幼い妹をもつぼっち、実は世界一。

雀の涙

文字の大きさ
1 / 41

ぼっちの朝

しおりを挟む
「おにーたーん! あさだよー!」

  俺、東野徹ひがしのとおるの一日は可愛い妹の目覚ましから始まる。

「おはよう咲。今日も元気いっぱいだな」

  東野咲ひがしのさき、俺の妹だ。

「うん! おにーたんはげんきー?」

 咲は首を傾けてニコニコしながら尋ねてくる。この可愛い姿に毎日元気をもらっている。

「ああ、元気だよ。それじゃあ朝ご飯にしよう」

「はーい!」

 片手を真っ直ぐピーンと伸ばして返事をする。いい子だ。

 俺はキッチンに向かい、パンを二枚トースターにセットする。そしてパンを焼いている間にコンロにフライパンを置き、火をつける。フライパンが温まったところで油をひき卵を二つ落とし、目玉焼きを作る。その後ウインナーを四本焼く。
 お皿に目玉焼きとウインナーを二本を乗せ、そこにちぎったレタスとプチトマトを添える。
 チーンというパンの焼き上がりを知らせるトースターの音が聞こえたところで二枚あるうちの一枚はパンの耳を切り落とし、バターを塗った後イチゴジャムを塗ってお皿に乗せる。

「咲待たせたな。朝ごはんができたぞ」

 ニコニコしながら椅子に座って待ってくれていた咲の目の前に二つのお皿を置き食べ始める。

「「いただきます!」」

「おにーたん、きょうもおいちいね!」

 咲は口をパンパンにしてもぐもぐしながら言う。

 こんな普通のご飯を毎日こうして美味しいと言ってくれるのはすごく嬉しい。

「そうだな。美味しいね」

 自然と俺も笑顔になる。

 俺の家族は目の前にいる咲だけだ。俺は今高校一年、咲は保育園二年目。

 両親は俺が中学生二年の時に交通事故で死んでしまい、一歳半の咲と俺だけになってしまった。それから二年何とか頑張って生活してきた。お金は両親の保険金やら遺産があるので問題はなかった。
 しかし咲には寂しい思いをさせてしまっているので出来る限りのことはしてあげたいと思っている。

「咲そろそろお着替えの時間だけど、食べ終わったか?」

「あともーちょっとだよー!」

 咲はお皿に残ったプチトマトを口に入れ、一生懸命もぐもぐしている。

「たべたよー!」

「じゃあごちそうさまでしたしようか」

「「ごちそうさまでした!」」

 俺は食器をキッチンのシンクに置き、急いで洗う。

「咲ー! 歯磨きと顔洗ったらお着替えだからなー」

「はーい!」

 咲は元気な返事をして洗面所へと駆けていった。
 最近咲は一人で歯磨き、顔洗い、着替えをできるようになってきたので、任せてしまっている。

 食器も洗い終わり、俺も洗面所へ向かうと咲がちょうど顔を洗い終わったところだった。

「おにーたんもはやくおきがえするんだよー!」

「わかったよ」

 咲は俺よりも先に顔洗いまで終えたからか満足そうな顔をして着替えに行った。
 俺は歯磨きと顔洗いをさっさと済ませ制服に着替えた。咲の方を見ると、どうやら上着のボタンを閉めるのに苦戦しているようだった。

「んー! んー! もーぜんぜんできないよー」

 時間もないので閉めてあげる。

「ほらできたぞ」

「さきもほんとならできるもん!」

 ほっぺを膨らませてむーっとしてる咲に保育園の帽子を被せて玄関を出る。
 咲の通う保育園と俺の通う高校は幸い家から近いのでいつも歩きで行っている。
 咲と手を繋いで保育園へと向かう。

「さきのおにーたんはせっかいいちー! さきのおにーたんはせっかいいちー!」

 毎朝保育園に向かう時に咲はこのように変な歌を歌っている。

「つよくてーやさしくてーかっこいいのー! せっかいいちーのおーにいーたん!」

 何度お願いしてもやめようとはしないので今では好きに歌わせている。
 すれ違う人がいつも微笑ましそうに見ているが、俺はものすごく恥ずかしい。

 それからちょっとしてその歌が歌い終わる頃、保育園に到着した。

「じゃあ咲、今日もいい子にしてるんだぞ! 先生の言うことはちゃんと聞いてな」

「はーい! さきはいつもいいこだもーん!」

 そう言って駆け足で室内へと入って行く。

「おはようございます東野さん! 今日の帰りはいつも通りですか?」

 挨拶してくれたのはサラサラした長い髪を後ろに束ねていて、ぱっちり二重の、モデルさんと言われたら何の疑問もなく納得するほど美人の高山詩織たかやましおり先生。年は二十代前半だろうか、周りのパパさんからも大人気だ。

「おはようございます先生。はい、今日は特に何もないので」

「わかりました! それでは咲ちゃんお預かりしますね!」

「よろしくお願いします」

 二言交わして保育園を後にし、俺は少し駆け足で学校へと向かう。遅刻だけは避けたいのだ。
 俺は何とか間に合い、駆け込んだのは校門が閉まる寸前だった。これはいつものことなので周りの生徒のように安堵の表情を浮かべることなく下駄箱で靴から上履きに履き替えて教室へ向かう。

 教室のドアを開けるとクラスメイトはみんな席についてホームルームが始まるのを待っていた。毎度遅刻すれすれの俺からすればこの光景を見ても焦ることはない。

 ゆっくりと窓際の一番後ろの席に歩いていき荷物を机の横にかけて、席に着く。

 するとタイミングよく先生が教室に入ってきた。

「そんじゃあホームルーム始めるぞー」

 今日もホームルームを合図に俺のぼっちの時間が始まるのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

バイト先の先輩ギャルが実はクラスメイトで、しかも推しが一緒だった件

沢田美
恋愛
「きょ、今日からお世話になります。有馬蓮です……!」 高校二年の有馬蓮は、人生初のアルバイトで緊張しっぱなし。 そんな彼の前に現れたのは、銀髪ピアスのギャル系先輩――白瀬紗良だった。 見た目は派手だけど、話してみるとアニメもゲームも好きな“同類”。 意外な共通点から意気投合する二人。 だけどその日の帰り際、店長から知らされたのは―― > 「白瀬さん、今日で最後のシフトなんだよね」 一期一会の出会い。もう会えないと思っていた。 ……翌日、学校で再会するまでは。 実は同じクラスの“白瀬さん”だった――!? オタクな少年とギャルな少女の、距離ゼロから始まる青春ラブコメ。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

処理中です...