紡がれゆく葛藤の誘惑ー幼馴染みの娘との混沌の同居生活ー

新しい生活の始まり

その名は蒼井 美音あおい みお。
可憐な容姿を持つ彼女は、小さな体に大きなスーツケースもって玄関先に立っていた。

「蓮太おじさん、これからよろしくお願いしますね！」
美音は元気な声で挨拶し、背伸びして手を差し出してきた。
彼女の笑顔はまるで太陽のように輝いていた。

「こちらこそ、美音。これからよろしく頼むよ。」
蓮太は優しく微笑み、美音の手を握る。
その瞬間、何かが蓮太の心に触れたような気がした。
美音の手は小さくて柔らかく、触れた瞬間に温もりが伝わってきた。

美音は、新しい生活を始めるために蓮太の家に引っ越してきた。
美音は幼馴染で親友の蒼井 涼太あおい りょうたの一人娘だ。
涼太が仕事で海外滞在することになり、その間、蓮太に預けられることになったのである。

「美音、これがお前の部屋だ。気に入ってくれるといいな。何か必要なものがあれば言ってくれてもいいんだぞ？」

美音は興奮気味に部屋を見回し、にっこりと微笑む。
「ありがとう、おじさん。」

彼女は荷物を床に置き、美音はニコニコと微笑み返し、蓮太に近づいてくる。
そして、彼女は思い切り蓮太の胸に飛び込んできた。

「え？！」
蓮太は少し驚きながらも、美音の行動に戸惑っている。

「これからよろしくね！」
美音は蓮太の胸に抱きついたまま、にっこりと微笑んだ。

蓮太はしばらく言葉を失ってしまったが、その後、優しく美音の頭を撫でながら笑った。
「あっ、あぁ…、こっちこそよろしくな、美音。」

美音は笑顔を崩さずに部屋に入り、そして荷物の紐解きを始める。
美音はワクワクとした表情でスーツケースから物を取り出し始めていた。
部屋の中にはすでに美音の可愛らしい荷物が散らばり、新しい生活の幕開けを感じさせている。

美音は小柄で可憐な美少女だが、その行動力と元気な性格はまるで父親譲りだった。
しばらくして、美音は部屋から出てきて、ニコリと笑顔でリビングにいた蓮太に声をかける。

「おじさん、これどう？私の部屋、結構可愛くなったでしょ？」

蓮太は笑顔で頷くと、「すごいね、美音。うん、可愛いよ。」と褒める。
しかし、美音の明るさに紛れて、蓮太の心の奥では何かが蠢く。

夜になり、二人は夕食の準備を共に始めた。
台所で美音が野菜を切る音が響く中、蓮太は落ち着いた様子で調理を進めていた。

「美音、こうやって切ると便利だよ。手を添えて、指で押さえつつ……」

「了解！おじさん、教えてくれてありがとう！」
美音は素直な笑顔で言いながら、蓮太の指導に従いながら野菜を切っていた。
その様子はまるで親子のようだったが、蓮太の心は微妙に落ち着いていなかった。

美音の近くで料理を進める蓮太は、内心で思った。
「やっぱり美夢みゆと似ているな。時折、仕草や表情が、美夢を重ねて見える。」

それに気づくたびに、蓮太の心臓は少しだけ高鳴るような感覚に襲われた。

美夢とは美音の母親の事である。
蓮太と涼太、そして美夢の３人は幼馴染で、子供のころは一緒に遊んだ仲だ。

思春期になると蓮太と涼太ともに美夢を異性として好きになったが、涼太と美夢が良い雰囲気になると蓮太はそっと身を引いた。
その後も、蓮太は美夢への恋心を隠し通し、2人の幼馴染として関係を続けた。

そして、大人になり涼太と美夢は結婚し、子を授かることになる。
しかし、美夢は美音を出産後に危篤状態となり、そのまま亡くなってしまったのであった。

美夢の思い出が、美音という存在を通して蘇り、同時に蓮太は美音に対して特別な感情を抱くようになっていく。

食卓に並ぶ美味しそうな料理を見て、美音は満面の笑顔で「おじさん、すごい！美味しそう！」と言った。
蓮太は優雅な笑みを浮かべ、「まあ、腕に覚えがあるからね」と答えつつ、美音に向けてちょっとしたウインクを送った。
蓮太の料理の腕は長年の独身生活で鍛えられていた。

その夜、蓮太の家には笑い声と和やかな雰囲気が満ちていた。
美夢の存在が脳裏をよぎる度、蓮太は自分をなだめるように微笑んでいた。

数日が経ち、蓮太と美音は次第に慣れていく日々を送っていた。

しかし、彼らの関係はただ同居しているだけでは終わりそうになかった。
蓮太は美夢の面影を感じる度に、美音に対して葛藤が続いていく。
そして、美音はどこか蓮太に寄り添っているようで、近くにいないと寂しそうな表情を見せることがあった。