩いている途中、オルクス様が、

「リアムの美しさに目を奪われてしまって、リアムの描いた絵を見損ねたよ。後で案内してもらいたい。いいかい?」

「はい。…覚えていてくださったのですね。」

覚えていてくれたことは、純粋に嬉しかった。

「リアムのことなら、一つたりとて忘れないよ。ああ、しかも、こんなに美しく成長したリアムを連れて帰れないなんて、…あと2年もあるのかぁ。辛いなぁ。」

「ふふっ。オルクス様は変わっていませんね。」

「おや?私かて成長したよ。リアムを立派に守れるくらいには、強くなったよ?」

「そうなんですか?お祖父様の鉄拳を受けてましたけど?」

「ん~。リアムの成長ぶりに驚いてしまったからね。今度はちゃんと躱すよ。」

「楽しみにしていますね。」

「あと、リアムに贈り物を持って来たから、後で渡すね。」

「贈り物?特別な日でもないのに?」

帝国に滞在中の時に、オルクス様は私になんでも買え与えようとした。何とか止めたけど。
それなら誕生日とか、特別な日に特別にもらった方が心に残りやすいから、そうして欲しいとお願いした。
私も贈る楽しみが増えるしって恥ずかしそうに言えば、了承してくれた。
だから、特別な日以外は贈らないし、受け取らないことに決めた。

「リアムに会えたら、私にとっては特別の日になるんだよ。だからもらってくれるかい?」

「オルクス様がそういうなら。…楽しみにしてます。」

「ああ。」

と、嬉しそうな声で返事をしてくれた。



応接室に入室して、オルクス様の隣に座る。先に座ったオルクス様が微動だにしないので、聞いてみる。

「オルクス様?どうされましたか?」

「…リアムが描いた公爵夫妻の絵を鑑賞していたよ。本当に素晴らしいな。本当にそのままの公爵夫妻を絵に閉じ込めたかのような絵だね。」

「あ、ありがとうございます。」

まさかのべた褒めで照れてしまう。……描いてから約10年経っているけど、父母はあまり容姿が変わってないの?そっちの方がすごくない?

「ん?!あの絵、リアムが描いたの?えっ?まさか、目が見えるようになったのかい?!」

オステオン様が騒ぎだす。

「オステオン、落ち着け。リアムが5歳の時に描いた絵だそうだ。素晴らしいと聞いていたが、ここまでとは。」

「リアム、騒いですまない。目が見えるようになったかと思って、嬉しくて興奮してしまったよ。でも本当に素敵な絵だよ。……えっ?5歳?嘘でしょ?!」

「オステオン、落ち着きなさい。本当だよ。私達も描いてもらったからね。」

と、祖母もオステオン様の興奮を抑えようとした。

「でしたら、玄関の間の絵も?」

「はい。あれは描き始めの頃なので、拙いところもあり、恥ずかしいのですが。」

「えっ?あれが拙いなら、皇宮お抱えの画家はみんな廃業だよ。」

「オステオン様、大袈裟です。」

「いや、大袈裟じゃないんだけどな。」

オステオン様にも褒めてもらえて嬉しくなる。

「ルーフェスは公爵似、エドワード殿は夫人似だね。絵の夫人がエドワード殿と言われても、違和感がないくらいに似ていられる。しかし、夫人もエドワード殿も帝国でも滅多に見ないほどお綺麗な方達だから、公爵もフレデリックも虫除けが大変だろうね。」

「…オルクス、どこでそんな話術を学んだの?」

「アムール様。私は外交官にはならないので、話術は学んでいませんよ?あっ、私の中ではリアムが一番綺麗だからね。母君と兄君を褒めてしまったが、怒ったかい?」

「怒りませんよ。家族を褒めてもらえて嬉しいですよ。」

今の次兄は母そっくりと知れたし、家族を褒めて怒るなんてことはしない。

「そうか。良かった。」

「……。(オルクスの奴、相当学んだな!)」

「……。(いつまでもやられっぱなしの小僧では、ありませんよ?)」

視線で火花を散らせながら会話をする祖母とオルクス。
祖父と父はハラハラとして、母は『ふふふ』と笑い、エドワードはリアムから聞いていた人物と違って驚いていた。
オステオンは大笑いをしそうなのを必死に堪えていた。
リアムはそんなみんなの様子には気が付かなかった。

「この度は我が次男の結婚式で、帝国より足を運んでいただきありがとうございます。」

父がオステオン様達にお礼を述べた。

「いえ、こちらこそ父が参列が出来ずに申し訳ございません。親戚でもあるエドワード殿の結婚式ですから、出席したい気持ちがありましたが、お相手が王子殿下でしたので、要らぬ争いを避ける為に私が遣わされました。」

「ええ、承知しております。3年前の王太子殿下の結婚式の際に、そのように言われてました。」

「それに私もリアムのご両親にお会いしたかったです。オルクスだけだと、心配もありましたから。」

「母やリアムから色々と聞いております。手紙と一緒で熱烈な方のようで。本当に読み上げるのも苦労しましたよ。」

「「……えっ!!」公爵も読み上げていたんですか?!」

オルクス様とオステオン様の驚きの声が重なる。

「もちろん。読み上げるのは恥ずかしいですけど、読み終わった後のリアムの悶える姿がまた可愛らしくて。」

と、父。

「本当に恥ずかしいけど、最後の『リアム愛しているよ』の締めくくりで、撃沈するリアムが可愛いよね。」

と、次兄。
もうやめて!本当に恥ずかしい!

「悶えるリアム。……私はそんな可愛いリアムを見逃していたのか!」

見逃してください!恥ずかしいからこの話題やめてぇ!

「オルクス、リアムが手紙を読めないのをわかっていて、そんな手紙を書いていたの?うわぁ、兄として恥ずかしいよ。読み上げる人も可哀想だよ。」

「仕方ないだろ。リアムを思うだけで、筆が進むんだから。私のありのままの気持ちを書いているから、何の心配もない。」

「でも毎週はやり過ぎだよ。ちょっと仕事を増やそうかな?…よし、そうしよう!」

「いや、騎士団の仕事があるから。」

「大丈夫、並行して仕事をするだけだから。カリストも今は大事な時期だし。」

大事な時期ってことは…!!

「!!オステオン様、パパになるんですか?!おめでとうございます!」

カリスト様はオステオン様の伴侶で、この2人も昨年結婚された。
兄様の結婚式でみんながバタバタ動いていたから、帝国までの長旅に誰かに付き添いを頼むには忍びなかった。
参列できない謝罪の手紙を書いてもらい、お祝いの品をみんなで色々決めて送ったのだ。

「ありがとう。カリストもリアムに会いたがっていたから、本当に残念だよ。」

「ルーフェス達もそろそろですか?」

と、オルクス様が聞いてきた。

「「「「「……。」」」」」

父母が黙る。そして私達も黙る。

「ルーフェス達はまだまだ先だな。」

と、祖母が答える。

「どこかお身体が?」

と、オステオン様が心配してくれる。

「いや違うよ。身体は健康そのものだ。ただね、まぁ、色々あってねぇ。」

「色々?」

「まぁ詳しくは本人達から聞いてくれるかな。流石に家族からは、ちょっとね。」

「はぁ、わかりました。」

そこら辺は家族が勝手に話していいことではないから。

「ところで、明後日の歓迎会は、リアムの同伴は大丈夫でしょうか?」

と、オルクス様が父に聞いてきた。

「しっかりと許可が取れたので大丈夫です。リアム、初めての夜会となるから、殿下から離れないようにね。殿下もリアムをよろしくお願いします。」

と、言ってくれた。
許可とは、王宮での魔法許可だった。
魔術師に確認してもらい探査魔法しか使えないことの証明をしてもらい、僕がオルクス様に嫁ぐまでの期間だけ、許可をいただけた。
帝国の皇子殿下に嫁ぐから、時々皇子妃教育で、次兄と王宮に通っていた。
目の見えない私には、シリル他何人かの使用人が付き添いで来てくれた。
探査魔法が使えたら、シリル一人で十分だけど、見えないがために、みんなの手を煩わせてしまっていた。
次兄も王子も大変だろうからと、特別に許可が降りないか掛け合ってくれた。
でも、許可が降りたのはこの数日前。歓迎会に間に合わないかと思っていた。
間に合わなかったら、出席することは叶わなかった。

「リアム、初めての夜会のエスコートはしっかりやるから、任せてくれるかな?」

「はい、よろしくお願いします。」

僕はにっこりと返事をした。



ーーーーーーーーーー

17話の【海棠色かいどういろ】の漢字を間違えていました。申し訳ございません。訂正させていただきました。
花海棠は、楊貴妃をモチーフに美人の代名詞に例えられています。
色を確認されたい方は検索してみてください。

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