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時間旅行編
154.ランドロール火山
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ミリオン鉱石。
火山地帯の洞窟で発見された鉱石で、極めて異例な特徴を持っている。
その特徴というのは、加工の仕方によって性質が変化することだ。
熱を加えたり、叩いたり、曲げたり伸ばしたり、加工の仕方には様々な種類がある。
ミリオン鉱石は、加工の種類や頻度、強弱などによって性質が一変する。
例えば、熱を加えた場合、熱の温度によって色と耐熱性が変化する。
他にも様々な変化が見られ、現在発見されているだけで、百を超える変化パターンがある。
噂では、まだまだ増え続けているらしい。
ミリオン鉱石という名前も、秘められた可能性の多さから名付けられたそうだ。
そしてもう一つ、ミリオン鉱石の希少価値を跳ね上げている理由がある。
生成される場所の少なさだ。
詳しい原理は不明。
わかっているのは、火山周辺の地形で、ごく限られた条件でしか生まれないということ。
だから運よく見つけられても、ほんの数グラムしかない場合がほとんどだ。
「つまり、採掘できそうな場所を見つけて、実際に採りに行ってほしいと」
「あー採掘場所の目星はついているわ」
「えっ、本当ですか?」
「ええ、さすがに採掘場所から探してたら、何週間もかかってしまうでしょう? そもそもこの計画は、半年前から動いているわ!」
「そ、そんな前から……」
さすがレミリア様。
兄上のことになると、ビックリするほど行動力があるな。
「だけど場所がわかっているなら、城の誰かにお願いすればいいのでは?」
「最初は私もそうするつもりだったわよ」
「何かあったんですね」
「逆よ、何もなかったの。目星をつけた場所は三箇所。うち二つは国内で、お父様に内緒で兵を動かしたわ。けれどミリオン鉱石は見つけられなかった」
レミリア様は残念そうに語った。
そしれここまで話されると、僕もお願いされた理由がわかってきた。
「最後の一箇所は国外だったんですね」
「そうなのよ。しかも大陸の東の端! とてもじゃないけど、兵を向かわせられないわ」
「だから僕にお願いを」
「そういうことよ。今のあなたなら、国外でも関係ないでしょう? 前にいろんな場所を行ったりしてる話も聞いたし」
「あぁ~ 話しましたね」
領民を集めていた頃の話を、僕は彼女にしている。
世界各地を巡っている僕なら、東の端へ行くのもわけないと考えたらしい。
「ちなみに場所はどこです?」
「地図はあるかしら?」
「ありますよ」
席を立ち、机の引き出しから地図を取り出す。
それを持ってきてレミリア様の前で開いた。
すると、レミリア様は地図を指差す。
「ここよ」
「ランドロール火山……」
大陸の東には、世界最大の火山地帯がある。
二十七もの活火山が並び立っていて、その中で一番大きな火山に、ランドロールという名前がつけられている。
「ランドロールはどの国にも属さない場所よ。生活できる環境じゃないし、遠いから探索もあまり進んでいないわ」
「話には聞いたことがあります。これだけの活火山が並んでいれば、可能性は高いですね」
「情報をくれた王室の学者もそう言っていたわ。というわけで、頼めるかしら?」
「う~ん、少し考えてもいいですか?」
「ええ、もちろんよ」
さて、どうしようかな。
レミリア様のお願いだし、断るつもりは、まぁないのだけれど。
ミリオン鉱石は使い道がたくさんあるし、僕としてもほしい鉱石だ。
手に入れば、きっとギランは喜ぶだろう。
ただし、街はまだ復興途中、他に時間をかけている余裕はない。
探索に行くなら、僕一人で行くことになりそうだ。
「わかりました。何とかしましょう」
「さすがウィリアムね! あなたならそう言ってくれると信じていたわ」
レミリア様は嬉しそうに微笑んだ。
僕は椅子から立ち上がる。
「じゃあ、さっそく出発の準備をします。レミリア様は一度国へ戻られますか?」
「何を言っているのかしら? 私も一緒に行くつもりよ」
「え……えぇ!? じょ、冗談ですよね?」
「私が冗談を言うわけがないでしょう? ユリウス様への贈り物なんだから、私が直接見定めないと気が済まないの」
「で、でも火山ですよ? 危険な場所なんですから」
「そこはほら、あなたがちゃんと守ってくれれば問題ないでしょ?」
「いや……えっと……」
レミリア様は清々しいほど真っ直ぐな目でそう言った。
彼女の目からは自信が伝わってくる。
これはもう、何を言っても無駄だと察した。
「はぁ……ユノに相談しよう」
僕はため息を零しながら呟いた。
その後は、レミリア様をつれてユノのいる研究室へ向かった。
事情を説明している間、ユノはずっと呆れ顔だった。
ただ、断らない理由も理解してくれて、二人分の耐熱ローブを即席で作ってくれた。
次に向かったのはソラのところだ。
全員に細かく説明している時間はないけど、ソラには直接伝えるべきだと思った。
ソラはレミリア様がいることに酷く驚いて、珍しく動揺していた。
それから事情を話し、流されるような形で了承を得た。
準備を終えた僕たちは、屋敷の玄関にいる。
「うっとうしいわね……このローブ」
「文句を言わないでくださいよ。というか、本当に大丈夫なんですか?」
「心配要らないわ! これでも私、体力には自信があるもの」
「じゃあ、その言葉を信じますよ」
「ええ! さぁ行くわよ」
「はい」
そうして、僕らは扉を潜った。
火山地帯の洞窟で発見された鉱石で、極めて異例な特徴を持っている。
その特徴というのは、加工の仕方によって性質が変化することだ。
熱を加えたり、叩いたり、曲げたり伸ばしたり、加工の仕方には様々な種類がある。
ミリオン鉱石は、加工の種類や頻度、強弱などによって性質が一変する。
例えば、熱を加えた場合、熱の温度によって色と耐熱性が変化する。
他にも様々な変化が見られ、現在発見されているだけで、百を超える変化パターンがある。
噂では、まだまだ増え続けているらしい。
ミリオン鉱石という名前も、秘められた可能性の多さから名付けられたそうだ。
そしてもう一つ、ミリオン鉱石の希少価値を跳ね上げている理由がある。
生成される場所の少なさだ。
詳しい原理は不明。
わかっているのは、火山周辺の地形で、ごく限られた条件でしか生まれないということ。
だから運よく見つけられても、ほんの数グラムしかない場合がほとんどだ。
「つまり、採掘できそうな場所を見つけて、実際に採りに行ってほしいと」
「あー採掘場所の目星はついているわ」
「えっ、本当ですか?」
「ええ、さすがに採掘場所から探してたら、何週間もかかってしまうでしょう? そもそもこの計画は、半年前から動いているわ!」
「そ、そんな前から……」
さすがレミリア様。
兄上のことになると、ビックリするほど行動力があるな。
「だけど場所がわかっているなら、城の誰かにお願いすればいいのでは?」
「最初は私もそうするつもりだったわよ」
「何かあったんですね」
「逆よ、何もなかったの。目星をつけた場所は三箇所。うち二つは国内で、お父様に内緒で兵を動かしたわ。けれどミリオン鉱石は見つけられなかった」
レミリア様は残念そうに語った。
そしれここまで話されると、僕もお願いされた理由がわかってきた。
「最後の一箇所は国外だったんですね」
「そうなのよ。しかも大陸の東の端! とてもじゃないけど、兵を向かわせられないわ」
「だから僕にお願いを」
「そういうことよ。今のあなたなら、国外でも関係ないでしょう? 前にいろんな場所を行ったりしてる話も聞いたし」
「あぁ~ 話しましたね」
領民を集めていた頃の話を、僕は彼女にしている。
世界各地を巡っている僕なら、東の端へ行くのもわけないと考えたらしい。
「ちなみに場所はどこです?」
「地図はあるかしら?」
「ありますよ」
席を立ち、机の引き出しから地図を取り出す。
それを持ってきてレミリア様の前で開いた。
すると、レミリア様は地図を指差す。
「ここよ」
「ランドロール火山……」
大陸の東には、世界最大の火山地帯がある。
二十七もの活火山が並び立っていて、その中で一番大きな火山に、ランドロールという名前がつけられている。
「ランドロールはどの国にも属さない場所よ。生活できる環境じゃないし、遠いから探索もあまり進んでいないわ」
「話には聞いたことがあります。これだけの活火山が並んでいれば、可能性は高いですね」
「情報をくれた王室の学者もそう言っていたわ。というわけで、頼めるかしら?」
「う~ん、少し考えてもいいですか?」
「ええ、もちろんよ」
さて、どうしようかな。
レミリア様のお願いだし、断るつもりは、まぁないのだけれど。
ミリオン鉱石は使い道がたくさんあるし、僕としてもほしい鉱石だ。
手に入れば、きっとギランは喜ぶだろう。
ただし、街はまだ復興途中、他に時間をかけている余裕はない。
探索に行くなら、僕一人で行くことになりそうだ。
「わかりました。何とかしましょう」
「さすがウィリアムね! あなたならそう言ってくれると信じていたわ」
レミリア様は嬉しそうに微笑んだ。
僕は椅子から立ち上がる。
「じゃあ、さっそく出発の準備をします。レミリア様は一度国へ戻られますか?」
「何を言っているのかしら? 私も一緒に行くつもりよ」
「え……えぇ!? じょ、冗談ですよね?」
「私が冗談を言うわけがないでしょう? ユリウス様への贈り物なんだから、私が直接見定めないと気が済まないの」
「で、でも火山ですよ? 危険な場所なんですから」
「そこはほら、あなたがちゃんと守ってくれれば問題ないでしょ?」
「いや……えっと……」
レミリア様は清々しいほど真っ直ぐな目でそう言った。
彼女の目からは自信が伝わってくる。
これはもう、何を言っても無駄だと察した。
「はぁ……ユノに相談しよう」
僕はため息を零しながら呟いた。
その後は、レミリア様をつれてユノのいる研究室へ向かった。
事情を説明している間、ユノはずっと呆れ顔だった。
ただ、断らない理由も理解してくれて、二人分の耐熱ローブを即席で作ってくれた。
次に向かったのはソラのところだ。
全員に細かく説明している時間はないけど、ソラには直接伝えるべきだと思った。
ソラはレミリア様がいることに酷く驚いて、珍しく動揺していた。
それから事情を話し、流されるような形で了承を得た。
準備を終えた僕たちは、屋敷の玄関にいる。
「うっとうしいわね……このローブ」
「文句を言わないでくださいよ。というか、本当に大丈夫なんですか?」
「心配要らないわ! これでも私、体力には自信があるもの」
「じゃあ、その言葉を信じますよ」
「ええ! さぁ行くわよ」
「はい」
そうして、僕らは扉を潜った。
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