ただ、好きなことをしたいだけ

ゆい

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おばちゃん異世界に来ました!

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目が覚めると薄暗く、朝方か夕方か分からなかった。何度か、ロイさんやマリアさん達が来てくれたのはわかった。でも、子供時代からの記憶を夢で見ていたから、『迷惑をかけてごめんなさい』としか言えなかった。

「『汚れつちまつた悲しみに
  今日も小雪の降りかかる
  汚れつちまつた悲しみに
  今日も風さへ吹き過ぎる』」

有名な一文が口から自然と出た。『人間は悲しみを抱え、悲しみにとらわられながらも生きている。あるいは、生きることは悲しみを同伴者にすること。』高校の現代文で、この解釈を教わった時にストンと自分の中に落ちてきた。悲しい時にいつも口ずさんでしまう。

「アオイ、起きたか?」
「ロイさん。」

今はロイさんが看病についてくれていたようだ。

「今は、朝方ですか?夕方ですか?」

「日が昇るまでまだ時間がある。まだみんな寝ているから、もう少し寝てていい。」

今は夜中のようで、ライトの光で、薄暗かったようだ。

「わかりました。ロイさんも部屋に戻って寝てください。ここ何日かは、マリアさんと交代で看病してくれていたでしょ?体休めてください。」

「俺は大丈夫だ。徹夜も慣れているから。」
「でも、」
「さっきのは、故郷のうたか?」

「……はい。続きもあるんですが、この詩は好きで、冒頭だけ覚えたんです。」

「随分と孤独というか、切ない詩だな。」

「わかりますか?孤独感たっぷりの詩なんです。解釈で『生きることは悲しみを同伴者にすること。』ってあるんです。絶望感たっぷりなのに、詠めば、清々しくも感じるんです。」

「……子供に二度と会えない悲しみか。」

「それもありますが、熱が出ていた時に昔の記憶を夢で見ました。私、将来の夢が司書になりたかったんです。司書ってわかりますか?色々な本を管理する人です。」

「あぁ、わかる。」

「でも、大学、一定の学校を出ないと資格がないんです。その学校に進学したかったけど、経済的に無理だったんです。……人生思い通りにならなくても、突発的な出来事が起きても、気持ちを切り替える時に詠みます。悲しみも私の一部で、私を形成するものだと。」

「……アオイは強いね。」

「強くないです。虚勢を張っているだけです。」

「うん、他人の前では、弱味は見せられないからな。」

「はい、だから、ロイさんもちょっとは寝ましょう。目の下の隈がひどいです。」

「俺は本当に大じょ、」
「ロイさんが心配で、私また熱出るかも?…それとも、私の熱が心配なら、一緒に寝ますか?」

布団を捲り、『入る?』のジェスチャーをする。

「~~~っ。部屋に戻って寝る!」

顔を赤くして、部屋を出ていった。



寝起きで頭が働いていないからって、話してしまったことを後悔する。自己肯定感が高いアピールか!なんて1人ツッコミをしてしまう。わかっている。今の感情では、ロイさんに八つ当たりするから、部屋から出て行ってもらいたかった。もう一度寝て、頭を冷やそう。空元気でもいいから、元気になろう。

私は、『空元気』の効能を知っているから。


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