真紅の殺戮者と魔術学校

蓮月

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第一章

第14話

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ニコレッタさんに、
ディオンの奴に怪我の事が
バレたくないなら服を着替えてこい、
と言われたため、服を着替えてから
ニコレッタさんとヒスティエと共に
魔力車に乗り込む。

「……着いたぞ。」

着いた場所は王城だった。
…最近はよく来るな。

「えっ?えっ??お、お城!?」

ヒスティエは驚きながら
ニコレッタさんの後を追う。

「…ここだ。」

王城の会議室と書かれた扉の前に
着き、ニコレッタさんが止まる。

「レウはここに入れ。ヒスティエは私とお茶でも飲んで待っているから。」

「え?お、お、お茶?」

「…分かりました。」

ニコレッタさんはヒスティエを
連れて去っていった。

ー コンコンコンッ

「…レウ・オールディスです。」

「…入っていいぞ。」

「…失礼します。」

父上の声がしたので
ガチャりと扉を開けて、
部屋の中に入る。

「久しぶりだね、レウ君。」

声の方へ顔を向けると、
そこにはイヴァール国王陛下がいた。

「お久しぶりです、国王陛下。」

「んー?あれ?お前って…あの時の小僧かぁ?」

…この声は。

「…あの時の大使様ですか?」

ガンドと街へ行った時に会った
あの怪しげな大使が俺を指差しながら
父上の向かいの席に座っていた。

「「「えっ?」」」

俺と大使の言葉に驚いた声が上がる。
改めて、部屋にいる人達を見ると、
父上、ユリヤさん、イヴァール国王陛下、
大使、そして大使の側近らしき
あの若葉色の髪色の少女がいた。

「あ。あの時、ローグ様を連れてきて下さった方ですか!」

少女は目を輝かせて俺を見る。

「あの時は本当にありがとうございました!!お礼を言うのが遅れてすみません。この人すぐにどっか行ってしまうので助かりました~。」

そう言って少女は笑顔で隣に座っている
大使の左腕をギュッと抓る。

「いてててて!!?な、何だよ!!ベッツィー!?」

大使が悲鳴を上げる。
それを少女は鼻で笑いながら
冷めた声で言う。

「五月蝿いです、静かにする事も出来ないんですか?」

「それはお前が抓ってるからだろう!?何でこんなに冷てぇの!?俺の側近!!なぁ、ディオン!!お前のユリヤちゃんと替えてくれ!!」

「嫌だ。」

「嫌です。」

父上とユリヤさんが大使の願いを
即お断りした。

「ハッ。だ、そうですよ?」

「皆が俺に冷てぇ…。」

「それは今に始まった事じゃないだろう?」

陛下が笑いながら大使に言った。

「…んで、何であの時の小僧がここに?」

大使はため息を吐いて
チラッと俺を見る。

「彼はレウ・です。」

ユリヤさんがジト目で
大使を見る。

「ん?レウ…オールディス??……って、お前の息子かぁ!?」

大使が俺と父上を見比べて叫ぶ。

「正真正銘、俺の可愛い息子だが何か?」

父上はギロりと大使を睨みながら言う。
ユリヤさんは隣の父上に呆れながら
言葉を続ける。

「そして、彼は隣国のサルザット帝国ではと呼ばれています。」

「何!?あの"死神"だと!!……だから、ここへ?」

「まあ、そういう事だ。婿レウ君座ってくれ。」

陛下がニコニコと俺を促す。
俺はユリヤさんの隣の席に座った。

「…おい、今許し難い当て字があった気がするのだが?」

父上が頬を引くつかせながら
陛下に問いかけた。

「何のことかな?……さて、レウ君。君を此処に呼んだのはね?学校であった事を話して欲しいんだ。」

「…此処でですか?」

俺はチラリと大使の方へ
視線を向けた。
俺の視線を見て父上は大丈夫だと言う。

「あー…レウ。こいつは、大使じゃない。こいつは、ヤード王国現国王のログル王だ。」

俺はピシリと固まる。
…聞き間違いか?この人が国王だって??

「だから、大丈夫だぜ?気にすんな。」

ヒラヒラと俺に手を振る大使…ではなく
ヤード王国現国王のログル王。
ヤード王国といえば、
あの"海の民"が住む国だ。
ヤード王国はアルヴィート王国と
違って海に面しており、
独特の文化を形成しているらしい。
アルヴィート王国とは割と
良好な仲を築いている。

…というか、一国の国王が
他国の街中を1人でブラブラしてて
いいのか?

「こいつはベッツィー。俺の側近だ。」

「改めまして、ベッツィーです。」

ベッツィーは軽く会釈をした。

「俺の事はログルかローグって呼んでいいぞ。気軽にな。」

…いや、無理です。
一国の国王にそんなフレンドリーに…。

すると、陛下も何故か笑顔で言う。

「あ、じゃあ~…私も気軽にお義父さまって呼んで…。」

「却下!!断固拒否だ!!何を言っている、この阿呆!!」
 
陛下が言い切る前に
父上が怒って立ち上がり、
陛下に殴りかかろうとする。
それを読んでいたかの如く、
ユリヤさんが父上を羽交い締めにして
押し止める。

「ディオン様、落ち着きましょう。」

「止めるな、ユリヤ!!俺の可愛い息子に、アイツは…!!」

「………あとで、王妃様に言っておきますから。」

「ュ、ユリヤ!?そ、それだけはッ!!」

突然、陛下が焦り始めた。
反対に父上は落ち着きを取り戻した。

「ああ、じゃあ頼む。」

「ユリヤ……君もちょっと怒ってるの?」

恐る恐る陛下が聞くと、
ユリヤさんは陛下にニッコリと微笑んだ。

「…私の可愛い甥を虐めるなんて、いい度胸ですね?」

ユリヤさんは笑っているが
周りから黒いオーラが出ている。
それを見た陛下は、身体を
擦りながら(悪寒?)俺を見る。

「…レウ君、君の保護者はちょっと異常だよ。」

…ええ、陛下。俺も少しそう思います。

その後、俺は学校で起きた事を
話した。暴発した件は、
運良く誰も当たっていない事に
しておく。

「…なるほど。遂にサイバー攻撃されるとはね。」

陛下は手に顎を置き考える。

「どう考えても、サルザットだろう。」

忌々しげにログル王が口を開いた。
隣のベッツィーも顔を顰めている。

「…ナグル王国もこんな事はしないしな。」

父上とユリヤさんも
ログル王に同意する。

「…ふむ。さて、そろそろ情報提供者に来てもらおうか。」

…情報提供者?一体誰だ??

陛下は何かの装置のボタンを押した。
暫くすると、部屋にノック音が響いた。

ー コンコンコンッ

「…入っていいよー。」

陛下の声に失礼しますと
爽やかな声が聞こえた。
…この声は。

「…うっはぁー、豪華なメンバーですね~。」

そう軽快に入って来たのは…

「…クラト、先輩?」

あの合同授業後の歓迎会で
会った謎の先輩だった。

「ああ、レウ君。久しぶり!やっと、で会えたね~。」

そう言いながら、クラト先輩は
陛下の後ろまで行き、横に立った。

「こほんっ、それでは捕らえたワシリー・ドレイク君の吐いた情報を言います。」

そこで俺は思った。
もしかしたら、ワシリーを
捕らえたのはクラト先輩ではないかと。

「どうやら、ワシリー君はサルザット帝国の者だったらしいです。帝国に頼まれて今回の事件を起こしたと。その頼まれた内容ですが…。」

クラト先輩は一旦言葉を
区切り、俺を見る。

「…レウ・オールディスを殺すか痛めつけろ、と。」

その言葉を聞いた瞬間、
隣から物凄い殺気が放たれた。
横を見ると、ユリヤさんと
父上が鬼の形相になっていた。
今なら、睨んだだけで
人を殺せそうだ。

「…2人とも、怒るのは分かるが殺気を出すな。話が進まん。」

陛下が言うと二人は
やっと殺気を仕舞った。

「…続けますね?どうやら、あちらにはレウ君の正体に関してはバレていないそうです。なのに、レウ君は狙われた。…つまり、レウ君は多分、あのディオン・オールディスのだからという理由で狙われたんでしょう。」

今度はその言葉を聞いて
父上は泣きそうな顔になった。

「…父上、そんな顔をしないで下さい。命を狙われる事よりも、父上にそんな顔をさせてしまう方が俺には辛いです。」

「……レウ。」

「あちらの今回の狙いは、こちらの戦力であるディオン様に精神的ダメージを与えることでしょう。」

そうクラト先輩が言うと、
陛下はじっと父上を見つめた。

「ディオン、あちらの思い通りにいっていいのか?」

「…嫌に決まっている。」

「なら、そんな面を見せるな。いいな?」

「ああ、すまん。」

陛下を真っ直ぐに見つめる
父上の瞳にもう陰りは無かった。

「さて、他には何か教えてくれたかい?」

陛下の言葉にクラト先輩は笑う。

「ふふっ、実はですね?今回の件は結構複雑な思惑が絡み合っているんですよ。」

クラト先輩は心底楽しそうに
説明し始める。

「ワシリー君によれば、依頼を説明する場にサルザット帝国の第一王子がいたらしいんですよ。って、事はですよ?多分、今回の件は第一皇子が王位継承争いの為に起こしたって事です。」

「王位継承争い?」

俺の言葉にクラト先輩は
ニコッと笑って説明してくれる。

「ああ、レウ君は知らないか。サルザット帝国ではね?王位継承権を持つ者は、4人の皇子と3人の皇女。第二皇女は現在行方不明で第四皇子と第三皇女は既に死亡。つまり今、4人で王位に相応しいのは誰か争っているんだ。」

サルザット帝国は7人も皇子や皇女が
いるのか。

「それにアルヴィート王国は今回巻き込まれたと?」

「まあ、そういう事だね。けど、それだけじゃないんだ。実は第一皇子の他に、ヤード王国の者がいたらしい。」

「何?」

ピクリと反応するログル王。

「それは本当か?」

「ええ。を使用しましたから。」

ニッコリと微笑むクラト先輩。
…笑顔で言うことではない気がする。

「お名前までは分かりませんでしたが…ハゲでちっちゃい肥太った豚の様だったと。つまり、サルザット帝国の第一皇子とヤードの者…それなりに金はある者でしょう、それらが手を組んでアルヴィート王国に喧嘩を売ったという事です。」

会議室に沈黙が流れた。
少ししてからログル王は
ニヤリと笑った。

「…あのクソ共の仕業だな。」

「ああ、お前を今困らせている連中か。」

ヤードのその者を
陛下は知っているのか
ログル王の言葉に頷いた。

「ベッツィー、帰ったら掃除をするぞ。」

ログル王の言葉に目を輝かせるベッツィー。

「やっと!あの豚共を掃除出来るのですか!?」

「ああ、この件といいイヴァールから貰った闇取引の件の証拠もあるからな。」

ログル王がアルヴィート王国に
来た理由は証拠を貰うためか。

「イヴァール、掃除が終わったら同盟に渋る者が消える。掃除が終わったらまた来る。」

そう立ち上がりながら、
陛下に言うログル王。

「そうか。楽しみに待っているよ。」

ニコリと笑う陛下。

「おう。…あ、それとレウだったか。」

ログル王は俺を見つめる。
そしてニカッと笑う。

「またな。何か困った事があったら頼れ。」

「ありがとうございます。」

「あ、ベッツィーちゃん!」

クラト先輩がベッツィーに声をかける。
ベッツィーは何故か嫌な顔をする。
そんなベッツィーを見てニヤリと
笑うクラト先輩。

「…、ベッツィーちゃんのこと諦めてないってさ。」

その言葉を聞いた途端、
ベッツィーは顔をボンッと
真っ赤にして走って出てってしまった。
それを見てクスクスと
笑い出すクラト先輩。

「クスクス、あー面白い。」

その場にいた全員が思った。


『こいつに弱味を握られてはいけない。』と。

    
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