Blade Chain Online―ブレイド・チェーン・オンライン―

tobu_neko_kawaii

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第二部

65.

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 ギルド間の話の後は、BCOのクリアが非常に厳しいことが話題に上がる。

 その口火はシャドーが切った。

「計算上このBCOを攻略するにはレベル320以上、時間は26280時間必要、ちなみに、昼夜レベルを上げて320に到達する時間がそれだけかかることになる」

「26280時間ってことは――」

 ビージェイが指折り数えようとすると、直ぐに俺は口を挿む。

「3年だ」

「レベル上げだけで3年……」
「実質、倍近くかかるんじゃないか……」

 カイトとビージェイがそう言うと、「いいや」と言ってその考えを俺は否定する。

「シャドーが言ってるのは、モンスターがこのままの状態でならってことだ」
「するってーとーつまり……なんだ?」
「モンスターがチート過ぎて攻略は不可能ということだ」

 全員が沈黙する。

 無理もない、彼らは現実への帰還を糧に今までBCO内で生きてきたのだから。

「が、攻略は不可能だが、生きていれば一年以内にここからの帰還は果たせる見込みがある」

 ビージェイは驚いて、「え!なんでだ?」と言う。

 マリシャの膝の上のウサギを捕まえてそれを机に置く。

「シャドーは知っているだろうが、俺のHMCの中にあるAIのコピーだ。こいつの本体はBCOからHMCへ戻る時に、HMCに取り付けられた外部パーツのスキャンをして、ある程度の構造はデータとして持ち帰っただろからな」

「左様、ゆえにジャスティスの父にして我が生みの親が、一年以内にそれを取り外す算段をつけるだろう、いや、彼ならばもっと早いかもしれない」

 シャドーの言いようは確信がある言い方で、ビージェイは「お前の父ちゃん何者だよ」と聞く。

「ただのHMCオタク、VRマニア、AIファンってとこかな」

「違うぞ!彼は有名で稀有だ!かの仮想空間への感覚全投入のシステム、フルダイブシステムの開発者に負けず劣らずの鬼才だ。主に感覚的な部分で、ずば抜けた研究をしていたのをジャスティスの母が――」

 ドゴ!と机が叩かれる音でシャドーは喋るのを止めた。

 その理由は、俺が拳を机に叩きつけた結果で、机にはimmortal Objectと表示される。

「その話は……必要ない」

 空気を読んで、ビージェイが思わず話題を変えようとした時だった。

「ビージェイさん!」

 ファミリアのメンバーが血相を変えてビージェイを呼ぶ。

「なんだ?どうした?」
「見回り組がやばいことになってますよ!」
「なに!見回り組というと――オツイチたちか!悪いなみんな、俺ちょっと見てくるわ」

 ビージェイはそう言うと、一人足早にその場を後にした。

 数十分後、いつまで経っても戻らないビージェイ。

「何かあったかもしれないな」
「そうだね、遅すぎるよ」

 そう言って俺とカイトはファミリアのギルド本部を出る。

 ファミリアのギルド本部は転移ポートからは遠く、非戦闘員が集う場に近い。

 外に出た俺を追いかけるように、カイトとマリシャが出てくる。

 辺りを見渡してもビージェイの姿はない、近くにいないのは分かっていたことだが、俺は徐にフレンドを表示させた。

 すると、ビージェイが俺をブロックしていて、彼の居場所が把握できないことがすぐに見て取れた。

「マリシャ、カイト――フレンドを開いてビージェイの状態を見てくれ」

 言われてすぐ左手を操作する二人は驚きを表した。

「え?なんで――」
「ブロックされてる……」

 いよいよビージェイに何かあったに違いないと、俺は珍しく眉を顰めるだけじゃなく地面を強く踏みつけた。

「カイト、お前は危険だからここでビージェイたちの帰りを待っていてくれ」
「……うん、分かった」

 俺はマリシャに視線を向けると、彼女は自らすることを分かっている様子だった。

「私は見回りのルートを仲間と捜索してくるね、任せてヤト」
「あぁ、俺はできるだけトラブルが起きそうな場所を探してみるとしよう」

 俺はクエストの内容を思い返しながら、このビージェイの件とまったく関係ないとは思えずに、少し焦りながらも冷静に思考しながら走り始めた。
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