聖獣物語~人狼の森のロウとカイナ~

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三章

三章ノ参『流行り病』3

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「カイナちゃん、あのお薬売ってくれ」

 それは行商のおじさんで、私の薬一人分で銀貨十一枚で買ってくれる。薬の評判を聞きつけて、沢山の行商人が私がリユイ村にいる時間帯にやってくるようになった。

 アリユさんに言われ、唇に薄い紅をさすようになって、さらに美人になったと噂されるようになった私は、行商人の人にも度々求婚されたりしていた。

 気温の温かさに服も袖の無いものを選び、ズボンも短く涼しいものを選んで穿いていた。

 そんな私に高価な服を持ってくる行商人も多かったが、基本私は受け取らないようにしていたけど、その理由は、一度村で男の人から服を一式手渡され、そのまま持って帰ると、いつ着てくれる?と催促され、着れば着たで、俺の贈り物をカイナちゃんが着てるんだぜ、と周りに自慢するため、それ以来男の人からの服の贈り物や飾りの贈り物は貰わないようにしていた。

 行商人から行商人へと私と薬の噂が広まり、それが首都へと届くようになるまでそれほど日はかからなかった。

 その日、噂を聞いて首都から貴族が数台の荷馬車を走らせて村へ来た。

「薬師のカイナはどこか!薬師のカイナを知らぬか!」

 たまたま薬を売りに来ていた私は、少し戸惑いながらも商人にしては雅な服装の男に話しかけることにした。

「カイナは私ですが……」

 貴族は私の薬を買い付けに来たらしく、私に威圧的に話しかけてきた。

「お前がカイナか!薬を買ってやる!よこせ!」

「すみません、薬は行商に売ってしまったので、そちらと話をして下さい」

 その言葉を聞いた貴族は次に言う。

「マトの国では薬草学は用いてはならぬ決まりがある!お前は罪人として捕らえられるだろう!だが、私の妻になれば!私の力で何とかしてやるぞ!」

 腕を強引に引っ張り、体を無理やり抱き付かせた貴族は、その口元をニヘラと緩める。

 いつかと同じで女の私は力では敵わず、止めて下さい!と言葉で抵抗した。もちろん、そんな言葉では貴族は退こうとはしない。

 新しい村長となったダンさんやその息子のテルさん、村中の人が貴族の行いに怒りの表情を浮かべる。だけど、貴族に手を出すと首都にいるマトの兵士が黙ってはいないため、彼らが飛びかかることはなかった。

「私がお前を満足させてやろう!貴族の子を孕むのだ!嬉しいだろ!」

 貴族がそう言い終えた時、黒い影が村人の足下を素早く駆け抜け貴族に体当たりした。

「ぐはっ」

 黒い毛は、日の下で濃い藍色であることがはっきりと分かる。その毛並みの持ち主は、唸り声を鳴らすと牙をむき出しにして貴族に詰め寄った。

「オ!オオカミ!ヒィ!」

 ロウが現れて、貴族は直ぐに馬車の荷台へ飛び乗り、馬車は村から立ち去って行った。

 私は直ぐにロウに抱き付いていた。

「ロウ……怖かったよ、すっごく怖かった」

 ロウは唸ってはいないけど、なぜかまだ気を張っていた。

 その理由は村の人たちの視線で、恐れを表す彼らにロウは警戒され警戒していたのだ。

「ロウ、村から出よう、私と一緒に」

 私はすぐにロウを連れて出て行こうとした、けど、ゆっくりと一人の村人が私たちに近づいてくると状況は思いもしない方へと変わった。

「賢い犬だね、ありがとねカイナちゃんを守ってくれて」

 そう言ったのはアリユさんで、その言葉がきっかけで村長のダンさんやヒノさん、他の村の人たちも恐れは少し残しつつもロウに声をかけてくれた。

「ありがとうな犬!」

 それが優しさであることは、私もロウも分かっていた。だからこそ、ロウは一歩前に出て頭を下げる素振りをして森の中へと駆け戻って行った。

 私はロウに貴族から守ってもらえたけど、貴族の危うさは今回体感できたことで、金輪際関わることはやめようと旨の留めた。
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