4 / 95
一章
一章ノ壱『人狼のロウ』3
しおりを挟むその日は俺と父の役目の日で、ムロが初めて一緒にそれに参加する日でもあった。
森の奥に定期的に湧いて現れる魔の物、それを退治するのは長年俺の先祖が担う役目である。
元々は平地でそれを担っていたが、キリンが森を去ったせいで俺の先祖が役目を受けた。そして、俺の先祖が森の魔の物を退治し続けた結果、平地には魔の物が現れなくなり、森の一部へとそれらが湧く地点を発見し、その周期も長年の役目で分かるようになった。
「私たちの一族はメイロウの加護を受けていて、それを持って魔の物を退治できる。集中すれば手に自分の加護が見えるはずだ」
父がそう言うと、ムロは父と同じように自身の手を見つめて集中する。
「……どうかな、できてるのかな」
ムロがそう聞くが、俺の眼にはムロの手には何も見えない。父の手に光る加護と自身の手に光る加護は見えるが、ムロの手にはそれが一切見えない。
「やはり、ムロには加護が無いのかもしれないな」
「父さん、決めつけるにはまだ早いだろ」
だが俺は、初めて父の役目について行く日にはちゃんと加護が出せた、それも父よりも輝く加護をだ。加護はどうやるのか、そう聞かれても説明ができないほど、簡単に出せてしまえた。
「理屈では説明できない以上、今できなければこれから先できる様になる可能性は低いだろう。加護が無い以上役目はムロを危険にさらすだけだ」
父の言葉は俺も納得のいくものだ、だが、ムロの悲しげな表情を見た俺は、もう少しだけ時間をあげて見てもいい、そう父に言ってしまう。
だが、結局ムロは加護を使えないまま、俺と父で役目は行うことになり、悲しい表情のムロを残し森の奥へと足を進める。
魔の物は、見た目は蜘蛛の姿をしていて、数体が群れて出てくる。
影の蜘蛛の状態の奴らは簡単に退治できるが、奴らはある条件で強くなる傾向にある。
「ロウ、鹿の死骸だ――」
奴らは動物を襲い、その顔を奪って鳴き声を出すようになる。そうなると、体が硬くなり爪が鋭くなるため注意が必要になる。
「はぁぁあ!」
蹴り飛ばした魔の物は、鹿の鳴き声を上げながら霧散していく。
「やはりロウはメイロウの加護が強いな、私の加護では鹿頭には何度も苦労させられた」
笑みを浮かべる父が言う通り、鹿を喰らった魔の物に、父が苦戦しているところを何度か見た覚えがある。
「でも、父さんは人の顔の魔の物を退治したことがあるんだろ?俺はまだ会ったことがないけど」
魔の物は、知能の高い動物になると途端にその体の強化が異常に上がる。
「私も死ぬかもと思った、どうにか朝日の入る場所へ誘導し弱らせて退治したが、この頬の傷はその時の物で、加護持ちの治癒力を持ってしても治りきらない傷だ、お前も気をつけろ」
「あぁ分かっているよ」
この時にはもう魔の物との戦いは、俺は死ぬまでの役目であると考えていた。一生をそうして生きることに不満はないが、ただ、人間の顔色を窺って配慮してというのには不満があった。
0
あなたにおすすめの小説
レオナルド先生創世記
ポルネス・フリューゲル
ファンタジー
ビッグバーンを皮切りに宇宙が誕生し、やがて展開された宇宙の背景をユーモアたっぷりにとてもこっけいなジャック・レオナルド氏のサプライズの幕開け、幕開け!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
マンションのオーナーは十六歳の不思議な青年 〜マンションの特別室は何故か女性で埋まってしまう〜
美鈴
ファンタジー
ホットランキング上位ありがとうございます😊
ストーカーの被害に遭うアイドル歌羽根天音。彼女は警察に真っ先に相談する事にしたのだが…結果を言えば解決には至っていない。途方にくれる天音。久しぶりに会った親友の美樹子に「──なんかあった?」と、聞かれてその件を伝える事に…。すると彼女から「なんでもっと早く言ってくれなかったの!?」と、そんな言葉とともに彼女は誰かに電話を掛け始め…
※カクヨム様にも投稿しています
※イラストはAIイラストを使用しています
神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~
あきさけ
ファンタジー
貧乏な田舎村を追い出された少年〝シント〟は森の中をあてどなくさまよい一本の新木を発見する。
それは本当に小さな新木だったがかすかな光を帯びた不思議な木。
彼が不思議そうに新木を見つめているとそこから『私に魔法をかけてほしい』という声が聞こえた。
シントが唯一使えたのは〝創造魔法〟といういままでまともに使えた試しのないもの。
それでも森の中でこのまま死ぬよりはまだいいだろうと考え魔法をかける。
すると新木は一気に生長し、天をつくほどの巨木にまで変化しそこから新木に宿っていたという聖霊まで姿を現した。
〝この地はあなたが創造した聖地。あなたがこの地を去らない限りこの地を必要とするもの以外は誰も踏み入れませんよ〟
そんな言葉から始まるシントののんびりとした生活。
同じように行き場を失った少女や幻獣や精霊、妖精たちなど様々な面々が集まり織りなすスローライフの幕開けです。
※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
【完結】お父様の再婚相手は美人様
すみ 小桜(sumitan)
恋愛
シャルルの父親が子連れと再婚した!
二人は美人親子で、当主であるシャルルをあざ笑う。
でもこの国では、美人だけではどうにもなりませんよ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる