34 / 161
おばちゃん異世界に来ました!
24
しおりを挟む
目が覚めると薄暗く、朝方か夕方か分からなかった。何度か、ロイさんやマリアさん達が来てくれたのはわかった。でも、子供時代からの記憶を夢で見ていたから、『迷惑をかけてごめんなさい』としか言えなかった。
「『汚れつちまつた悲しみに
今日も小雪の降りかかる
汚れつちまつた悲しみに
今日も風さへ吹き過ぎる』」
有名な一文が口から自然と出た。『人間は悲しみを抱え、悲しみにとらわられながらも生きている。あるいは、生きることは悲しみを同伴者にすること。』高校の現代文で、この解釈を教わった時にストンと自分の中に落ちてきた。悲しい時にいつも口ずさんでしまう。
「アオイ、起きたか?」
「ロイさん。」
今はロイさんが看病についてくれていたようだ。
「今は、朝方ですか?夕方ですか?」
「日が昇るまでまだ時間がある。まだみんな寝ているから、もう少し寝てていい。」
今は夜中のようで、ライトの光で、薄暗かったようだ。
「わかりました。ロイさんも部屋に戻って寝てください。ここ何日かは、マリアさんと交代で看病してくれていたでしょ?体休めてください。」
「俺は大丈夫だ。徹夜も慣れているから。」
「でも、」
「さっきのは、故郷の詩か?」
「……はい。続きもあるんですが、この詩は好きで、冒頭だけ覚えたんです。」
「随分と孤独というか、切ない詩だな。」
「わかりますか?孤独感たっぷりの詩なんです。解釈で『生きることは悲しみを同伴者にすること。』ってあるんです。絶望感たっぷりなのに、詠めば、清々しくも感じるんです。」
「……子供に二度と会えない悲しみか。」
「それもありますが、熱が出ていた時に昔の記憶を夢で見ました。私、将来の夢が司書になりたかったんです。司書ってわかりますか?色々な本を管理する人です。」
「あぁ、わかる。」
「でも、大学、一定の学校を出ないと資格がないんです。その学校に進学したかったけど、経済的に無理だったんです。……人生思い通りにならなくても、突発的な出来事が起きても、気持ちを切り替える時に詠みます。悲しみも私の一部で、私を形成するものだと。」
「……アオイは強いね。」
「強くないです。虚勢を張っているだけです。」
「うん、他人の前では、弱味は見せられないからな。」
「はい、だから、ロイさんもちょっとは寝ましょう。目の下の隈がひどいです。」
「俺は本当に大じょ、」
「ロイさんが心配で、私また熱出るかも?…それとも、私の熱が心配なら、一緒に寝ますか?」
布団を捲り、『入る?』のジェスチャーをする。
「~~~っ。部屋に戻って寝る!」
顔を赤くして、部屋を出ていった。
寝起きで頭が働いていないからって、話してしまったことを後悔する。自己肯定感が高いアピールか!なんて1人ツッコミをしてしまう。わかっている。今の感情では、ロイさんに八つ当たりするから、部屋から出て行ってもらいたかった。もう一度寝て、頭を冷やそう。空元気でもいいから、元気になろう。
私は、『空元気』の効能を知っているから。
「『汚れつちまつた悲しみに
今日も小雪の降りかかる
汚れつちまつた悲しみに
今日も風さへ吹き過ぎる』」
有名な一文が口から自然と出た。『人間は悲しみを抱え、悲しみにとらわられながらも生きている。あるいは、生きることは悲しみを同伴者にすること。』高校の現代文で、この解釈を教わった時にストンと自分の中に落ちてきた。悲しい時にいつも口ずさんでしまう。
「アオイ、起きたか?」
「ロイさん。」
今はロイさんが看病についてくれていたようだ。
「今は、朝方ですか?夕方ですか?」
「日が昇るまでまだ時間がある。まだみんな寝ているから、もう少し寝てていい。」
今は夜中のようで、ライトの光で、薄暗かったようだ。
「わかりました。ロイさんも部屋に戻って寝てください。ここ何日かは、マリアさんと交代で看病してくれていたでしょ?体休めてください。」
「俺は大丈夫だ。徹夜も慣れているから。」
「でも、」
「さっきのは、故郷の詩か?」
「……はい。続きもあるんですが、この詩は好きで、冒頭だけ覚えたんです。」
「随分と孤独というか、切ない詩だな。」
「わかりますか?孤独感たっぷりの詩なんです。解釈で『生きることは悲しみを同伴者にすること。』ってあるんです。絶望感たっぷりなのに、詠めば、清々しくも感じるんです。」
「……子供に二度と会えない悲しみか。」
「それもありますが、熱が出ていた時に昔の記憶を夢で見ました。私、将来の夢が司書になりたかったんです。司書ってわかりますか?色々な本を管理する人です。」
「あぁ、わかる。」
「でも、大学、一定の学校を出ないと資格がないんです。その学校に進学したかったけど、経済的に無理だったんです。……人生思い通りにならなくても、突発的な出来事が起きても、気持ちを切り替える時に詠みます。悲しみも私の一部で、私を形成するものだと。」
「……アオイは強いね。」
「強くないです。虚勢を張っているだけです。」
「うん、他人の前では、弱味は見せられないからな。」
「はい、だから、ロイさんもちょっとは寝ましょう。目の下の隈がひどいです。」
「俺は本当に大じょ、」
「ロイさんが心配で、私また熱出るかも?…それとも、私の熱が心配なら、一緒に寝ますか?」
布団を捲り、『入る?』のジェスチャーをする。
「~~~っ。部屋に戻って寝る!」
顔を赤くして、部屋を出ていった。
寝起きで頭が働いていないからって、話してしまったことを後悔する。自己肯定感が高いアピールか!なんて1人ツッコミをしてしまう。わかっている。今の感情では、ロイさんに八つ当たりするから、部屋から出て行ってもらいたかった。もう一度寝て、頭を冷やそう。空元気でもいいから、元気になろう。
私は、『空元気』の効能を知っているから。
83
あなたにおすすめの小説
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話
よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。
「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。
みんながみんな「あの子の方がお似合いだ」というので、婚約の白紙化を提案してみようと思います
下菊みこと
恋愛
ちょっとどころかだいぶ天然の入ったお嬢さんが、なんとか頑張って婚約の白紙化を狙った結果のお話。
御都合主義のハッピーエンドです。
元鞘に戻ります。
ざまぁはうるさい外野に添えるだけ。
小説家になろう様でも投稿しています。
女騎士と文官男子は婚約して10年の月日が流れた
宮野 楓
恋愛
幼馴染のエリック・リウェンとの婚約が家同士に整えられて早10年。 リサは25の誕生日である日に誕生日プレゼントも届かず、婚約に終わりを告げる事決める。 だがエリックはリサの事を……
【完結】僻地の修道院に入りたいので、断罪の場にしれーっと混ざってみました。
櫻野くるみ
恋愛
王太子による独裁で、貴族が息を潜めながら生きているある日。
夜会で王太子が勝手な言いがかりだけで3人の令嬢達に断罪を始めた。
ひっそりと空気になっていたテレサだったが、ふと気付く。
あれ?これって修道院に入れるチャンスなんじゃ?
子爵令嬢のテレサは、神父をしている初恋の相手の元へ行ける絶好の機会だととっさに考え、しれーっと断罪の列に加わり叫んだ。
「わたくしが代表して修道院へ参ります!」
野次馬から急に現れたテレサに、その場の全員が思った。
この娘、誰!?
王太子による恐怖政治の中、地味に生きてきた子爵令嬢のテレサが、初恋の元伯爵令息に会いたい一心で断罪劇に飛び込むお話。
主人公は猫を被っているだけでお転婆です。
完結しました。
小説家になろう様にも投稿しています。
夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。
Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。
そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。
そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。
これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる