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五章
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しおりを挟む今日はダブハの母と初めて会うことになっているユイナは、内心緊張が限界を突破していた。 しかも、家に入るなりダブハは父親を探しに行くと言って出て行き、ダブハの母と二人きりにされてしまい、正座して待っていた。
豪華な居間には高価そうな飾りが飾られていて、感心が少しありつつも、義母の前では今は借りてきた猫のように静かにしているユイナ。
「あらあらユイナさん……」
「は、初めまして、お義母さん私ダブハさんと結婚を前提にお付き合いしてます、ユイナと言います」
そんな会話の出だしから、ダブハから自分の事は聞いているだろうと推測して、笑みだけは絶やさないようにしていた。
そんなユイナのダブハの母へ対する最初の印象としては、眼つきが悪く怖そうな人、と感じていた。だが、ダブハの母はユイナの前で溜め息吐くと、急に頭を下げたため彼女は慌ててしまう。
「ど、どうしたんですか?!」
「ごめんなさいね、ダブハで本当に構わないの?あの子変わってるから大変だと思うけど、それもこれも私があの子が小さい時に一人でずっといさせたせいなの、だから、悪いのは全部私なのよ」
急な展開に正座してた足も痺れていて、ユイナは中腰になると少しよろけてしまう。
「止めて下さい!お義母さん!あっ足が!」
「あらあら!ごめんなさい、足なんて崩していいのよ、ごめんなさいね気が利かなくて――」
眼つきは悪いが、常に低姿勢でとてもいい人だと理解したユイナは、少し不安の種が減ると同時に、足の痺れに苦笑いを浮かべるしかなかった。
その後、父親を連れて来たダブハはユイナと母親の和気あいあいとした会話を見て、少し驚いた様子ですぐに笑みを浮かべると、よかったと呟いた。
「君がユイナさんかい?」
「はい、お義父さん」
「頼みは一つだ、ダブハは夢中になり過ぎることもあるが、悪い奴ではない、見捨てず気長に傍にいてやってほしい」
一言だけそう言うと、ダブハの父親は手にした書物へ眼を向けて言う。
「私は学院の後任に引き継ぎの資料を渡してくるから、後はお前が相手をしてくれるか?」
「はいはい、後は任せて行ってらっしゃいませ」
笑みを浮かべるダブハの母に見送られ、ダブハの父は出て行き、ユイナは少ししか話せなかったことを残念そうに言う。
「もっとお義父さんと話をしたかったんだけど……」
「父さんは仕事に手を抜くのが嫌な人でね、昔から家庭より私用より仕事優先な人だ……立派な父だと思っているよ僕は」
悲しげな表情だが、その言葉はダブハの真意だった。それを察したユイナは、そっと寄り添うと優しく囁く。
「もっと、遊んでもらいたかった?傍にいてお話したかったのかな?」
「……たぶん両方だよ、でもね、さっき父さんが言っていたんだ、〝仕事が無くなったら時間ができる、だからこれからは話でもなんでも私もしてあげられるぞ、孫の世話だってな〟」
「……そう、いいお義父さんね」
ダブハはコクリと頷いてユイナを抱き寄せた。
二人の結婚式はこの翌日に行われ、二人は永遠の愛を誓い合う。
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