魔物パーツコレクター ~ツンデレで鈍感系の俺が魔物の力でフォーリンラブ~

のきび

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そうじゃないだろ!

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「ヒスイ、今日からお前は魔物として生きて行け。人を殺してきたお前はもう人間じゃない」
 俺の言葉にヒスイは跪く。

『龍神様の御心のままに』

「なんだ龍神様って」

あるじ様のことでございます』
 先程とは違い、ヒスイはしおらしく俺に従順になる。

『呼び名はなんでも良いが龍神はやめろ俺の名前はカオスだ』

『はっ! では、カオス様とお呼びいたします』
 まだ約束も果たしていないのにここまで従順になる意味は分からないが面倒がなくてちょうど良い。

 俺はヒスイを担ぎ上げると瞬間移動で宿に戻った。

「戻ったぞ」

「旦那様お帰りでガス」
「カオスお帰り」
「です」
『お帰りなさいませカオス様、その魔物はどうなされたのですか?』
『お前の仲間になる、仲良くしてやれ』
 俺はケバ子にそう言うとヒスイを下ろすとメリリとクリリを呼んだ。

「カオス抱いてくれる気になったのね」
「心の準備はできてます」

「……」
 わりと本気のチョップを二人の頭にお見舞いすると二人は頭を抱え涙目で俺を見る。

「野党は退治してきた。朝が来たら自分の国に帰れ」
 アイテムボックスからヒスイの体を取り出すと二人の前に置いた。

「緑風の盗賊団ヒスイ!」
「……本物です」
 二人は何が起きているのか理解できないようで、俺とヒスイの体を交互に見る。

「それと、お前らの両親と兄それと執事も生きてたぞ」

「本当に!?」
 メリリは今にも走り出して国に帰って確認しそうな勢いで前のめりで俺に攻めよる。

「お前達に嘘をついてどうする」
 俺の言葉に二人は腰砕けになり抱き合い涙を流す。

「俺はちょっとこいつをギルドに登録してくるから」
 コボルトのヒスイを親指で差し部屋を出ようとすると二人が俺の袖をつかむ。

「待って、カオス……。本当にありがとう」
「ありがとうです」

「気にするな、それと俺は馬車じゃないからお前らの国までは送らんからな自分で帰れよ」

「うん、ありがとう」
「ありがとうです」
 二人は目か流れ落ちる涙を拭きながら何度も何度も俺にお礼を言う。

『ヒスイ来い』
『はっ!カオス様』
 ケバ子とは違った固い返事に少し戸惑いながらも俺たちはギルドへ向かった。

 俺が入ると”ヒッ”と言う声が奥から聞こえた。

「ギルド長いるか! 居留守使ったら分かってるよな!?」と大きな声で呼ぶと受付の中がドタバタと騒がしくなり顔がボコボコのギルド長が作り笑顔で俺の前に現れた。

「カオスさん、いいえカオス様なにかご用でしょうか」
 ギルド長は俺の顔を見ず頭を下げて用件を聞く。

「このコボルトの登録に来た」

「こ、コボルトですか? すみません疑う訳じゃないんですが本当に言うことを聞くんですか?」

「どういう意味だ?」

「い、いいえ、コボルトは絶対に人になつかないもので」
 ギルド長の話だと過去何人もコボルトを飼い慣らそうとしたのだが、みな食い殺されて死んでしまったのだと言う。

「こいつは完全に俺のコントロール下にある。問題ない」

「カオス様、申し訳ないのですがゴブリンを登録したときと同じようにコントロールしてもらえますか?」

「ちっ、面倒くさいな」
 ギルド長に対しての怒りはまだ収まっていないので俺はあえて苛立ちを見せる。

「ヒッ! すみません、すみません、でも規約ですから、お願いします」
 今にも泣きそうなギルド長を見て、これ以上駄々をこねるのは年齢認証に腹をたてる人たちと同じだなと思い直し、俺はコボルトをコントロールして見せた。

「お手」
「ワンッ!」

「お座り」
「ワンッ!」

「お巡り」
「ワンッ!」
 まあ人間の言葉が分かるから普通に言葉を言えばその通りにヒスイは動いてくれる。

「ちんちん」
「きゅ~ん」
 ヒスイは艶っぽい声をあげると手で胸と股を隠す。そのポーズにギルド内にどっと笑いが溢れる。

『なんのつもりだ?』

『カオス様、夜伽でしたら元の体でお相手したいのですが』
 お前もケバ子と同じかよ! そっちのちんちんじゃねぇよ!
 ヒスイの頭をバシリと叩くと周りからは拍手喝采が起こり賛美の言葉が寄せられる。

「すごい、コボルトにボケ突っ込みをやらせるなんて」
「やつは天才か!?」
「あのギルド長が様付けだぜ、ただ者じゃないだろうな」
 などなど。

 誉められるのは嬉しいが、これは別に狙ったボケじゃない。いやボケですらないガチだ。

「これほどなら良いでしょう」
 そう言うとギルド長はケバ子と同じタグを一つ受付の台に置く。
 俺はそれを受けとるとヒスイの首にかけてやった。

『ありがとうございますカオス様、一生大事にします』
 何をいってるんだこいつは本当に残虐非道の盗賊
ヒスイなのか。まるでただの少女じゃないか。

 俺は恋愛脳ばかりの魔物達に辟易しながらヒスイと一緒に宿屋へと歩いて戻った。
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