父親からの手紙

青空太郎

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金魚

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福岡のおじいちゃん(曾祖父)の話を聞かせて欲しいと父親にLINEすると、こんな返信が来た。



私が大学生時代の夏休み、祖父に頼まれ、家に行って庭の池の掃除をした。

コンクリートを張って造られた人工の池で、祖父は朝夕に金魚やコイに餌やりをしていた。池には落ち葉がたまり、苔が生えている。

水抜きの穴に金網を張り、魚たちが逃げないようにして池の水を抜いていたのだが、何かの拍子で網がずれたのだろう、金魚やコイが、水抜きの穴から逃げ出してしまった。

祖父の家は坂の上にあり、穴からつながる20mほど下の排水溝に走って下りていくと、そこにコイたちが跳ねていた。

何匹かは捕獲することができたが、小さな金魚たちは排水溝を伝って流れていったようだ。

祖父のお気に入りの金魚も交じっていたので、申し訳ないことをしたと謝った。

夜、祖父とビールを飲みながら、再び謝ると「いやいや、気にしないでいいよ」という言葉に恐縮した。

毎年、祖父の家に行くと酒の席でその話になり、一緒に笑い合ったが、六年前、祖父も他界してしまった。

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