34 / 95
三章
三章ノ参『流行り病』3
しおりを挟む「カイナちゃん、あのお薬売ってくれ」
それは行商のおじさんで、私の薬一人分で銀貨十一枚で買ってくれる。薬の評判を聞きつけて、沢山の行商人が私がリユイ村にいる時間帯にやってくるようになった。
アリユさんに言われ、唇に薄い紅をさすようになって、さらに美人になったと噂されるようになった私は、行商人の人にも度々求婚されたりしていた。
気温の温かさに服も袖の無いものを選び、ズボンも短く涼しいものを選んで穿いていた。
そんな私に高価な服を持ってくる行商人も多かったが、基本私は受け取らないようにしていたけど、その理由は、一度村で男の人から服を一式手渡され、そのまま持って帰ると、いつ着てくれる?と催促され、着れば着たで、俺の贈り物をカイナちゃんが着てるんだぜ、と周りに自慢するため、それ以来男の人からの服の贈り物や飾りの贈り物は貰わないようにしていた。
行商人から行商人へと私と薬の噂が広まり、それが首都へと届くようになるまでそれほど日はかからなかった。
その日、噂を聞いて首都から貴族が数台の荷馬車を走らせて村へ来た。
「薬師のカイナはどこか!薬師のカイナを知らぬか!」
たまたま薬を売りに来ていた私は、少し戸惑いながらも商人にしては雅な服装の男に話しかけることにした。
「カイナは私ですが……」
貴族は私の薬を買い付けに来たらしく、私に威圧的に話しかけてきた。
「お前がカイナか!薬を買ってやる!よこせ!」
「すみません、薬は行商に売ってしまったので、そちらと話をして下さい」
その言葉を聞いた貴族は次に言う。
「マトの国では薬草学は用いてはならぬ決まりがある!お前は罪人として捕らえられるだろう!だが、私の妻になれば!私の力で何とかしてやるぞ!」
腕を強引に引っ張り、体を無理やり抱き付かせた貴族は、その口元をニヘラと緩める。
いつかと同じで女の私は力では敵わず、止めて下さい!と言葉で抵抗した。もちろん、そんな言葉では貴族は退こうとはしない。
新しい村長となったダンさんやその息子のテルさん、村中の人が貴族の行いに怒りの表情を浮かべる。だけど、貴族に手を出すと首都にいるマトの兵士が黙ってはいないため、彼らが飛びかかることはなかった。
「私がお前を満足させてやろう!貴族の子を孕むのだ!嬉しいだろ!」
貴族がそう言い終えた時、黒い影が村人の足下を素早く駆け抜け貴族に体当たりした。
「ぐはっ」
黒い毛は、日の下で濃い藍色であることがはっきりと分かる。その毛並みの持ち主は、唸り声を鳴らすと牙をむき出しにして貴族に詰め寄った。
「オ!オオカミ!ヒィ!」
ロウが現れて、貴族は直ぐに馬車の荷台へ飛び乗り、馬車は村から立ち去って行った。
私は直ぐにロウに抱き付いていた。
「ロウ……怖かったよ、すっごく怖かった」
ロウは唸ってはいないけど、なぜかまだ気を張っていた。
その理由は村の人たちの視線で、恐れを表す彼らにロウは警戒され警戒していたのだ。
「ロウ、村から出よう、私と一緒に」
私はすぐにロウを連れて出て行こうとした、けど、ゆっくりと一人の村人が私たちに近づいてくると状況は思いもしない方へと変わった。
「賢い犬だね、ありがとねカイナちゃんを守ってくれて」
そう言ったのはアリユさんで、その言葉がきっかけで村長のダンさんやヒノさん、他の村の人たちも恐れは少し残しつつもロウに声をかけてくれた。
「ありがとうな犬!」
それが優しさであることは、私もロウも分かっていた。だからこそ、ロウは一歩前に出て頭を下げる素振りをして森の中へと駆け戻って行った。
私はロウに貴族から守ってもらえたけど、貴族の危うさは今回体感できたことで、金輪際関わることはやめようと旨の留めた。
0
あなたにおすすめの小説
レオナルド先生創世記
ポルネス・フリューゲル
ファンタジー
ビッグバーンを皮切りに宇宙が誕生し、やがて展開された宇宙の背景をユーモアたっぷりにとてもこっけいなジャック・レオナルド氏のサプライズの幕開け、幕開け!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
マンションのオーナーは十六歳の不思議な青年 〜マンションの特別室は何故か女性で埋まってしまう〜
美鈴
ファンタジー
ホットランキング上位ありがとうございます😊
ストーカーの被害に遭うアイドル歌羽根天音。彼女は警察に真っ先に相談する事にしたのだが…結果を言えば解決には至っていない。途方にくれる天音。久しぶりに会った親友の美樹子に「──なんかあった?」と、聞かれてその件を伝える事に…。すると彼女から「なんでもっと早く言ってくれなかったの!?」と、そんな言葉とともに彼女は誰かに電話を掛け始め…
※カクヨム様にも投稿しています
※イラストはAIイラストを使用しています
神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~
あきさけ
ファンタジー
貧乏な田舎村を追い出された少年〝シント〟は森の中をあてどなくさまよい一本の新木を発見する。
それは本当に小さな新木だったがかすかな光を帯びた不思議な木。
彼が不思議そうに新木を見つめているとそこから『私に魔法をかけてほしい』という声が聞こえた。
シントが唯一使えたのは〝創造魔法〟といういままでまともに使えた試しのないもの。
それでも森の中でこのまま死ぬよりはまだいいだろうと考え魔法をかける。
すると新木は一気に生長し、天をつくほどの巨木にまで変化しそこから新木に宿っていたという聖霊まで姿を現した。
〝この地はあなたが創造した聖地。あなたがこの地を去らない限りこの地を必要とするもの以外は誰も踏み入れませんよ〟
そんな言葉から始まるシントののんびりとした生活。
同じように行き場を失った少女や幻獣や精霊、妖精たちなど様々な面々が集まり織りなすスローライフの幕開けです。
※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
【完結】お父様の再婚相手は美人様
すみ 小桜(sumitan)
恋愛
シャルルの父親が子連れと再婚した!
二人は美人親子で、当主であるシャルルをあざ笑う。
でもこの国では、美人だけではどうにもなりませんよ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる