8 / 41
ぼっちは乗り切る
しおりを挟む
高校に入って俺の顔を見た人は先生以外誰もいなかった。
それもそのはずで、高校ではいかなる時も俺は常に周囲を警戒し、誰もいない・見ていないことをきちんと確認してから髪をかきあげ束ねるようにしていたので見られるはずがない。
周りの人からは完全に変人認定されるだろうし、なんでそんなことしてるんだって思われるに違いない。
しかし俺だって好きでしているわけではないし、理由がなきゃわざわざこんなことしない。
こうして入学してから約4ヶ月間やってきたのに、だ。
こんな感じで顔を見られる…… いや、俺から見せてしまうなんて、もう何というか自分が情けない。
しかし自分を責めるよりもまず目の前で固まっている愛華さんをどうにかしないといけないな。
とりあえず俺は今後本当に何かない限り絶対に顔を見せないようにしようと改めて心に決め、話しかける。
「あのー、変な顔してますよ?」
「……え? あ、え? 今なんて言った⁈」
「だから、ほら、変な顔してますよ」
俺は愛華さんの顔を指差してもう一度言うと顔を真っ赤にして怒鳴ってきた。
「ちょっと! 変な顔って何よ! これでもみんなから可愛いって言われてるんですけど!」
とりあえず愛華さんが元に戻ってくれたのでよかった。
それと先程までは髪の毛ではっきりと愛華さんの顔が見えていなかったが、今は視界を遮るものがないのでよく見える。
俺は改めてちゃんと見てみると……
「確かに可愛いな」
自然とそんな言葉が口から出ていた。
肩のところで伸びたサラサラで癖のないストレートの黒髪に、吸い込まれるように見入ってしまうほど黒く輝く瞳を細く長いまつ毛がよりはっきりと目立たせている。また肌は白く透き通っており、整った鼻に、綺麗な形の唇。その容姿には可愛いというよりかは美しいという言葉の方が合っていると思う。
だが時折見せる笑顔は咲と似ていて、少し幼さを残しているようにも感じられ、とても可愛らしいのだ。
俺がよく観察していると愛華さんは何やらブツブツ言っていたが、 ふと我に返ったようで慌てたように言葉を発してきた。
「じょ、冗談で言ったのよ! それよりそんなに見られると恥ずかしいでしょ!」
「ああ、ごめん。でも本当に可愛いぞ?」
「やめて! もうその話終わり!」
そう言って後ろを向いてしまったので、俺はその話題をやめて水道の近くにある俺の定位置に移動し、そこに座る。
すると足音を聞いて俺が移動したのが分かったのだろう、愛華さんもこっちに来て隣に座った。
「………………」
「……俺の顔に何か付いてるか?」
座ってからというものずっと顔だけを見てくるので気になってしょうがない。
「あ、ごめんごめん! 何も付いてないよ、大丈夫」
「そんなに見られると恥ずかしいでしょ」
「それ私の! もうやめてよ!」
愛華さんの真似をすると顔を赤くして肩を叩いてきたのでこれは使えるなと今後何かあった時の対策として頭に入れておく。
「ねぇ、なんで普段は今みたいに髪の毛を縛ったりしないで下ろしたままなの?」
「さぁ何でだろうな。あまり人と関わるのが好きじゃないんだ。こうしてたら自分から近づこうと思う奴はいないだろ? 愛華さんを除いて」
俺はヘアゴムを取って髪をいつものように下ろして言う。
「私は変な人でいいですよーだ。でも徹くんいつも髪を縛ってたり、もっと短くしたら高校生活もっと楽しくなると思うんだけどなー。すっごくモテるだろうし……」
最後の方はボソボソ言っていて聞き取れなかった。
「俺は今のままで十分だ。それに今人と関わるのが好きじゃないって言っただろ? 極力避けたいんだ」
これは嘘ではなく本心だ。俺は今のところ現状に満足しているし、これで何かに放課後の時間を取られれば咲の面倒を見れなくなる。
「本人が言うならそれでいっか! でも私とはこうして関わってるけどいいの?」
「それは俺も予想外だったんだよ。助けてくれたことは感謝してるけど愛華さんの謎の圧力によってこうして知り合いになってしまった」
「何それ⁈ 私は圧力なんかかけてないよ! かけてないでしょ? ねぇ!」
ほら、今ものすごい圧力かかってるよ。
「そうですね、知り合いになれて嬉しいですよ」
「棒読みすぎて全然嬉しくないよ」
そう言うわりには口角が上がってるように見えるが気のせいだろうか。
俺と愛華さんは残りのサボりの時間をこんな感じで過ごしたが、愛華さんは終始ニコニコと笑顔であった。
それもそのはずで、高校ではいかなる時も俺は常に周囲を警戒し、誰もいない・見ていないことをきちんと確認してから髪をかきあげ束ねるようにしていたので見られるはずがない。
周りの人からは完全に変人認定されるだろうし、なんでそんなことしてるんだって思われるに違いない。
しかし俺だって好きでしているわけではないし、理由がなきゃわざわざこんなことしない。
こうして入学してから約4ヶ月間やってきたのに、だ。
こんな感じで顔を見られる…… いや、俺から見せてしまうなんて、もう何というか自分が情けない。
しかし自分を責めるよりもまず目の前で固まっている愛華さんをどうにかしないといけないな。
とりあえず俺は今後本当に何かない限り絶対に顔を見せないようにしようと改めて心に決め、話しかける。
「あのー、変な顔してますよ?」
「……え? あ、え? 今なんて言った⁈」
「だから、ほら、変な顔してますよ」
俺は愛華さんの顔を指差してもう一度言うと顔を真っ赤にして怒鳴ってきた。
「ちょっと! 変な顔って何よ! これでもみんなから可愛いって言われてるんですけど!」
とりあえず愛華さんが元に戻ってくれたのでよかった。
それと先程までは髪の毛ではっきりと愛華さんの顔が見えていなかったが、今は視界を遮るものがないのでよく見える。
俺は改めてちゃんと見てみると……
「確かに可愛いな」
自然とそんな言葉が口から出ていた。
肩のところで伸びたサラサラで癖のないストレートの黒髪に、吸い込まれるように見入ってしまうほど黒く輝く瞳を細く長いまつ毛がよりはっきりと目立たせている。また肌は白く透き通っており、整った鼻に、綺麗な形の唇。その容姿には可愛いというよりかは美しいという言葉の方が合っていると思う。
だが時折見せる笑顔は咲と似ていて、少し幼さを残しているようにも感じられ、とても可愛らしいのだ。
俺がよく観察していると愛華さんは何やらブツブツ言っていたが、 ふと我に返ったようで慌てたように言葉を発してきた。
「じょ、冗談で言ったのよ! それよりそんなに見られると恥ずかしいでしょ!」
「ああ、ごめん。でも本当に可愛いぞ?」
「やめて! もうその話終わり!」
そう言って後ろを向いてしまったので、俺はその話題をやめて水道の近くにある俺の定位置に移動し、そこに座る。
すると足音を聞いて俺が移動したのが分かったのだろう、愛華さんもこっちに来て隣に座った。
「………………」
「……俺の顔に何か付いてるか?」
座ってからというものずっと顔だけを見てくるので気になってしょうがない。
「あ、ごめんごめん! 何も付いてないよ、大丈夫」
「そんなに見られると恥ずかしいでしょ」
「それ私の! もうやめてよ!」
愛華さんの真似をすると顔を赤くして肩を叩いてきたのでこれは使えるなと今後何かあった時の対策として頭に入れておく。
「ねぇ、なんで普段は今みたいに髪の毛を縛ったりしないで下ろしたままなの?」
「さぁ何でだろうな。あまり人と関わるのが好きじゃないんだ。こうしてたら自分から近づこうと思う奴はいないだろ? 愛華さんを除いて」
俺はヘアゴムを取って髪をいつものように下ろして言う。
「私は変な人でいいですよーだ。でも徹くんいつも髪を縛ってたり、もっと短くしたら高校生活もっと楽しくなると思うんだけどなー。すっごくモテるだろうし……」
最後の方はボソボソ言っていて聞き取れなかった。
「俺は今のままで十分だ。それに今人と関わるのが好きじゃないって言っただろ? 極力避けたいんだ」
これは嘘ではなく本心だ。俺は今のところ現状に満足しているし、これで何かに放課後の時間を取られれば咲の面倒を見れなくなる。
「本人が言うならそれでいっか! でも私とはこうして関わってるけどいいの?」
「それは俺も予想外だったんだよ。助けてくれたことは感謝してるけど愛華さんの謎の圧力によってこうして知り合いになってしまった」
「何それ⁈ 私は圧力なんかかけてないよ! かけてないでしょ? ねぇ!」
ほら、今ものすごい圧力かかってるよ。
「そうですね、知り合いになれて嬉しいですよ」
「棒読みすぎて全然嬉しくないよ」
そう言うわりには口角が上がってるように見えるが気のせいだろうか。
俺と愛華さんは残りのサボりの時間をこんな感じで過ごしたが、愛華さんは終始ニコニコと笑顔であった。
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
バイト先の先輩ギャルが実はクラスメイトで、しかも推しが一緒だった件
沢田美
恋愛
「きょ、今日からお世話になります。有馬蓮です……!」
高校二年の有馬蓮は、人生初のアルバイトで緊張しっぱなし。
そんな彼の前に現れたのは、銀髪ピアスのギャル系先輩――白瀬紗良だった。
見た目は派手だけど、話してみるとアニメもゲームも好きな“同類”。
意外な共通点から意気投合する二人。
だけどその日の帰り際、店長から知らされたのは――
> 「白瀬さん、今日で最後のシフトなんだよね」
一期一会の出会い。もう会えないと思っていた。
……翌日、学校で再会するまでは。
実は同じクラスの“白瀬さん”だった――!?
オタクな少年とギャルな少女の、距離ゼロから始まる青春ラブコメ。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる