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公爵令息ギルバート
リリアーヌ2
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リリアーヌが婚約したのは齢五歳の時だった。
相手は当時十五歳の公爵家跡取り。
筆頭公爵家と呼ばれる程の権力と身分と財力を持ち、王族の親族でもある家柄だ。
リリアーヌ自身も貴族で、伯爵家の令嬢だが、家格としては低くはないけど高くもなく、伯爵家の中の家格順で言えば中堅どころで、まあまあという感じ。
そんなまあまあな中堅どころのリリアーヌが筆頭公爵家の跡取りの婚約者になるのはどう考えてもおかしい。
しかも当時五歳。
同年代ならば、なくはない話だけど、さすがに五歳との婚約は何かあると社交界では噂になった。
まさか、幼女趣味か――なんて噂もたった事もあったけど、ギルバートは年相応に大人な店で遊んでいたのでそんな噂はすぐに立ち消えた。
結局のところ、謎は謎のままだったが、ギルバートがリリアーヌの事を溺愛していたので微笑ましく見守られる事になった。
王族、親族男子一同を除いては――…。
リリアーヌとギルバートの出会いはいたって普通だった。
リリアーヌの十歳上の兄と筆頭公爵家の跡取りであるギルバートは、いわゆる学友で領地も隣同士だったせいもあり、親しく付き合っていた。
でも、家族ぐるみでという訳ではなく、あくまでも個人的にだ。
つまり、個人的に家に招待して、何となく流れでリリアーヌを紹介した。
当時リリアーヌは五歳。
王子様とかお姫様とかに憧れる、普通の五歳児だった。
そんな普通の五歳児の前に現れた、筆頭公爵家の子息であるギルバートはまばゆい輝きを放つ正統派王子様だった。
金髪碧眼、顔だちも整っていて、笑顔が素晴らしく素敵だった。
少なくても当時のリリアーヌにはそう見えた。
実際そうだった。
今もそうだけど、たまに怖い気もする。
つまり、そんな正統派王子様ににこりと微笑まれると、ぽーっとなった。
そして、優しく抱き上げられて、ぎゅっと抱きしめられて、撫でてもらえた。
まあ、何度も言うけど、五歳児。
そして白馬の王子様に憧れる、普通の幼児。
きらきらな笑顔に一目惚れ。
当然だ。
怒涛だったのはその後。
いきなり婚約の運びとなり、上位の存在である公爵からの申し出を断ることなど伯爵家には出来はしないが、戸惑いはする。
でも、リリアーヌは喜んだ。
そして、喜ぶリリアーヌを見て両親もそれならと承諾した。
幼い時から教育した方がいいと言われ、公爵家に娘を嫁に――現段階では出すわけではないけど、公爵家預かりとなり、かわいい盛りの娘と離れ離れになった伯爵はちょっと涙目だった。
ちなみに、さすがにリリアーヌもちょっぴり不安だった。
大好きな王子様と一緒にいられるのはうれしいけど、まだ母親大好きなお年頃。
すぐに帰れる距離だと言っても、寂しくなってもすぐに会える距離ではない。
そこは少し理解していた。
でもそんな不安も娘のいない公爵夫人に娘のように可愛がってもらい、お部屋もお姫様のお部屋みたいだったのでテンションは爆上がり。
隣はギルバートのお部屋で、中扉で繋がっていた。
ギルバートに抱っこされて、屋敷を案内されて、夜に帰宅した公爵様に挨拶をして、日程終了。
公爵様に挨拶したとき、なんだか疲れた様子で頭を撫でられた。そして「無能な父を許してくれ」とか言われたけど、リリアーヌはなんのことか分からなかった。
「ムノウな父とはどういう事ですか?」
分からない事は素直に聞く。
王子様なギルバートは、にっこり笑ってこう言った。
「つまり歓迎するよってことだよ」
なるほどと納得。
ギルバートの言葉が嘘であるという事に疑問も持たず素直に頷く。
そして、二人きりのベッドの上で、ギルバートに婚約者同士のしきたりについて説明されていった。
一つ、一緒に寝る。
一つ、プレゼントされた服を着る。
一つ、一緒にお風呂に入る。
他にも細かく言われたけど、覚えられるわけもなく、とりあえずこの三つを守る事になった。
一番恥ずかしかったのはお風呂だ。
広い浴室で、明るい。
幼くてもそこは女児。
殿方と入るのは恥ずかしい。
でも、これも花嫁教育の一環だと諭されれば、頑張るしかない。
手で優しく丸洗いされ、大事なところも指で丁寧に撫でられ、恥ずかしさで真っ赤になっても我慢した。
ギルバートは楽しそうだったし、優しかったから。
でもそれも数年の事。
さすがに成長し、ギルバートも段々男性として身体が出来てくると恥ずかしさの方が上回った。
幼児の頃ならともかく自我もしっかりしてきて、一人でなんでも出来るようになると、ギルバートに手伝ってもらうのがおかしい事くらいは分かる。
ギルバートが提示した内容が、幼児である自分への愛情であるのだと思っていた。
その辺の事はギルバートも理解を示してくれた。
でもその代わり、一日数回はぎゅっと抱きしめる事を義務付けられた。
リリアーヌはギルバートに抱きしめられるのは好きなので、これには了承した。
それからも公爵邸で過ごしながら、順調にリリアーヌは成長していった。
ただ、なんだか最近時々おかしく感じるときがある。
特に午睡の起きた後。
どこかが変わっている訳ではないのに、なんだか違和感がする。
でもその疑問の答えを見つけることも出来ず過ごしていた。
相手は当時十五歳の公爵家跡取り。
筆頭公爵家と呼ばれる程の権力と身分と財力を持ち、王族の親族でもある家柄だ。
リリアーヌ自身も貴族で、伯爵家の令嬢だが、家格としては低くはないけど高くもなく、伯爵家の中の家格順で言えば中堅どころで、まあまあという感じ。
そんなまあまあな中堅どころのリリアーヌが筆頭公爵家の跡取りの婚約者になるのはどう考えてもおかしい。
しかも当時五歳。
同年代ならば、なくはない話だけど、さすがに五歳との婚約は何かあると社交界では噂になった。
まさか、幼女趣味か――なんて噂もたった事もあったけど、ギルバートは年相応に大人な店で遊んでいたのでそんな噂はすぐに立ち消えた。
結局のところ、謎は謎のままだったが、ギルバートがリリアーヌの事を溺愛していたので微笑ましく見守られる事になった。
王族、親族男子一同を除いては――…。
リリアーヌとギルバートの出会いはいたって普通だった。
リリアーヌの十歳上の兄と筆頭公爵家の跡取りであるギルバートは、いわゆる学友で領地も隣同士だったせいもあり、親しく付き合っていた。
でも、家族ぐるみでという訳ではなく、あくまでも個人的にだ。
つまり、個人的に家に招待して、何となく流れでリリアーヌを紹介した。
当時リリアーヌは五歳。
王子様とかお姫様とかに憧れる、普通の五歳児だった。
そんな普通の五歳児の前に現れた、筆頭公爵家の子息であるギルバートはまばゆい輝きを放つ正統派王子様だった。
金髪碧眼、顔だちも整っていて、笑顔が素晴らしく素敵だった。
少なくても当時のリリアーヌにはそう見えた。
実際そうだった。
今もそうだけど、たまに怖い気もする。
つまり、そんな正統派王子様ににこりと微笑まれると、ぽーっとなった。
そして、優しく抱き上げられて、ぎゅっと抱きしめられて、撫でてもらえた。
まあ、何度も言うけど、五歳児。
そして白馬の王子様に憧れる、普通の幼児。
きらきらな笑顔に一目惚れ。
当然だ。
怒涛だったのはその後。
いきなり婚約の運びとなり、上位の存在である公爵からの申し出を断ることなど伯爵家には出来はしないが、戸惑いはする。
でも、リリアーヌは喜んだ。
そして、喜ぶリリアーヌを見て両親もそれならと承諾した。
幼い時から教育した方がいいと言われ、公爵家に娘を嫁に――現段階では出すわけではないけど、公爵家預かりとなり、かわいい盛りの娘と離れ離れになった伯爵はちょっと涙目だった。
ちなみに、さすがにリリアーヌもちょっぴり不安だった。
大好きな王子様と一緒にいられるのはうれしいけど、まだ母親大好きなお年頃。
すぐに帰れる距離だと言っても、寂しくなってもすぐに会える距離ではない。
そこは少し理解していた。
でもそんな不安も娘のいない公爵夫人に娘のように可愛がってもらい、お部屋もお姫様のお部屋みたいだったのでテンションは爆上がり。
隣はギルバートのお部屋で、中扉で繋がっていた。
ギルバートに抱っこされて、屋敷を案内されて、夜に帰宅した公爵様に挨拶をして、日程終了。
公爵様に挨拶したとき、なんだか疲れた様子で頭を撫でられた。そして「無能な父を許してくれ」とか言われたけど、リリアーヌはなんのことか分からなかった。
「ムノウな父とはどういう事ですか?」
分からない事は素直に聞く。
王子様なギルバートは、にっこり笑ってこう言った。
「つまり歓迎するよってことだよ」
なるほどと納得。
ギルバートの言葉が嘘であるという事に疑問も持たず素直に頷く。
そして、二人きりのベッドの上で、ギルバートに婚約者同士のしきたりについて説明されていった。
一つ、一緒に寝る。
一つ、プレゼントされた服を着る。
一つ、一緒にお風呂に入る。
他にも細かく言われたけど、覚えられるわけもなく、とりあえずこの三つを守る事になった。
一番恥ずかしかったのはお風呂だ。
広い浴室で、明るい。
幼くてもそこは女児。
殿方と入るのは恥ずかしい。
でも、これも花嫁教育の一環だと諭されれば、頑張るしかない。
手で優しく丸洗いされ、大事なところも指で丁寧に撫でられ、恥ずかしさで真っ赤になっても我慢した。
ギルバートは楽しそうだったし、優しかったから。
でもそれも数年の事。
さすがに成長し、ギルバートも段々男性として身体が出来てくると恥ずかしさの方が上回った。
幼児の頃ならともかく自我もしっかりしてきて、一人でなんでも出来るようになると、ギルバートに手伝ってもらうのがおかしい事くらいは分かる。
ギルバートが提示した内容が、幼児である自分への愛情であるのだと思っていた。
その辺の事はギルバートも理解を示してくれた。
でもその代わり、一日数回はぎゅっと抱きしめる事を義務付けられた。
リリアーヌはギルバートに抱きしめられるのは好きなので、これには了承した。
それからも公爵邸で過ごしながら、順調にリリアーヌは成長していった。
ただ、なんだか最近時々おかしく感じるときがある。
特に午睡の起きた後。
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