真紅の殺戮者と魔術学校

蓮月

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第一章

第15話

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ログル王とベッツィーが
部屋を出ていった。
すぐにでも"掃除"に取り掛かるのだろう。

「さて…と。これから私とレウ君LOVEな2人で話す事があるから、君達2人は帰ってもいいよ。」

陛下の言葉に少しむすっとする
父上とユリヤさん。

「そうですか。では、僕はレウ君と退出致しますね。」

「えッ…。」

グイッと急に腕を引っ張られて
部屋からクラト先輩と共に出た。
部屋の中から俺の名を呼ぶ声と
クラト先輩に対する非難の声が
聞こえた気がするが、気にする事なく
クラト先輩は俺を引っ張って
廊下を歩く。

「クラト先輩…腕を離して頂けますか?」

「えー…レウ君逃げない?」

「え?逃げませんよ…。」

「クスクス。そっかー、じゃあ離してあげるよ。」

クラト先輩は愉快そうに
俺の腕を離した。
…クラト先輩の腕の力は、
細い見た目と反してかなり強かった。
着痩せするタイプなのだろう。

「さて、ちょっと2人で話そっか。…前回は逃げられちゃったもんね?」

…前回というと、歓迎会の時だろう。
明らかに不審な人だと思わせるような
素振りをしたら逃げるに決まっている。

「ん。ここでいっか。」

先程の会議室から少し離れた
部屋に入った。
そこは休憩室だろうか、
簡素な椅子や机だけが置かれた部屋だった。
クラト先輩が座ったのを
確認してから俺も座る。

「さて、改めまして…クラト・ウォティラだよ。アルヴィート王国魔術学校第二学年に在籍してる。そして、イヴァール陛下に私兵…というか密偵として仕えているよ。あ、この事は秘密ね?」

「…そんなにサラっと言ってもいいんですか?」

「ふふっ。レウ君ならいいよ。」

「そうですか…。そういえば、ワシリー・ドレイクを捕らえたのは…。」

「僕…と協力者で捕らえたんだよ。僕の魔銃はスナイパー型だからね。拳銃型と違って遠距離しか魔術を発動出来ないから、協力者がいてくれて助かったよ。」

魔銃は2種類ある。
拳銃型とスナイパー型。
拳銃型が主流で、
スナイパー型はあまり見かけない程珍しい。
スナイパー型の特徴は拳銃型と
違って更に遠距離の計算をしてくれる為、
広範囲に魔術を使える。
しかし、遠距離の計算はかなり
細かなプログラムをしなくてはならず、
近距離の計算ができない。
その為、近距離で魔術は使えないという
短所もある。
またスナイパー型は製作に時間とコストが
かかるため、あまり作られない。
つまり、スナイパー型を所持している
クラト先輩はそれだけの地位がある
家であるという事だ。

「…協力者?とは??」

「ん?ああ、協力者は後々わかるから、後で説明するよ。」

協力者…一体誰だ?

「あ、話変わるけど、レウ君。」

「はい?」

「この前の戦争で起こして倒れたんだって?もう大丈夫かい?」

…なるほど。周りには魔力切れと
言うことになっているのか。

「はい。大丈夫です。…少し無理をしてしまって。」

「終わってからで良かったね?戦闘中になってたら、確実に死んじゃうよ。」

クラト先輩の言うことはもっともだ。

「はい。これからは気をつけます。」

「うん。君の事を心配してくれる人達は沢山いるんだから。」

確かに俺には今、沢山の大切な人達がいる。
その人達を悲しませたくない。

「ねぇ。…君はどこか他人に無関心だよね。クラスメイトで話す人も殆どいないでしょ?」

ルチアくらいか…。

「ま、それはいいんだけど。…それよりも、他人よりに無関心な気がするよ、僕は。」

「…自分自身…ですか?」

クラト先輩は少し真剣な表情をする。

「そう。例えば、とかね?」

「!?」

何でクラト先輩がそんな事を
知っているんだ?

「心配して欲しくない…って思っているんだと思うけど…まあそれ以前に本当に大丈夫かもしれないけどね?それを後から知った人の気持ちを考えてごらん?」

「後から知る…。」

「そう。」

「…………。」

…わからない。
どういう顔で、どう言うのか。

「…わからないって顔をしているね。」

「はい。わからないです…。」

クラト先輩は優しく微笑んだ。

「いいんだよ、わからなくて。これからわかるようになればいいから。そうだね、僕だったら悲しい顔で『どうして隠していたの?…もしかして、僕の事、信じられないの?僕は君にとって大切ではないのかい?』…とか?」

「っ…そんな訳!!」

父上が言うと思ったら思わず
大声を出してしまった。

「落ち着いて。…これで少しはわかったかい?…君の過去についてはディオン様から少し聞いたよ。君は今まで1人だった。だから、そんな心配をする必要がなかった。けれど、君はもう1人じゃないんだ。」

クラト先輩はじっと俺の目を
真っ直ぐ見つめた。

「…………。」

「大切な人が増える…それはとても暖かくて幸せだ。」

…ああ、俺にとっては眩しいくらい
輝いて俺を暖めてくれる。

「君はそれを守ろうと必死だ。まあ、誰だってそうだけど。君は…あの過去を経験したから、余計に必死で…それこそまで守ろうとしている。でもね?君が大切だと思ってる人達だって、君が大切で守ろうとしているんだよ?」

「それは、わかってる…。」

「いいや、わかってないよ。本当の意味では。君の言うわかってるは、上辺だけだよ。」

「…………。」

クラト先輩はそこでふっとため息を
吐いた。

「……うん。僕じゃあ、駄目だな。力不足だ。君の心を動かす力は僕にはないな。まあ、君の近くにはその力を持った人がいるから…いっか。」

「どういう…。」

「そのうちわかるよ、きっと。…君には後悔をして欲しくない。」

クラト先輩は微笑んだ。

「…僕は少し気づくのが遅れて…をしたからね。」

何かポツリとクラト先輩が言った。

「何か言いました?」

「うーん?何にも言ってないよ。…さて、そろそろヒスティエちゃんが待つ部屋に行こうか。」

俺とクラト先輩は部屋を出た。
クラト先輩の言っている事は
理解はできた。
けれど、それだけじゃ駄目らしい。
…相応しい人?…誰でもいいから
俺に教えてくれ…。
わからない…俺にはわからないんだ。

「…レウ君?」

「…ッ。」

「着いたけど。…てぃっ!!」

ー パチン。

「!?」

いきなりクラト先輩にデコピンされた。

「もーっ。考えすぎないの!!ったく、暫く忘れときな。さっきの事は。わかる時にわかる!それまで待つ!!…待てないほど子供じゃないでしょ?君は。」

「…はい。」

…かなり額が痛い。

「よろしい!!では、入るよ。」

ー コンコンコンッ。

「クラトとレウ君だよ。」

「…入れ。」

中に入ると、
ニコレッタさんとヒスティエ、
それと何故かルチアがいた。

「あ、レウ君!!…どうして額が赤いの?」

…クラト先輩、痛みがひかないんですが。

「うーん?僕がレウ君に"強化"魔術使ってデコピンしたから☆」

…魔術使ったのかよ!

「それは赤くなるわね。」

ルチアがジトっとクラト先輩を見る。
その視線に楽しそうに笑うクラト先輩。

「…。あんまり、レウを虐めるとディオンに背後から撃たれるぞ。」

ニコレッタさんは呆れた顔で
クラト先輩に言う。
…ん?今、クラト先輩の事、って。

「ハハッ。その時は麗しのが助けてくれるんでしょ?」

「…自業自得だ。」

「ひっどいなぁー。」

「え、ちょっと待って!!」

ルチアが2人の会話をストップさせる。

「ん?何だい?」

クラト先輩はニコッとルチアを見る。
その顔に引き攣りながらルチアは
疑問を口にする。

「…もしかして、2人は…親子?」

「「そうだけど??」」

見事に2人はハモった。
…ニコレッタさんとクラト先輩が親子?
…正直言ってあまり似てないな。

「あれ?言ってなかったっけ?」

「…言ってないな、そういえば。…一応こいつは私の息子だ。」

「…姓が違うのは何故ですか?」

俺の質問にああとクラト先輩が言う。

「そっか、姓が違うもんね。僕が名乗っているウォティラは父方の姓だよ。動き回るのには、ミュールズだと動きにくくて。」

なるほど。そういう事か。

「あまり容姿は似てないわね…。」

ルチアはじーっと2人を見つめる。

「そうだね。僕は父上の方に似ているかな。…ルチアちゃん、そんなに見つめるほど僕の事気になるの?」

クスクスと笑うクラト先輩。
ルチアは顔を真っ赤にして
拳を握りしめている。

「…勝手に決めつけないでくれます!?」

「照れちゃって、可愛いなぁ。」

「~~~~~ッ!!」

「…ルチア。ラトには口では勝てないぞ。止めとけ。」

父親似だからな…とため息を吐く
ニコレッタさん。
多分、ニコレッタさんも旦那さんには
口では勝てないんだろう。

「あー面白い。」

「こっちは、全然面白くないわ!!」

ルチアの叫びが部屋中に響いた。

ニコレッタさんとクラト先輩が
親子であるという驚きの後、
俺とヒスティエは学校へと戻った。

結局、クラト先輩から協力者に
ついて聞けなかったが…多分ルチアだろう。
ルチアと2人で話している時に
背後にいたのは恐らくクラト先輩。
ルチアについてもすでにクラト先輩は
知っているのだろう。
だから、あの場にルチアがいた。

ルチアはクラト先輩に
「あ、ルチアちゃんはまだ話すことがあるから。残ってね?」
と言われて渋々といった感じで
残ったというか…捕まった?
ニコレッタさんは俺とヒスティエを
学校まで送り届けた後、
どこかに行ってしまった。

「…ふふっ。クラト先輩って面白い人だね。」

さわさわと風が頬を撫でる。
月は雲に隠れていて見えない。
誰もいない暗い道に透き通るような
声が楽しそうに響いた。

「ああ。そうだな。」

コツコツと2つの足音の内の
一つが不意に途切れた。
振り返るとヒスティエは
足を止めて俺を真っ直ぐに見ていた。

「ヒスティエ?」

「…レウ君。…私の話、聞いて貰ってもいいかな?」

雲から月が出てきて
ヒスティエの銀の髪を
キラキラと照らした。
それは風によってサラサラと
流れるように漂う。

「私の……狙われる理由…を。」
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